不定期刊行             55  2003.6.3

中信高校山岳部かわらばん

    編集責任者 大西 浩

                           木曽高等学校 定時制

県大会は高校の安全登山のスタンダードを確認する場

誤解を恐れずに言うなら、高体連の大会は、「競技という形式を借りた安全登山の普及」が目的の一番だと言いたい。もちろん勝敗はついてくるが、この「安全登山の普及」に意味をおくことで、この大会の存在意義も変わってくる。ここで審査されている内容は、無雪期の高校山岳部の登山のスタンダードと いってもよい。したがって審査される内容は、日常の山岳部の登山活動に役立つことでなければ意味がないし、それがオープンにならなければやる意味はない。 その意味で、講評という形で毎年大会後に配布されるものと全国高体連登山部報が審査基準である。これらの蓄積が審査の際の基本であり、その意味ではこれは100パーセントオープンになっているものだ。そしてこの蓄積は安全登山の上での非常に役立つマニュアルである。同時に県大会では他校との交流の中で、普段は気づかぬ工夫や新たな発見に驚かされ、なるほどなと思わされることも大きい。

僕 は今年、9年ぶりに審査員を仰せつかった。この間、北信越や全国では審査にたずさわったことがあるが、県大会では専門委員長は基本的に運営に回るので、こ ういうことになった。久しぶりに審査をしながら、僕は指導に重きをおいて、生徒にはこの大会での経験が次に生きるように、減点対象になる部分については個 々に説明したつもりだ。そうすれば、選手諸君は納得できるし、次の山行に役立てることもできる。かつてもそういうスタンスはあったものと思うが、僕が思う に今ほど審査基準がオープンではなくて、参加した生徒はもちろん顧問にとっても一体何がよくて、何が悪いのかわからないまま成績がつけられていたという印 象があったと思う。だから、あえていえば審査員のいる学校は比較的上位に入賞しやすかったということがあったことも否定できない。僕は専門委員長をしてい た時、歴代の委員長にならって、できるだけ多くの顧問に大会に関わって頂くようにした。そして、当然のことながら審査基準についても、公平に情報を流して きた。そして競技をする中で、安全登山を身につけてもらいたいと考えてきた。

で、 久しぶりに審査をして、この審査内容のオープン化明確化について次のことを感じた。今年の県大会の男女上位3校、言い換えれば上位大会出場校の6校がすべ て別の学校というのは、僕の記憶している限り初めてである。今まではどこかの学校が必ず男女で上位に入賞していた。しかし、今年は男子が大町、県ヶ丘、野 沢北、女子が風越、木曽、野沢南である。もちろんその理由の第一は選手監督の努力に起因するが、この副次的な理由の第一として、僕はこの大会の審査基準が オープンかつ明確になってきていることをあげたい。今回の入賞校の中には専門委員経験の全くない先生の引率される県ヶ丘と野沢南の名前があることに注目し たいのだ。つまり専門委員や審査員の経験のない先生が顧問をしている学校にも審査内容がしっかり浸透しているということだ。当たり前といえば当たり前のこ とだが、登山という日頃は競い合わない世界の中に、競技という観点を持ち込むとき、そのルールをしっかり浸透させることがいかに難しいことか。大会に先 立って行われる審査員会での議論がそれを証明している。そして、この審査内容の浸透はとりもなおさず、安全登山が全県に普及していくことなのだ。

富山県では・・・富山県中島先生からの報告です

富山県の中島小夜子先生からメールをいただきましたので、ご紹介します。

昨 日 県総体がありました。大会は男子5チーム、女子1チームの中からのインターハイ選出ですから・・。選手も顧問も山人がいない山岳部です。そろそろ昔の ように輪番制を考えねば登山部存続そのものが不安です。(私はリハ〔国体リハのこと−大西注〕で水窪町=台風で中止でしたが)先日、北信越代表者会議で新 潟の高体連の様子を聞いて羨ましく思いました。底辺が広いということはとても大事だと思います。そのことが今度の北信越国体にも関係して、いない選手選び が大変なのです。山は楽しむものであって・・と大声で叫びたい気持ちです。

 ですから先生からのかわらばんを見るたびに素晴らしい事だと感激しております。

中島 小夜子

富士山頂からの大滑降、by山岳総合センター加々美主事

県大会にわざわざ足を運んでくれた、山岳総合センターの加々美主事はスキーの名

手。その彼の報告です。「かわらばん」では、多分、今シーズン最後の山スキー報

告になると思います。

昨日(5 月22日)は代休をいただき、富士山へスキーに行ってきました。兼用靴で歩くのが大変だろうと思い、ジョギングシューズを履いていったのですが大正解。雪 が少なくて、8合目の上までジョギングシューズで登れました。そこから山頂までも兼用靴のキックステップでOKで、ノーアイゼン、ノーピッケルでした。 がっ、と言うことはスキーは・・・。白山岳とのコルから吉田大沢への滑り出しは快適で(2日前に新雪が降ったらしく、純白のきれいな雪面で、雪質は多少重 いものの下の雪ともなじんでいて滑落の心配は少ない)、9合目高度からやや急斜面になるもジャンプターンがきれいに決まって来た甲斐があったと感動に浸っ ていた(小回りターンでスピードを制限していたので、息が切れて滑るより感動に浸る時間の方が多かったりして)が、それもつかの間。8合目あたりになると スキーが「ガリッ」と音を立てた。残雪がなく、露岩の上に数センチの新雪がある状態で、直滑降ならまだしもターンをするとスキーが岩を削ってしまう。登る 時に確認した状態では、登る時に確認した状態では「7合目までは何とか残雪を拾って滑れそうだ」と思ったが、(実際に汚れた残雪をうまく拾えば滑れないこ とはないが)、今シーズン買ったばかりのスキーの方が大切になり、ふたたびスキーを背負って8合目あたりで夏道に駆け上がった。そこからジョギングシュー ズで下ること駐車場まで1時間半。早い話、5時間弱登って、スキー20分、夏道に戻るのに10分、夏道の下り1時間半、ということはスキーに行ったと言う より登山に行ったというような状態でした。でも一応富士山山頂から滑れて満足満足。      加々美 隆

編集子のひとりごと

県大会終わりました。上位入賞チームおめでとうございます。生徒の声など聞かせていただければ幸いです。高校山岳部の登山で何を目指すかはそれぞれだと思いますが、「ベーシックな部分はきちんと押さえねば」審査をしていて感じました。(大西 記)