不定期刊行             12  2002.6.08

  中信高校山岳部かわらばん   編集責任者 大西 浩

                             木曽高等学校 定時制

伝説の黒姫山で 県大会報告

その1 生徒曰く「七ツ池は本当にきれいでチョー感動した」

県大会が終わりました。天候が心配されましたが、それほど暑くもなく寒くもなくという絶好の登山日和でした。正規チームの出場は男子14校、女子3校とやや寂しかったですが、のべでは19校が参加しました。高体連登山部の調査と私の個人的な資料を合わせると、現在山岳部(ワンゲルやアウトドア、同好会なども含む)は県内には最低でも38校に39クラブ存在しているはずです。そのうちの19校の参加。この数をどう読めばいいでしょうか?これについての考察はまた次の機会にでも書くとして、とりあえずはけが人もなく無事大会が終了しました。私は先導をしましたが、前半の新道分岐から稜線までの特区間では、後ろに大町の生徒がすぐ迫ってきてずいぶん煽られました。先導が生徒に追い越され、先導の役を果たさなかった大会という伝説が生まれるところでした。我が木曽高校の女子カルテットのうち二人は、高校入学後初めての山行でした。それが幸か不幸か出場3チームという中で、北信越への出場権を得てしまいました。コースを回り終えてテントに帰ってきたときはバテバテで口をきくことすらできない状態の4人でしたが、大会後は、

「疲れたけれど楽しかった。疲れて下っていって七ツ池に出たときは、本当にきれいでチョー感動した。それに私たちがばてて動けなくなって、すごいゆっくりのペースになっても、途中で役員や審査の先生方が励ましてくれたのがすごい嬉しかった。ゴールでもみんなが出迎えてくれて、ちょっと恥ずかしかったけど嬉しかったなぁ。北信越がんばるよ。」と来週の大会へ向けて、今計画書作りに燃えています。これが持続するようにうまく活動を続けていきたいものです。

その2 下見の時は「雪がとけて川になって流れていきます・・」だったんだけど

大会会場の黒姫山の北斜面は2週間ほど前に役員で下見にはいった時は、残雪が多く、ルートがわかりにくくて迷い込まれると大変なことになると随分心配したものです。その上雪渓の下は沢になっていて、キャンディーズじゃないけれど、雪どけ水が川になって道路を流れ、踏み抜くと川にはまってびしょぬれという悪条件で役員は往生したものでした。が、しかし、季節の移り変わりは早いものです。大池から下の樹林帯の中のまずとけないだろうと思っていた雪も、予想以上に融雪が進み、先導の私としてはちょっと拍子抜け「えっ」という感じでした。

やや手前みそでもありますが、残雪の山での大会は役員は随分神経を使います。一昨年の鉢盛山、その前の雨飾山などのときと同様、今回の大会も役員は下見として大会初日も含め、4日間、のべでおよそ20人が黒姫にはいり、実際にコースを歩きテープを張って道をはっきりさせたり地図をなおしたり(古池から新道分岐までの区間、2万五千分の1の地形図上の道が実際の道とは大きくずれていました)しました。各地区の専門委員長はもちろん、北信の先生方には本当にご苦労様でした。

ここでは大会とは全く関係ありませんが、信州山岳百科からの単なる受け売りで、黒姫山の伝説を一つ。「昔、この山の東方中野市の城主高梨摂津守政頼に、黒姫という美しい一人娘がいた。ふと姫を見初めたのは、志賀高原の大池に住む大蛇で、若侍に身を変え、城主政頼に、姫を嫁にと懇願したが、正体を知られ断られてしまった。怒った大蛇は大池の水で城下を押し流そうとしたが、やさしい姫は洪水を避けるため自ら進んで大蛇の化身に嫁ぐことを決意した。しかし、蛇と結ばれる苦悩は何としても消しがたい。姫が苦しい胸のうちを訴えると、さすがの若侍も同情し、二人は黒姫山に登って相果てた。」と。二人の束の間の桃源郷になった七ツ池は木曽高校の生徒が素朴に感動していますが、池と池の間は高さ10センチほどの小笹がじゅうたんのようにきれいに敷き詰められていて、溶岩や周りの樹木と調和して、未完成ながらも見事な日本庭園のようです。二人が手を取った遠い昔の幻想をよぶところです。

と、まあ黒姫山はこんな悲しくも美しい伝説を秘める北信濃の名山です。生徒諸君もこんなことを知って七ツ池や大池あたりを歩けばまた一味この山への思いも変わったかもしれません・・・。

その3 大会での初の試み、クライミング体験 

「県大会でのクライミング」これについては、昨年の秋の大会下見の時から話題になり、加藤前専門委員長と竹内現専門委員長の前向きな発想に、長野県山岳協会の宮本先生や浮須先生、村主先生のバックアップがあって実現しました。そして何よりも一番感謝しなければならないのは、損得勘定抜きに高校生のためにとボランティアをかってでてくれた長野市のアートウォールの森山議雄さんのご協力でした。そのへんのいきさつについては次号でまた述べたいと思いますが、大会2日目の午後、縦3m、横5m、約110度の前傾壁が戸隠牧場に仮設されました。

そして、3日目。約60名の生徒が入れ替わり立ち替わりボードにとりつき、最初は全く登れなかったのが、終わるころには随分上達しました。主催する側としては、最初は60人をどうやってこのスペースで楽しませようかと心配もしたのですが、「あのくらいの壁があるだけでずいぶん楽しめる。」そんな認識をもちました。学校にあのようなものができないでしょうか?森山さんによれば、ホールド(手がかり)スタンス(足がかり)等すべて込みで25万程度で設置が可能とのこと。そのくらいならなんとかなる?今後は高校生対象で山岳協会や山岳センターなどでもクライミングを積極的に導入して普及していこうということになっています。山岳部の活動の広がりがこの大会で見えてきたような気がしました。

編集子のひとりごと

年に一度の県大会。生徒達はどんな思いを持ってかえったのでしょうか?生徒達の率直な感想を一言でも二言でも編集子あてお寄せ下さい。特にクライミングの感想は森山さんも知りたがっていました。・・それにしてもこの時期の北信の山はいいねぇ。NとかYとかいうお宝がいっぱいあって、ウフフ。・・で、来年は八ケ岳です。(大西 記)