不定期刊行             97号  2004.5.30

中信高校山岳部かわらばん

   編集責任者 大西 浩

                      木曽高等学校定時制

陽春の南木曽岳

メンバー 唐木真澄、唐木芳子  日時 4月29日 日帰り

 山岳協会の臨時総会が終わり、ようやく引継ぎも出来、久しぶりに山に行こうと29日に三の沢岳に行く計画を立てた。しかし27日に山は雪となり、下から見上げると真っ白に見える。うーむ、こりゃーまずいぞ、極楽平への斜面は雪崩の危険性がある、下手をすりゃー地獄だ。しかしそれだけではない、千畳敷には我が親しき友が補導員として頑張っている。そこでひと悶着せねば登れない。こっちの方がやっかいだ。又にするかと、あっさりあきらめ、目的地を南木曽岳に変更する。飯田で高速を下りて153号線を南下するころは初夏のような陽気となる。昼神温泉を過ぎ清内路に入ると一本の木にピンク、赤、白の3色の花がびっしりと付いた木が目立つ。それも街道沿いにかなりの数である、桜じゃーないし何の花だろうと気になる。後で分かった事であるが花桃の一種だそうな。なかなか見ごたえのある花だ。

南信州とは言ってもさすがに清内路までくると芽吹きは今一歩と言った所だ。アララギの集落に入った所で、南木曽岳登山口の看板に導かれ、右折し額付川沿いに上る。避難小屋の前に駐車場があり林道にはゲートが設置されている。今年であろうか、下段に新たに駐車場も出来て利用する登山者が増えている事を物語っている。林道沿いの遊歩道には樹木の説明板がこまめに取りつけられており、関心の有る者には有りがたい。同じ中央アルプスでも伊那と木曽ではかなり植生が違う。ここ南木曽岳ではコウヤマキの大木が群生していることで知られているが、アスナロ、ネズコも多い。いずれも木曽五木で、伊那の山には極少なく庭木として見られる程度である。しばらく行ったところで林道から分かれ登山道に入り沢沿いに登る。間もなく、下山道分岐となる。

この山は珍しいコース取りとなっていて、登りと下りが分かれていて周回コースとなっていて小さな山だが登山者を飽きさせない。所々伏流水となっている沢をはなれ、尾根に取りつく。巨木とまでは行かないが大きなコウヤマキが目に付くようになると尾根もしだいに急になり、やがてクサリ場となる。ところがそのクサリ場を巻くように立派な桟橋が懸かっているではないか、去年は無かった。安全で楽ではあるが個人的には、ぶー。南木曽岳は小さな山だが小粒でピリリと辛いのが良かったのに、ピリリが無くなってしまった。残念。

頂上にも立派な標柱が立てられていた。花の少ない山だがこの時期頂上付近はミツバオオレンの白とショウジョウバカマのピンクがわずかに心を慰めたくれる。頂上は眺望がないのでその先の笹の台地にある避難小屋まで行く。天気はよし、風も無く気持ちの良い日なので、避難小屋には入らず中アの山並が良く見えるところに陣取って、持参のビールとラーメンでのんびりとした昼とする。裏から眺める中央アルプスもなかなかのものだ。たまにはこんなのんびりとした山もいいもんだ。(唐木真澄記)

唐木さんは前長山協理事長、頼りない事務局長である僕を支えていただきました。単位不認定で、僕は留年しましたが、唐木さんはしばらく協会業務の中心的な部署から離れ、いい山登りが出来そうです。(うらやましい!)高校生の活動にも理解がありますし、伊那方面の山には非常に詳しいので、もし高校生を連れて中央アルプスなどに行かれる際に、聞きたいこと(現地の最新情報)などあれば、きっと懇切丁寧に答えてくれるものと思います。その意味で、やや古い情報にはなりましたが、今回は高校の先生たちへのご挨拶がわりに、送って頂いた山行の報告を掲載しました。ちなみに、ご承知とは思いますが、南木曽岳は、岩場や鎖場などもあって、御岳、駒ヶ岳とともに木曽三岳に数えられる名山で、木曽の人間には馴染みの山です。

県大会、金峰山で会いましょう

県大会まで1週間を切った。恐らく、この週末は多くの学校が下見に入ったことだろう。今大会の開催地金峰山は、私にとっては、苦い思い出の地。6年前の1998年。あの時は、男子のY高校(顧問の名誉のために高校名は伏せておこう)と女子の松本美須々ヶ丘高校の2校が迷子になったのであった。当時私は県の専門委員長であり、なおかつ美須々ヶ丘高校の顧問でもあった。専門委員長というのは、大会運営に責任を持たねばならない。さらに該当校の顧問としても、責任がある。このような中での、美須々の生徒たちの失踪。瑞牆山を大日岩と思ったというY高校の方にも随分肝を冷やしたものだが・・・。(ね、H先生。)彼らの失踪騒ぎで数時間をいじいじとしながら本部で無線指示を送っていたときの心境は今でも忘れられない。

しかし、彼らのY高校の生徒たちの発見後、僕をもっと驚かせたというか恐怖に陥れたのが、美須々の女子チームの行方不明だった。このときの女子チームは急ごしらえで、全く山の経験のない生徒もいたのは事実である。前回は今回とは逆コースだが、彼女たちは金峰山の頂上から、下らずに鉄山の方に縦走してしまったのである。ちなみに、頂上にはM先生が立っていたにもかかわらず・・・である。さらに彼女たちは、途中でおかしい(行けども行けども小屋につかないこと、誰もいなくなったこと)と気づきながらも、そのまま進んで行ってしまったのである。冷静に考えれば、「まさかそんなこと!」である。しかし、そんな二重のまさかが重なったのだ。そのまさかが起こるのが県大会なのである。偶然途中ですれ違った登山者からの情報で、彼女たちを発見でき、ことなきを得たのだが、あの時のことを思い出すと今でも冷や汗ものだ。実は県大会では、過去にも何回も生徒が一時行方のわからなくなったケースがある。昨年の八ヶ岳でもS高校が道を外したし、かつて飯縄でも一人の生徒がザックをおいたまま全く反対へ下りてしまい、どこかへ落ちてしまったのではないかとみんなが粟を食ったこともあった。あとになってみれば、「なんだったんだ」というようなことでも、やはりきちんと教訓にしていかねばならない。僕は、今回は一度も下見には入っていないが、いろんな人からの情報では、コース後半は荒れて倒木も多く道もわかりづらいという。老婆心ながら、大会運営本部には、そのあたりの策を十分講じて頂きたいと切に望む。

編集子のひとりごと

県大会、三日目の交流はボルダリングと散策。散策もいいけれど、岩登りのメッカ、「廻り目平」で一流のクライマーへの第一歩なんてのも洒落ている。ここ二年間の県大会のクライミング体験は、クライミングの裾野を広げている。昨年の体験から、上田高校の生徒は文化祭でボードを設置するそうだ。ぜひ生徒にお薦め下さい。(大西 記)