不定期刊行             14  2002.6.16

中信高校山岳部かわらばん

編集責任者 大西 浩

                             木曽高等学校 定時制

県下の山岳部におけるクライミングの流れ その2

ク ライミングはこうして一時的な盛り上がりを見せたのですが、その後しばらくなりをひそめます。そんな中で、国体少年の部へのクライミングの導入が本決まり となり、僕が北信越地区の代表として、全国高体連の常任をしていた2年間(1997,98年)、高体連でもクライミング小委員会をつくられ、真剣に話し合 いました。しかし、大都会近郊の都府県と地方の間にはかなりの温度差があり、いくら話し合っても現実に人工壁やジムがないことには話の進みようもありませ んでした。しかし、時代は確実にクライミングを受け入れ始めていました。

長 野市のアートウォールについで、森山さんや山岳協会の努力で松本広域運動公園内にも屋外のボードが誕生しました。そして、97年松本にも屋内の施設、ボル ダーランド(現ロックジムホリエ)ができたのです。ここのオーナー堀江謙一さんは、美須々のOBですが、大学生時代にクライミングに出会ったそうです。た またま仕事の関係で美須々に訪れたとき、当時美須々にあったボードを見て再びクライミング熱に火がつき、しばらくはアートウォールに通ったりもしていたそ うですが、そのうちに自分でも始めちゃおうと自宅を改造して松本市の寿でジムを始めたのです。こうした中、高校生の中には山岳部とははなれたところで、ク ライミングを始める生徒も出てきました。これらの高校生は長野、佐久のアートウォールで森山さんらの指導のもと少しずつ芽を出し始めます。このころ(90 年代後半)から始まったジュニアオリンピックカップに、佐久の高校生が出場し、結構な成績をおさめたりもし始めるのです。

中 信地区では96年の新人大会の会場が大町だった関係で、この年はじめて大会2日目にクライミングの体験を導入しました。97年、98年ごろには美須々のワ ンゲル部は、校内の壁が老朽化してきて、危険になったため、校内の壁をはなれ毎週火曜日にはセンターの人工壁へ赴こうという計画をたて、大町の浮須先生 (現池田工業)などと連絡をとりあい、当時の顧問渡会先生と二人で毎週生徒をつれて大町を訪れたりもしました。それなりに生徒も喜び、美須々、大町の生徒 の間では少しずつ浸透もしたのですが、やはり我々自身の指導力にも限界があり、これを広く中信地区全体の財産にしていくまでには至りませんでした。

某高校北信越旅費の問題

県 内ある高校でおこった出来事です。その高校は県大会を勝ち進み北信越大会への切符を手にしました。今年の会場は石川県の白峰村、山は名峰白山です。生徒 も、顧問も大喜び。そこに行くためにはどうしよう、引率の顧問は頭を悩ませました。車が便利だが、車酔いをしやすい4人の生徒をすし詰め状態で連れていく のは、大会前なので避けたい。だから公共交通機関を使って行こうと計画を立てたのです。

ご 承知の通り、長野県は南北に長く、南信や中信の南の方から北信越の各県(特に福井や石川)に行く場合、名古屋へ出て米原経由で行くということはよくあるこ とです。そこでこの顧問も考えました。公共交通機関の場合、北回りだとJRも東海、東日本、西日本と乗り継ぐことになるので、連絡が悪く時間がかかりま す。名古屋回りの東海道経由で行こうと学校に遠征計画、さらに旅行命令票を提出しました。それに対して、遠征費委員会ではオーケーが出たのですが、な、 な、なんと事務からこんな連絡があったのです。「合理的かつ経済的という観点から、職員の旅費計算に当たっては大糸線回りの方がいいので、そのように支出 します。したがってそのようなわけで(つまり、職員の旅費計算上の理由で)生徒も大糸線経由の糸魚川回りでお願いします。加えて、前泊で時間のゆとりがあ るので、各駅停車でいってください。」と。

こ んな話がまともにされているなんていうのは異常です。もう一度問題点を整理してみます。「生徒の遠征については南回りでもいいが、職員の旅費の支出にあ たってその経路が合理的かつ経済的でないので、旅行命令を出すわけにはいかない。生徒と職員が別の経路で行く引率はありえないので、生徒を職員にあわせ ろ。」というのです。今年の旅費に変わってから、ちょくちょく耳にするこの「合理的かつ経済的」ということば。誰にとって「合理的かつ経済的」なのでしょ う。もちろん我々自身にとっても「合理的かつ経済的」でなければならないし、県にとってもこの財政下それは必要なことなのかもしれません。しかし、大会前 の生徒に「金沢まで、重いリュックサックを持って、途中最低でも4回の乗り継ぎをしながら10時間かけて各駅停車で行きなさい」というのが果たして「合理 的かつ経済的」なのでしょうか?事実をありのままに伝えることが大事だと思いますので、もう一言付け加えます。大会終了後の帰りについては、翌日の授業に 間に合わせるために南回りが認められました。でも、間に合いさえすれば、時間がかかり精神的苦痛を伴おうとも「経済的(あえて合理的とは書きません)」な 方を優先させるという論理は納得できないのです。この論理で行くと、列車の場合の特急券や車の高速道路の利用については全く経済性がないからといういう理 由で、門前払いになることが多分に予想されます。本来、この旅費改定の趣旨はこういうところにあったのではないと聞いています。しかし、改定にことよせて 何か違う方向に進んでいるようで、その点非常に危惧を感じます。

北 信越大会をめぐっては、また別の学校では、生徒のことを慮って車で行きたいと旅行命令票を出した顧問に対して、距離が遠いという理由で最初は許可がおりな かったということも耳にしています。この学校では職場全体の粘り強い話し合いの中で、なんとか顧問の主張が通ったと聞きましたが、これから夏山シーズンを 前に生徒の活動が制限されることのないようにしていかねばならないと思います。

編集子のひとりごと

  昨日、長野市の勤福センターで行われた県山協の夏山登山教室に参加しました。登山の医学など有意義でした。会場は熱心な中高年登山者で一杯。このパワーを 高校生にも・・そんな思いを感じた一時でした。来週22日土、10時より山岳協会ジュニア委員会(委員長は岡谷工業の村主先生)主催のクライミング講習会 が長野市アートウォールで開かれます。先日の県大会で興味をもった生徒を、このまま眠ったままにしておくのはもったいないですよ。ぜひ生徒にお声がけをお 願いします。(大西 記)