不定期刊行            13号  2002.6.12

中信高校山岳部かわらばん

 編集責任者 大西 浩

                             木曽高等学校 定時制

県下の高校山岳部におけるクライミングの流れ

クライミングについては今後高校山岳部の活動においては次第にメジャーになってくると思われます。長野県内のこれまでの高校生のクライミングの流れを私の知るかぎりで、少し振り返ってみたいと思います。

い わゆる人工ボードによるクライミング(スポーツクライミング)に県内の高校で初めて取り組んだのは、上田東高校の山口伸也先生(現在は中条高校在籍)でし た。今からもう10年以上前のことです。上田東高校の文化祭のイベントとして、森山議雄さんの協力で学校にボードを設置しました。これは数年継続したと記 憶しています。このころより、森山さんはずっと高校生など若者に対しては、まさにボランティアとして惜しみなく力を貸してくれています。ちょうど、93年 に開かれた信州博覧会でクライミングボードが設置され、少しずつこういう世界があるということが知れ始めたころでした。このころ国体の山岳競技において も、登攀は自然保護や競技化などという観点から、従来の自然の岩場から人工壁へと変わりつつある時代で、県山岳協会でも、そういったことをにらみながら、 高校生への普及を考え始めてもいました。

94 年私は美須々ヶ丘にいましたが、たまたま山岳協会の事務局次長もおおせつかっており、その関係で当時の山岳協会の百瀬会長から穂高町の広瀬氏を紹介されま した。広瀬氏は森山氏と信州博のボードを手がけた人でした。その紹介で7月まず蟻ヶ崎高校の「銀河祭」で山岳部の出し物として、クライミングボードが設置 されました。このときは希望者に体験をさせるというものでした。9月には美須々ヶ丘の「双蝶祭」にこのボードを移設し、山口先生などにも協力を願って、ミ ニコンペを行なうなど文化祭を盛り上げました。このボードはそのまま設置され、秋には私のよびかけで、田川高校(当時の顧問は現木曽高校の筒井先生)や梓 川高校(当時の顧問はCMCにも所属していた下条先生)の生徒なども放課後美須々を訪れ、合同練習などもし、少しずつその輪が広がっていくかなという機運 も盛り上がってきました。翌95年にも「双蝶祭」では盛り上がりをみせました。一方で、森山さんの協力で風越高校の体育館のギャラリーにもボードが設置さ れるなど、このままクライミングが高校生に浸透していくかに見えました。

し かし、現実はそうはなりませんでした。その理由はいくつかあります。美須々の場合でそれを考えてみます。第1に設置場所が屋外であったためボードが老朽化 し、それを自分たちでメンテナンスできなかったこと、2番目に私たち教員自身が実際のクライミングを指導するノウハウを持っていなかったこと、3つ目は一 度身に付けた技術を恒常的に磨く場の不在などなど。考えればまだいくつも理由は思い当たりますが、東京や神奈川のように町の中にジムがあるわけでもなく、 そんな中で大町で行なう中信大会でクライミング体験をとりあげても、継続性が生まれず、人工壁のクライミングいわば第1次クライミングブームは次第に下火になっていってしまいました。(この続きは次号)

   山岳総合センターの針ノ木での研修会の様子を今年度の写真を交えて紹介します。
山岳総合センターの研修会の様子です。これは初日に人工岩場でトップロープをたらして、クライミングをやっているところです。

 

※トップロープとは上部の確実な支点からロープをたらし、一方を登攀者に結び、もう片方を確保者が確保器を通し、登攀者の確保をしながら、登る練習をする方式。登攀者はザイルに完全に身を預けてぶらさがってもきちんと確保されるので、危険はありません。

 

                  

 

 

 

2日 目は山岳総合センターを朝出発して、扇沢から大沢小屋付近までフル装備で登ります。途中の堰堤を越えた付近で一本いれておよそ一時間あまりで、テント場に 到着します。まず雪を踏み固めて整地しそこにテントを設営、早めのお昼で腹ごしらえをしたあと、それぞれの班ごとに分かれて午後は雪上での研修になりま す。今年の場合、初日は基本的な歩行から始まって、ピッケルとのコンビネーション、滑落停止などを行いました。

3 日目は前日の続きで、朝まだ雪のしまっているうちにアイゼンの技術やカッティングなどを行った後、ザイルを使っての訓練を行いました。雪とザイル、ピッケ ル、アイゼンなどというとそれだけで「私の学校ではそんなところにはいかないから」とか思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、ここで学ぶのは自分の 体を守るための防御の技術が中心です。岩場では落ちれば危ないですが、雪の上なら訓練として安全に技術を習得できるのです。

編集子のひとりごと

15日土曜日、松本県の森と長野市勤労者福祉センターの2カ所で、山岳協会による「夏山登山教室」が開催されます。顧問は勿論高校生の参加も歓迎です。入場料500円です。