不定期刊行             102号   2004.7.10

中信高校山岳部かわらばん

   編集責任者 大西 浩

                      木曽高等学校定時制

充実した一週間、その1 中信高体連新人大会下見(5日月曜日)

今年の中信地区新人戦は、9月24日、25日に木祖村で行うことが決まっている。かねてから専門委員や顧問の間では、木曽地区で新人戦ができないかということは言われていたが、なかなかいい場所を見つけることができないでいた。たかが地区大会とはいえ、大会運営には適当なキャンプ地、オリエンテーリングコースがとれる山野、交流登山や交流クライミングなどができるフィールドなどいくつかの条件を揃えた場所が必要なわけで、山が多い中信地区といえど、意外とこれらすべての条件が揃った場所を見つけるのは難しいのだ。

木曽高に赴任しての6年間、「木曽高校にいるんだからいい場所みつけろ」と言われ続けてきた。しかし僕自身は、松本から通勤していると言うこともあり、どっぷり木曽につかりきれずにいるので、なかなか適当な場所を見つけられずにいた。しかし、昨年秋、木曽高定時制アウトドア部の活動で、秋に木祖村にある「水木沢自然休養林」を訪れたとき、僕は直感的にこの近辺なら大会開催ができるのではないかと思った。その印象だけで、木祖村でやることだけは決めたのだったが、具体的にどんなコースがとれるのかは未知数だ。そこで、専門委員長の小林さんに派遣申請を出してもらって、月曜日単身下見に行ってみた。

キャンプ場は「こだまの森キャンプ場」を使用できるが、そこを起点に、地図を片手に、白菜畑と林の道、沢沿いの遊歩道や池、やぶはら高原スキー場などを、およそ4時間かけて車と足で回ってみた。ラインOLにせよポイントOLにせよ、いくつかのコース取りが可能なことが確認できた。さわやかな高原をめぐる、今までとはまた一味違った面白いコースができそうだ。2日目に行う交流登山や散策の目処もたった。具体的な情報は、8月の専門委員会後に各校に送られます。お楽しみに・・・。

充実した一週間、その2 木曽福島に岩場を開拓(7日水曜日)

7日水曜日午前9時、国道19号線塩尻市牧野のコンビニでアートウォールの森山議雄さん、山岳センターの主事の中嶋岳志さんのお二人と待ち合わせをした。9時5分前に、僕が到着すると、お二人はもう駐車場で待っていてくれた。合流後3人で、19号を南下、一路木曽高校の対斜面の城山にある権現の滝を目指した。この滝のすぐそばに手頃な岩があるのだ。

かわらばん100号で「長山協では今年からスポーツクライミング委員会が中心になって、クライミングジム不在の木曽や諏訪などで、ボルダリングができるような自然の岩を整備しようという活動を始めることにした。」と書いたが、これにしたがってまずはここにルートを開いてみようと考えたのだ。岩場の開拓など僕にとっては初めてのこと。しかも今回の同行者は県内のクライミングにおいては最も名の知れた実績者二人である。そんな彼らと一緒に仕事ができるだけでも貴重な経験である。

さて、その岩場のことを少し書こう。ここは、岩場まで車で入ることができる。残置のハーケンも少し打ってあったので、ちょっと遊んでみようかということで、過去に筒井さんと二人で何回か木曽高校の生徒を連れてきたこともあった。その時に試しにボルトを打ってみたが、意外に堅くてびっくりした。しかし、今はほとんど登られていないため、岩には苔と岩茸がびっしりと張り付いている。余談であるが、ここの岩茸は見事で、その岩茸採りのために上からロープを垂らし、大きなゴミ袋一杯の収穫を果たし、木曽高の職員の飲み会に供し、喜ばれたこともある・・・。さて、10時少し前、岩場に到着した。一目見た森山さんが「いいじゃん!」と一言。中嶋さんも「堅そうだし、面白そうだな。」と興味を示された。二人の目がルートを探る。中嶋さんがサイドから回りこんで、上に登り早速ロープを2本垂らした。森山さんのボルトを打つ音が谷をこだまする。中嶋さんは上から、苔を剥がしながら岩場のクリーニング。

僕にとっては、こういった作業を目にするのは初めてのことだが、さすが岩登りの実績者二人は手際がよい。僕にできる仕事はせいぜい下で剥がれ落ちた苔を片付けたり、手の届く範囲の苔剥がしをしたりするぐらい。そんな僕を尻目にあっという間に1本のルートが完成した。森山さんは休む間もなく、2本目のルートを開く。突然「あっ」という森山さんの声。「どうしました?」と僕。聞けば、見た目以上に岩が堅いため、穴を開けるドリルのキリが折れてしまったという。キリを替えて、作業再開。わずか3時間足らずで、15メートルのスラブに3本のルートが引かれた。できたルートのグレードは、5.10BCくらいだそうだ。12時半ごろ、僕はいったん学校へデッキブラシをとりに行ってくる。学校までは往復20分程度。とってきたブラシで、岩場を磨くと苔は面白いように剥げ、細かいホールドやスタンスが明らかになってくる。できたルートを見ながら昼飯にした。この日、下界は35度という猛暑だったというが、ここは木陰になっており、さわやかな風もあって、それほど暑くない。むしろ心地よいくらいだ。

一休みした後、トップロープにして、早速三人で交互に登ってみる。二人にとってはすいすい登れるルートも僕にはしょっぱい。それでも、森山さんの指導よろしきを得て右側のルートはなんとか登ることができた。体を右へ振ったり、左へ振ったりしながらの面白いルートである。楽しい。森山さんは「やっぱり自然の岩はいいなあ。いいルートが引けた。斜度も適当で、高校生や初心者が足の使い方を学ぶのには最適のルートだ。」と言い、中嶋さんも「最初に思った以上に面白いルートができた。見た目以上に楽しめる。」と、ベテラン二人のお墨付きの素晴らしい岩場になった。先に述べたように、滝もほど近く、水にも困らないのでキャンプすることだって可能だ。

帰りがけ、ここまでほとんど毎日来ているという地元の老人が登ってきた。僕らの作業を見て「面白いことをやってるなぁ。わしらも子どもの頃は先生の目を盗んでは、ここに登ったもんだが・・・今の子どもたちはこういうことをせんなぁ。」と言った。それを聞いた森山さんが「こういうところで足をぶつけたり、手をすりむいたりして、痛みを感じて育った人間なら、ナイフで人を刺したりするようなことは絶対しない。僕らは自然から教わる部分が多い。子どもたちには今こそこんな体験が必要なんだ。」と言ったが、その一言が印象に残った。

編集子のひとりごと

それにしても、暑いですねえ。昼頃から久々に雨が降りはじめましたが、梅雨の終わりの最後の雨でしょうか?夏はもうそこまで来ています。(大西 記)