南信登山専門部顧問 雪上研修会

 実施日 2015年2月21日(土)
 場 所 北安曇郡白馬村飯森  五竜遠見尾根 地蔵ノ頭〜小遠見山
 参加者 顧問のみ8名 
      赤穂高校1名(講師)、飯田高校1名、OIED長姫高校2名、下伊那農業高校2名、岡谷工業高校2名

快晴に恵まれた2月21日(土)、五竜遠見尾根において南信の顧問8名が参加して雪上研修会を行いました。当初の計画では、木曽駒ヶ岳の千畳敷で開催する 予定でしたが、駒ヶ岳ロープウェーの運休により場所を変更しての開催となりました。
 この時期まだ暗い早朝に、自宅を出発して五竜遠見スキー場へ集合しました。途中、安曇野市穂高、松川村と北上すると、ピンク色に染まる爺ヶ岳、鹿島槍、 五竜岳などヨーロッパアルプスにも負けないくらい綺麗なモルゲンロートを拝むことができました。はやる気持ちを抑えながら、始発のロープウェーに乗り込み スキー場上部に着くと、早速、わかんやスノーシューを装着しました。そこからさらにゲレンデを上り詰め、地蔵ノ頭に着くころには、真っ青な空に吸い込まれ るように五龍岳に続く尾根沿いには、スキーやスノーボードを担いだBC愛好者が登り始めていました。

ゲレンデ
遠見尾根
   写真1 ゲレンデを歩き地蔵ノ頭を目指す
  写真2 遠見尾根方面にはすでに先行者が…

 ここからは、多くの先行者によってトレースが付けられている遠見尾根に向かい歩き出しました。わかんやスノーシューの歩きについて講習を受けながら、ど こかぎこちなくのスタートとなりました。徐々に体が温まり、歩き方も慣れてきたところで、ラッセル体験に切り替わりました。膝まで積もった前日の雪が、 ちょうど良い負荷となって一面を覆っている斜面を直登します。
 このラッセルは初体験者が多く、なかなか思うように進むことが出来ませんでした。わかんが有利だとか、スノーシューは不利だとか言いながら、膝の使い方や足の置き方を教わると、ペースも上がり、先頭を入れ替わりながら一汗かいて一ノ背髭で一本取りました。

歩き方
ラッセル
   写真3 足の運び方を教わりながら急登を進む          写真4 膝上の雪をラッセル
 
 雲ひとつ無い晴天、暑いくらいの日差しに照らされて、中遠見〜大遠見〜西遠見から続く白岳と武田菱がかっこいい五龍岳が目の前に迫り、右に視線を向ける と八方尾根の向こう側に白馬鑓、杓子、白馬岳が美しく並んで見えました。こんなに恵まれたロケーションに感謝しつつ、小遠見のピークを目指して稜線を歩き 出します。

五龍岳
白馬三山
           写真5 遠見尾根と五龍岳
          写真6 白馬三山 手前は八方尾根

 ここから先は、稜線の東側に張り出した雪庇に注意しながら進むことになります。厳冬期に山には入る経験が少ない参加者にとっては、この雪庇の危険性を知 る良い機会となりました。下から見上げればそれとわかるものの、稜線を歩き出せば、どこからが雪庇なのか判断がつきにくく、出来るだけ先行者のトレースを たどり慎重に進むこととしました。
 途中、風の通り道ではふかふかの雪からクラスト状に変わっている場所もあり、雪質の変化を感じながら、歩き方も変える体験もしながら、ロープウエイ終点 から2時間半かけて小遠見山ピークへ到着しました。山頂からは、白馬三山、五龍岳はもちろん、バッドレス状の鹿島槍ヶ岳北壁が大迫力で迫ります。爺ヶ岳の 左奥に槍ヶ岳の雄志を拝み、美ヶ原のテレビ塔群と重なって富士山までも見ることが出来ました。

雪庇
トレース
     写真7 大きく張り出した雪庇を確認する
 写真8 左の雪庇を避け先行者のトレースをたどる
鹿島槍
唐松
      写真9 大迫力の鹿島槍ヶ岳 北壁
写真10 唐松山荘もはっきり見える

 山頂で暖かい日差しを浴びながら、360ーのパノラマを満喫している間にも、一人また一人とBCの方々が滑り降りていきました。多くの人たちが楽しんで いるんだと羨ましくも、装備にかかる値段を聞くとちょっと引いてしまいます。それにしても、最近の遭難のニュースの多さを考えると、安全には充分気をつけ て行いたいものです。
 後ろ髪を引かれながらも、次の講習のために下山を開始しました。二ノ背髭と一ノ背髭の中間付近の10mほど稜線から外れた斜面で、雪洞作り体験を行いま した。まずは、稜線から急な斜面を下るため、雪面にピッケルを立て確保する技術を教わり、講師の池迫先生が張ったフィックスを頼りに斜面に下り足場の整地 をしました。
 スコップやスノーソーの使い方を教わりながら、参加者が半分に別れて雪洞堀に取りかかりました。思うように雪をブロック状に取ることが出来ず、悪戦苦闘 しながら、徐々に要領が掴めてくると、楽しくて仕方がありません。汗だくになりながら大人の雪遊びを満喫、完成後はお互いの雪洞をお宅訪問してその出来映 えを確認しました。
 大人2〜3人が泊まれるほどの大きさで、2時間ほどかかってしまいましたが、初めてにしては、充分なできではなかったでしょうか。残念ながら泊まって鍋をつつくことは出来ませんでしたが貴重な体験をさせて頂きました。

支点確保
斜面降下
         写真11 雪面に確保支点を作る
 写真12 雪洞を作る斜面に下りる池迫講師
雪洞1
雪洞2
   写真13 掘り出したら楽しくて止められない
写真14 スノーソーとスコップを上手に使って

 あっという間に時間が過ぎ、イグルー作り体験までは出来ませんでしたが、充実した研修会となりました。南信地区は春の総体で登山競技を実施しており、山岳総合センターで行われる5月の研修会の日程と重なることが多いため、今回の研修は大いに役立ちました。
 また、顧問間で親睦を深めお互いの経験や取り組みも交流でき、とりわけ経験の浅い若手の顧問にとっては良い学習の場であったと思います。
 次年度以降も引き続き行うことで、生徒も参加出来るような時期に開催できるようにと、参加した顧問たちは口々に感想を述べていました。
                                                                                                    (文章 岡谷工業高校 丸山真明)
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