不定期刊行             36  2002.12.8

中信高校山岳部かわらばん

   編集責任者 大西 浩

                             木曽高等学校 定時制

木曽高校定時制アウトドア同好会の一日

12月6日金曜日、朝8時大西は自宅発。井川城でKY君をピックアップ。さらに木曽街道を進み、8:50に楢川村贄川のKW君を乗せ、木曽高校へ。ここでもう一人の顧問北澤先生と合流し、さらに南へ。9:40上松ねざめホテルで待つYT君が一緒になった。今回の目的地は南ねざめとも呼ばれる南木曽町の柿其渓谷。国道19号を進み、JR十二兼の駅を過ぎると柿其への入り口だ。国道から分かれるところで、最後の参加者ST君に電話。ST君の家は柿其なのだ。柿其橋を渡ると頭上に国の重要近代建造物に指定されている水道橋がある。その下をくぐり、ST君の待つ集落の最奥へ。4年生のST君はもう免許を持っているので、自分の車で僕の車のあとに続いた。こうして10:15柿其渓谷遊歩道の入り口に到着。

生徒4人、顧問2人の総勢6人。松本を出発するときは、少々小雨交じりであったが、天気予報どおり、南に向かうにつれ青空が広がり、出発するころは快晴になっていた。恋路橋を渡り、黒渕を経て牛が滝の展望台へと向かう。僕とST君以外の4人は始めてきたので、ゆらゆらゆれる長さ35ⅿのつり橋と川の清冽な流れにまず目を丸くする。橋を渡って少し進むと黒渕。渕のエメラルドグリーンの水の色を見て、まずYT君が歓声を上げる。続いてKW君は水際まで駆け寄り思わず水を手にとってみる。口数の少ないKY君も二人に続いて水辺まで下りていく。3人とも美しさに魅せられたかのように、しばしその場から動こうとしない。時間は十分あるので、彼らのするにまかせる。しばらくしてから柿其川の左岸につくられた遊歩道を進むことおよそ10数分。正面に牛が滝が望めた。この滝は巨大な花崗岩の滝で壮観な景勝地だ。

十分に景観を楽しんだあと、恋路峠へ登る。といっても、距離的にはわずかなものだ。すでに木々の葉は落ちているため、林の中は明るく、落ち葉を踏みながらの峠までの登りはなんとも心地よい。大桑村との境にあるこの峠は2万5千分の一地形図には「小路峠」と記載されている。いつのころからか誰言うとなく音が似ている「恋路峠」とよばれるようになったのだという。峠に到着するとちゃんと「恋路峠」という標識が立っていた。展望台に登ると、それほど視界は広くないが、中央アルプスの白い嶺が目に飛び込んできた。左から駒ケ岳、宝剣、手前に三の沢、そしてその右手には前衛の糸瀬山が堂々と大きい。しばらく眺望を楽しんだ後、恋路橋まで今度は最短ルートを下った。

11:45 駐車場に戻り、みんなですき焼きを作った。12月というのに風もなく穏やかな天気で、寒さに備え厚着をしているせいか、太陽の光の下ではむしろ汗ばむほどの陽気である。生徒たちはみな満足げである。実は参加した生徒は4人とも中学校までは不登校の生徒たちであった。ST君はアウトドア同好会の会員ではないのだが、今年は立派に生徒会長を務めるまでになり、僕の「せっかくお前のうちのそばに行くんだから

ガイドしてくれないか?」という一言に二つ返事で参加をしてくれた。KW君はからだを動かすことは大好きであるが、勉強は苦手で、ちょっと何かあると学校へ来ることができなくなってしまう。でも山が本当に好きで、全日のワンゲル部との山行もこなし、一年のときからあちこちの山に行っている。KY君も小学校中学年以来ほとんど学校には通ったことのない生徒で、高校に入っても周期的に不登校の状態が現れ、木曽高校に入学して4年目になるが未だ学年は2年生だ。でも自然の中に身をおくのは大好きで里山歩きや山菜取りに声をかけると、喜んで参加する。そして、もう一人のYT君。彼は何でもやってみたいのだが、とにかく自分に自信が持てず、そのための一歩を踏み出そうとしても、なかなか前へ出ることができない。昼夜逆転に近い生活をして運動をほとんどしていない彼にとって、今回の参加に当たっても、とにかく心配事は「朝起きられるだろうか。僕でも歩けるようなところだろうか。」ということだった。

 そんな4人が、それぞれにうまそうな、そして本当にいい顔をして、すき焼きをつっついている。いつになく、みな饒舌で箸が進む。KW君など前々日に「お前が仕切って調理するんだぞ」と僕にプレッシャーをかけられ、心配で母親に前日すき焼きを作ってもらい、「作り方を予習してきた」とのこと。そんな会話も楽しげだ。各自がふだんはしない自分の話を始めている。こうして自分が解放できるというのは、自然のもつ素晴らしさだと実感する。ゆっくり昼食を楽しみ、その後は上松町に戻って温泉につかり汗を流した。この日は、平日だったので、そのあと、授業があるため学校へ戻った。同行の顧問北澤先生は、山はもちろんアウトドアライフもほとんど体験したことがないのだけれど、無理に顧問をお願いしている。が、彼女も生徒たちの解放された表情にびっくりしたのだろう。学校へ戻ると、彼らの一挙手一投足と、初めて訪れた柿其渓谷の美しさを、その日一日中職員室で語っていた。

今年最後の旅費交渉

12月3日に高教組独自の確定交渉がありました。昨年度、県から旅費規程の方針が示され、今年になってそれが実施される中で、山岳部の引率については多くの点で問題点を抱えている旨、ずっと訴えてきました。これについては高教組本部でも大きく取り上げてくれました。その点については本当に感謝しています。4月の提出交渉以来、私ばかりでなく、浮須さん、村主さん、菊池さん、中原さんなど現場で山岳部の顧問をしている大勢の皆さんが県に訴えてきました。また、それぞれの現場でも個別に事務や管理職との交渉の中でわずかではあっても、訴えを認めてもらったとの声も耳にしています。12月3日の交渉では久根さんが意見を言ってくれ、それを本部でも近藤さんはじめ多くの方がフォローしてくれたはずです。そういった直接その場に居合わせた人に個人的に聞いていないのでなんともいえませんが、先日発行された高教組の速報を見る限りでは、大きな前進があったわけではないようです。しかし、「県当局も問題点ありとの見解は示した」というようなことが書かれていました。その意味ではまだこの問題は終わったわけではないと思います。みんなで知恵を寄せ合って、気分よく生徒とアウトドアを楽しみたいものです。「そんな情報交換会を開ければいいのだけれど・・・。」先日の北信越高体連の連絡協議会へ行く途上の車の中でもそんなことが話題になりました。

  編集子のひとりごと

生徒と一緒にいい一日を過ごしました。学校とはまたちがった一面を見せる生徒に大自然の素晴らしさを感じました。それにつけても、最近山の仲間が集まるたびに出てくる話は、給与カットの問題と旅費問題。これってなんか寂しいね。(大西 記)