不定期刊行             63号  2003.7.16

中信高校山岳部かわらばん

    編集責任者 大西 浩

                           木曽高等学校 定時制

こちらも推薦します。「春夏秋冬 山歩きの知恵」田村宣紀著

著者の田村宣紀(たむらのぶよし)さんは、ちょうど信高山岳会が「長野県高校生訪中登山交流会(訪中隊)」を組織していた80年代の終わりから90年代の初めにかけて、長野県山岳協会会長(現顧問)をされていた。この高校生訪中隊は、長山協の主催する日中合同登山技術研修会から派生したものであった。そんなことで、当時は田村さんにはいろいろな面でお世話になったものだ。それ以後も僕自身は、長山協の理事をしたり数度の海外遠征などの際にも随分と目をかけていただき、多くのことを教わってきた。

 この「春夏秋冬 山歩きの知恵」は、その田村さんが自ら主宰する山岳会「山学山遊会」の会報で書きためてきたものを中心にまとめたものだそうだ。内容は、田村さん書き下ろしによる50の山の知恵の他に、コラム「ここらで一服」、山学山遊会の仲間による「山の愉しみ」や「私の山旅」、また、日赤の清水公男ドクター(カシタシ主峰遠征には大変お世話になった)による「山の医学」などからなり、立体的に仕上がったちょっと小粋な本である。

「大西さん、技術はくせになってこそ本物だよ。たとえば、雪山でちょっと休むときの股ピッケル、あんなどうってことないことでもさ、休んだ瞬間に体がすっと動くようでなくちゃ。そんな単純なことが意外と生死をわけたりするんだよね。」田村さんにかつて言われたことがある。くせにするためには、理屈がわかれば納得がいき、理解も早い。そうしたところにちょっと一工夫で、知識はやがて知恵となる。この本には田村流のウイットに富んだ文章で、単なる「ああして、こうして」という知識や技術だけではなく、「なぜ、どうして」という理屈が、また長年の経験に裏打ちされた知恵が、いくつも書かれている。

その一つ、たとえばこんな高等技術(知恵)に言及した登山書が今まであっただろうか?曰く「すこし汚い話ですが、寒気は鼻の粘膜を刺激して、鼻水を垂らします。この鼻水を一々ちり紙でかんでいたのでは大変ですし、微妙な場所ではそれも出来ません。そこで、登場する高等技術が手鼻の術。親指と人差し指で鼻を摘まみ、親指で片方の鼻の穴を完全に密閉しながら鼻全体をねじり、噴出させる方の穴を斜め前方に向けておいて、一気に息をふきだすのです。方向が悪いと体にかかるので要注意ですが、二、三回練習すれば上手にコツがつかめます。」と。実際寒い岩場で確保していて、鼻水が垂れてきてどうにも我慢できないようなとき・・・そこで、登場する高等技術が手鼻の術。・・・制動手はロープをしっかり握りながら、誘導手でチン。というわけだ。思わず笑ってしまうけれど、これはまさしく知る人ぞ知る高等技術、一級の知恵と言えよう。

「登山は人間が考え出した一番面白い遊び、そして人生の『探検』だ」という著者に僕は全く同感である。そんな著者が40数年の経験で得てきた知恵にそっと耳を傾けてみると、なるほどなあと思うことしきりである。山を始めたばかりの高校生にもおすすめしたい。20日にホテル信濃路で出版記念祝賀会が開かれます。

「春夏秋冬 山歩きの知恵」 田村宣紀著 信濃毎日新聞社刊 1800円

高体連の業務用無線機 8

前回で導入までのいきさつを書いたが、これは一人長野だけの問題ではない。この件については、先に秋に開催した北信越高体連登山部連絡協議会で話題にしたことは記した。このとき可能ならば、同一歩調で各県の高体連本部に訴えてみよう、ということで会議は閉じられ、実際に各県では持ち帰り、それぞれ問題提起をした。従って我々からの要請で、秋以降北信越各県の高体連の理事長レベルでもこの問題については何度か情報収集が行なわれていた。特に同じゼロエリアでもある新潟は全く同じ問題がいつ起こるとも限らないということで、新潟の藤田専門委員長は積極的に動いてくれ、逐一情報を交換しながら進めてきた。こういった状況で、新潟県でも3月の段階で長野の決定を受け、なんとか予算をつけてもらえそうだというところまできていた。

業務用無線というのは、団体に免許が与えられ、周波数は割り当てられたものしか使えない。本来免許の異なる別組織の二つの団体に同じ周波数が割り当てられるということは簡単ではない。しかし、将来的なことを考えた場合、新潟と長野がともに業務用無線を持つことになったとしても、互いに互換性がないのでは宝の持ち腐れである。そこで、事前に何とかなりそうだという連絡を藤田先生から受けていた僕はマジョルカ・コムとの交渉において、導入時期に若干のズレがあったとしても、同じ免許同じ条件で卸してもらえないかという打診をして、好感触を得ていた。結果的にはこの条件もマジョルカ・コムが決め手になったもう一つの理由であった。(以下次号)

今年の国体山岳競技長野県代表チーム

今年の北信越国体山岳競技は、新潟県安塚町を会場に7月26日(土)27日(日)の両日開催される。5月末には白馬で縦走の予選会、6月初旬には駒ヶ根でクライミングの予選会が行なわれ、その結果と様々な情報を重ね合わせ、今年の選手団が結成された。その北信越大会の選手団(少年)は以下の通り。男女リーダーの牛山君と清水さんはいずれも山岳部(ワンゲル部)に所属の3年生で2年連続の出場となる。望月君はそんな清水さんの影響で国体に興味を持った1年生。木曽高2年の小松さんはワンゲル部の部長で、はじめたばかりだがクライミングに興味を持っている。嘉部君と篠原さんは中野実業の2年生でクロス部の選手である。男子監督の村主先生はクライミングでは県内一造詣が深い。山岸先生は、中実のクロス部の顧問で県労山の事務局長もされている山好きの先生である。本番まであとわずかだが、健闘を期待したい。

少年男子(Cはクライミング、Tは縦走)

少年女子(Cはクライミング、Tは縦走)

分担

氏名

所属

分担

氏名

所属

リーダーC

牛山 徳仁

岡谷工業

リーダーC

清水 理恵

美須々ヶ丘

T/C

望月悠太郎

美須々ヶ丘

T/C

小松香央里

木曽

嘉部 安紘

中野実業

篠原 舞香

中野実業

監督

村主 恭則

岡谷工業

監督

山岸富佐夫

中野実業

編集子のひとりごと

国体は長山協の国体委員長浮須先生が、選手選考から錬成まで本当にご苦労されている。過渡期の国体ではあるけれど、こちらもご支援よろしく。(大西 記)