不定期刊行                53  2003.5.22

中信高校山岳部かわらばん

    編集責任者 大西 浩

                           木曽高等学校 定時制

山岳総合センター高等学校登山研修会 その1 感想文より

16日から3日間今年もセンターの研修会が行われた。今年の参加校は4校。初日は主任講師の講義の後、センターの前の庭でロープワークの実習を行った。結び方は8の字、ダブルフィッシャーマン、テープ結び、巻き付け結び、プルージック、クローブヒッチ(インクノット)を指導。そのあと、スタッカットと固定ロープの通過の方法を実際に行ってみる。翌日は扇沢から大沢小屋まで移動し、雪上に幕営。午後はみっちり雪上訓練。キックステップからアイゼン歩行、ピッケルの使い方などを指導した後、滑落停止、固定ロープの通過、余裕がある班はスタッカット、懸垂なども行った。最終日は、これらの技術を使い、確認しながら実戦訓練として針ノ木峠までの往復。参加した生徒や顧問は次のような感想を書いてくれた。

雪上訓練での、歩き方の練習やピッケル・アイゼンの使い方などを、実際の場面を想定して習得することにより、3日目の針ノ木峠の往復でも危険なこともなく無事に行ってくることが出来た。針ノ木峠往復で、前日やった訓練の中で一番重要なのは、滑落停止の訓練でもザイルワークの練習でもなく、基本である歩き方とピッケルの使い方なのだと実践を通して知り、前日あれだけ訓練したのにはそれなりの理由があってのものだったのだと痛感した。(長野吉田 男子)

新しい技術をどんどん取り入れた実技指導であったと思います。針ノ木峠まで行くことが出来て、生徒たちにとって良い経験であったと思います。お世話になりました。(長野吉田 顧問)

ATCを使っての実習はしたことが無くて緊張した。針ノ木峠の登りがすごくきつかった。足が滑って、歩き方をいちいち確認しながら登ったのが疲れた。針ノ木峠の小屋からの景色はすごくきれいだった。テント場では、ごはんがすごくおいしく作れたのと、テントを立てるのが大変だったことが印象深く残った。(美須々ケ丘 女子)

滑落停止訓練での、一回転してからピッケルで止まる実習は、ジェットコースターみたいでおもしろくもあり、少し怖かった。滑落停止体勢に入る時は、「怖い」と思わなければけっこう止まるものだと思った。(池田工業 男子)

今回初めて雪の上を歩いて訓練をしたのでとてもいい経験になって良かった。(大町 男子)

 

高校生・顧問の研修の機会――他県の場合

 

52号で高校生を引率するに際して研修の重要性について、書いた。実際に研修の場面というのは、各種の講習会や登山教室に参加すること、山岳会に入ること、その上で経験を積むことなどが考えられる。顧問の研修会や講習会については、長野では行われていないが、他県では高体連という立場でのものが盛んなようだ。ちょっとその辺の事情を知ることができたので、掲載したい。

 

その1、群馬県篇 岳人6月号に「群馬県高体連登山専門部」主催の雪上での登山技術の取得や遭難対策を目的とした「リーダー冬季講習会」の模様が、カラー写真とともに載っている。題して「雪山はもうひとつの学校」。1974年3月から30年間、尾瀬富士見小屋を拠点に続けられてきた全国的にも珍しい講習会だという。日程は3月25日から28日までの3泊4日。今年は18校、顧問、生徒を含め135人が参加したとある。この規模は、ほぼ長野県大会の現在の規模と一致する。それだけの人間を集めることの可能なのは、何よりこれまでの積み重ねが大きいのだろう。しかしそれにしても羨ましい限りである。詳細は実際に岳人を見てもらえばわかるので、これ以上は書かないが、生徒にとっても教師にとっても、ともに学べる有益な場となっている。

 

その2、新潟県篇 ホームページからうかがい知るに顧問同士、また生徒の研修の機会は長野県の比ではない。2月14日から16日には、高体連登山専門部主催で守門岳で積雪期顧問研修会が行われ、顧問17名が参加している。そして、これは公式の物ではないようだが、3月27日から4月1日まで新潟県内の10校が巻機山で合同合宿をしている。さらに4月23日から25日には総体1次予選と称して、雪上技術講習会が行われている。これへの参加生徒数は男子97、女子22、顧問46。3日間の日程の中で、雪上技術講習(歩行、ロープワーク、滑落停止など)も交えながら競技が行われるらしい。

 

まとめ どちらも隣の県でありながら、こんなに充実した顧問・生徒への研修が行われているとは、今まで露ほども知らなかった。新潟県については、ホームページで公開されているのを見て知った(守門も巻機もホームページ上に写真とともに研修の様子がアップされている)のだが、すばらしいですね。新潟の新保さん、吉田さんには、このかわらばんを送っているので、もしかしたら、こういった研修会がどんな経緯で生まれたか、またどのくらい歴史があるのか、もっと具体的な様子を教えてもらうことができるかもしれません。(多分?・・・いや、きっとできるでしょう?)

どちらも見ていて羨ましいのは、こういった企画を後押しできるようなベースになる山や山小屋の存在だ。10年ほど前、我が信高山岳会が訪中登山交流会を組織していたころは、その訓練と言うことで、3月の鍋倉山、5月の仙丈などで高校生の技術交流会が積極的に行われていた。当時山岳部を見始めた僕にとって生徒を育てると言うことが、顧問を育てることになると身をもって体験できる場だった。しかし、今は・・・。

県内には山岳総合センターという研修施設もあり、針ノ木での研修会はセンター開設当時から多くの生徒はもちろん、顧問も育ててきた。また顧問の親睦と技術向上のために設立された我が信高山岳会もあり、考えてみればそれが、結局現在のような形を生み出してしまったとも言えるのかもしれない。

編集子のひとりごと

センターの研修会が終わり、次は県大会。専門委員長から部報の2号も届いた。ホームページによれば、参加校は男子正規16校64人、女子正規6校24人、男子Bチーム3校12人、男子オブ13校26人、女子オブ6校10人、合計136人とのこと。年に一回の県大会、今年はどんなドラマがくりひろげられることだろうか?(大西 記)