不定期刊行           118号    2004.11.5

中信高校山岳部かわらばん

    編集責任者 大西 浩

                      木曽高等学校定時制

旅費・引率問題にもの申す その2

地区

旅費・引率問題に関する意見(いずれもいただいたそのままを匿名で掲載)

中信

どのクラブでも引率、特に自家用車での引率は昨今の事例から危険を伴っていることは自明の理とはいえ、登山はそれに加えてまさに命がけの危険を伴っています。私の実際例を挙げると、

1、山岳部の夏山合宿で、裏銀座を縦走中、烏帽子岳から野口五郎岳方面に向けて朝6時に出発したところ、出発して1時間も経たない内に雷雲が発生し、命からがら逃げてきました。途中雷の接近に逃げ切れず、生徒共々ハイマツの下にもぐり、雷がおさまるまで、生きた心地もしない中、雷に早く去ってくれと祈っていました。昼頃からならばいざ知らず、早朝から雷に遭うとは全く予想の範疇を越えていました。その後、先には進める状況ではなかったので、その日のうちに下山を決断しましたが、下山したとは言え、下山した所は高瀬ダム。ワイヤの吊り橋では、渡り終えた途端につり橋に落雷しましたし、ダムサイドはかたまって走るよりは離れ離れに行動したほうが犠牲は少ないと、生徒の間隔を開けて走らせました。自分は雷に打たれても生徒だけはと、思っていても祈るより他にない状況でした。

2、これも山岳部の夏山合宿でのことですが、大天井岳のキャンプ場で、朝食を作っていた時に生徒が大鍋に一杯沸かした湯を鍋ごとひっくり返し、両足の膝から下に大やけどを負いました。直に水で冷やし続けましたが、水ぶくれになり、とても歩ける状況ではなくなりました。顧問二人が交代で背負い、また安全な所では生徒にも背負ってもらい、燕岳経由で下山しました。救助隊の方も近くにおられず、ヘリコプターも携帯電話もない時代でしたから、その方法しか仕方ありませんでした。岩場ではザイルで確保して通過し、足場の悪いところでは後からザイルで支えてもらい、生徒の家に送り届けたのは夜の10時過ぎでした。朝6時からでしたからこの日は16時間の行動でした。

3、12月の暮に雪上訓練を兼ねて、遠見尾根のスキー場の横でキャンプをした時には、猛吹雪に見舞われ、ホワイトアウトを経験しました。地形は分かっていましたし、生徒も数名でしたから、とにかく私から離れないように指示し、この時は予定通り行動できました。しかし、予想外の大雪で、ラッセルは私一人しか出来る者がなく、大変な思いをしました。

4、この他3月にやはりスキー場の隣でキャンプをしたところ、テントから出かけている間に雪崩があり、テントがすべて流されてしまったこともありました。このときも設営場所は地形をしっかり判断し雪崩の危険性のない場所を選定したのですが、予想を遥かに越える大雪で、地形が一日のうちで全く変ってしまったのです。テントに誰もおらず、生徒に一人の犠牲者も出さなかったのは幸いでした。

等々、挙げれば枚挙に暇はありませんが、これは自分の技量不足と言われればそうかもしれませんが、その時点では常に自分の経験や知識の限りで冷静に判断し行動していた結果でのことです。当然の事ながら、常に天気図はとり、天気予報も聞いていましたし、生徒への指示も出来る限り細かく行っていました。しかし、山という自然の中では人知を超えることが常に起こります。

あえて私は自分の恥を申し上げましたが、一般縦走路で落石に遭いそうになったこと、生徒の捻挫や火傷、その他危険に遭遇したことは私以外にもかなりあるはずです。こういう中で生徒のクラブ活動をしていても、歩けば金はかからないからと言われてしまうのです。なんとも遣る瀬無い思いをします。

ちなみに、登山靴から始まって衣類、テント、ツエルト(非常用簡易テント)、その他装備にかかる費用は20万円を遥かに越えています。勿論装備はある程度使用すれば消耗しますし、命にかかわるものですから常に絶対の安心をもてる状態にしておかなければならないからです。こんな思いや負担をしても、登山をしたい生徒がいる限り、仕事と思って我慢しています。装備や衣類を更新する度に妻と喧嘩をしながらでも、です。

山岳部引率旅費についての考え方

 いくつかの学校の先生方と連絡をとりながら、今までに到達してきた部分を整理すると旅費の支給の基準は以下のようになる。私は、ここにテント泊の規定を入れてほしいと思う。そこに加えて危険手当を新設してもらいたいというのが最低限の要求だが、いかがでしょうか?

種類

内訳

根拠

交通費

 

自家用車1km30円。公共交通機関実費。回送料金可。

宿泊費

テント場代

実費

水代

宿泊と一体のものと考えられる。飲料の他、洗顔、洗浄など。

電池代

宿泊と一体のものと考えられる。

ヘッ電、電話、無線機(電池の種類はリチウムも可)

燃料代

宿泊と一体のものと考えられる。(ランタン、ストーブ)

入浴代

宿泊と一体のものと考えられる。

借り上げ料

シュラフ、テント等借り上げ料は可。

食卓費

2200円

無条件支給。

雑費

電話代

実費

有料道路代

実費

駐車場代

実費

リフト等

実費

編集子のひとりごと

いただいた意見を集約すると、最低限の要求としてまとまってくるのは本文にも書いたが、テント泊についての宿泊料の規定を作ってもらうことと、危険手当を認めてもらうということだと思う。これは交渉事項と言うより、校長の県への上申事項であると思う。各学校でもぜひ、学校長に声を届けてもらいたいと訴えてほしい。(大西 記)