不定期刊行 第34号 2002.11.18
中信高校山岳部かわらばん
編集責任者 大西 浩
木曽高等学校 定時制
高知国体顛末記C・・・国体は大きく変わった
前号で述べたように、踏査競技が廃止され、少年の部にもクライミングが導入されたことで、従来の国体とは大きく様変わりしたのが今回の特徴でした。
クライミングのみで縦走に参加しなくていい選手が出てくることが可能になったことで、成年男子のクライミングには今まで登場しなかった全日本クラスの選手も何人か登場し、非常にハイレベルの戦いとなりました。したがって決勝の壁などは出だしから30度かぶった壁で、途中のルーフなどを経て15m登るのに8mも張り出すというもの。要するに平均で約45度かぶっているということだ。結局完登したのは、高校生の時に全日本チャンピオンになったという千葉の茂垣選手ただ一人。非常に迫力があり、見るものをうならせました。他の競技では国体のレベル低下が言われ、一線級の選手が見向きもしなくなっているのとは異なった面白い現象でした。
そんな中、やはり少年は、現状ではとても全国と対等に戦うなんてのは難しいと感じました。大都市近郊の諸都府県ではクライミングの普及と選手のレベルアップは目覚しいものがあります。ま、国体だけが山登りじゃないので、それに100パーセントあわせる必要もないのだけれど、こういった大会が目的のひとつになれば普及にも一役かうことになるのは事実です。こんなに面白い世界が高校生のころに僕の目の前にあったならば、今の僕はどうなっていただろう?もしかしたら進むべき方向も変わっていたかもしれません。
あっ、でも結局センスないからあっさりあきらめてクライミングどころか山のやの字も口にしなくなってたりして・・・。それはともかく、地方においてはクライミングを取り巻く状況が昨年までとは一変したのは紛れもない事実です。
もうひとつ感じたことは、3人のチーム編成に関してのむずかしさです。3人のうちの二人はそれぞれ縦走かクライミングのスペシャリストをもってくればいいのですが、残る一人が問題になります。1チーム3人という編成でのチーム競技の意味合いが薄れたともいえます。結局この残る一人にだけ両方をこなさせるということで負担が極端に増えるのです。本来の山岳競技はこの残る一人のもっているような力が全員に要求され、そこに国体の意味もあったようにも思うのですが、このように分業化が進んでいけば、行き着く先には縦走の廃止、クライミングのみによる競技になっていくしかないような気もしました。競技としてはそれならそれで明確ではありますが、いったいこの先はどうなるのでしょうか?
長野県ジュニアクライミング選手権大会
去る11月9日にかねてお伝えしてあったように、今年で4回目を数える長野県ジュニアクライミング選手権兼本年度第7回目のジュニアクライミング講習会が小谷村ちゃんめろウォールで開催されました。下は小学3年生から中学生、高校2年生までと幅広い参加者がアットホームな雰囲気の中で楽しく大会を行いました。当日の小谷村は大雪で、開会が若干遅れたものの、男子は10人、女子が3人参加し、年齢により若干のハンデをつけて男女別に競技を行いました。経験によりグレードにも幅があり、大会運営にも苦心しましたが、ジュニア委員長の村主先生の設定で10cからdの壁が用意され、午前中はそこで講習会を行った上で、午後の大会が行われました。参加した高校生の所属は北から白馬、上田西、松本美須々ヶ丘、松本深志、岡谷工業、下諏訪向陽とちょっとさびしいものでした。そのほか小学生、中学生はいずれも熱心な親御さんとジムに通っている子たちでした。近い将来こういう子たちが少しずつ増え、高校に入ってくることも予想されます。そんな子たちが高校に入りクライミングをしたいという希望をもっていたら、僕らはどう対応しますか?社会体育に任せておくということも一案ですが、広く横のネットワークを作って何か手をうてないでしょうか?そんなことを感じさせられる大会でもありました。
なお、競技の結果は以下のとおりです。上位入賞者には長野県山岳協会より賞状のほか、豪華?賞品が手渡されました。
ジュニアクライミング選手権レザルト
男子 |
女子 |
||||
第1位 |
牛山 徳仁 |
岡谷工業2年 |
第1位 |
大野 結 |
白馬中1年 |
第2位 |
中島 渉 |
梓川小5年 |
第2位 |
清水 理恵 |
松本美須々ヶ丘2年 |
第3位 |
大西 哲理 |
松本深志2年 |
第3位 |
永井うらら |
白馬北小4年 |
初冬の中央アルプス
一昨日、昨日と信高山岳会の例会山行で中央アルプスの前山、南信州の飯島町と松川町、高森町の烏帽子岳、念丈岳、本高森山へと行ってきました。メンバーは松田(大町)杉山(高遠成年の家)重田(岩村田)星野(屋代)久根(風越)沼田(松本開成中)に私の7人。この道は地元の念丈クラブという山岳会が3年前に笹刈りをするなどして整備をした登山道だということでした。コースの最高点は2327mの池の平山。2日間とも天気に恵まれました。眼下に伊那谷を望み、そのさきについたてのように聳える八ヶ岳と南アルプスの大パノラマ、そしてすぐ間近に迫る南駒や千崖嶺の雪をかぶって白く光る峰などの景色は日ごろの疲れをふっ飛ばしてくれるような素晴らしいものでした。
それにしてもこの時期にこの場所でというような積雪の多さにはびっくりしました。時には股下までというようなラッセルを強いられ、初日は予定の行程のほぼ3分の1程度のところでテントを張りました。時期的なものか雪のためか2日間全く仲間以外の誰とも会うこともないという久しぶりに静かな山行で、十分山のよさを満喫しました。
編集子のひとりごと
今年は秋がなく、夏からいきなり冬になったというような季節の変化です。昨日の山行でも実感としてそう思いました。
先日槍ヶ岳山荘の先々代のご主人穂苅三寿雄さんのガラス乾板写真集「アルプス黎明」(すばらしいできばえです。ぜひご覧あれ)が信毎から出版され、その祝賀会が松本で開かれました。その祝賀会の中で、長年山に暮らす山小屋の主人たちが11月としては異例の雪の多さを口々に語っておりました。すでに雪崩事故も起こっています。今年は雪山のシーズンが長くなりそうです。雪山は美しくそして楽しみですが、生徒の引率の際など事故には十分お気をつけて。(大西 記)