不定期刊行            119号    2004.11.5

中信高校山岳部かわらばん

    編集責任者 大西 浩

                      木曽高等学校定時制

北信越高体連登山専門部連絡協議会

北信越高体連連絡協議会が30、31の両日南牧村野辺山で開催された。折からの地震で新潟県の先生方が来られなかったのが残念だった。失礼ながら、この場を借りて心からお見舞い申し上げたい。長野からは登山部長、各地区専門委員長、インターハイ出場校の監督、それに私が参加した。来年は本県が北信越大会の当番校ということで、協議会を大会会場地(金峰山)に近いこの地で主催したというわけだ。長野県内に住んでいる私にとっても奥秩父は遠い。まして北信越の仲間にとっては、こんな機会でもなければ訪れる機会の得にくい山である。石川の先生方は一日早く来県して、30日は朝から金峰山に登ってきたとのことだった。北信越にはどの県にもいい山がある。そしてそのいい山で、生徒はもとより、顧問の間でも交流が続けられてきた。長野では過去、飯縄山(北信)、八ヶ岳(南信)、雨飾山(中信)で開催され、4巡目の今度は東信が担当して行うことから、金峰山が選定された。会議の場では議論を戦わせても、第2部懇親会では例によってこの会議おなじみの各県持ち寄りの地酒によって大いに盛り上がった。来年も星野専門委員長の下、ここを舞台にすばらしい交流が行われることだろう。

旅費・引率問題にもの申す その3

地区

旅費・引率問題に関する意見(いずれもいただいたそのままを匿名で掲載)

中信

山岳部の顧問は、いったん山へはいれば24時間態勢で引率責任が出てきます。ほかの運動部にも引率責任はありますが、山の場合、ベンチに座って大声で指示を出しているわけにはいきません。自分も重い荷を背負って、汗水垂らして山道を歩き、その上で適切な判断をし、指示を出さねばならないのです。そしてその判断や指示が時には命に関わってくるような場面も考えられます。

以前本校の生徒と御岳へ山スキーに出掛けたのですが、帰りがけ生徒が転倒し、膝をひねってしまいました。僕は彼のスキーをザックにくくりつけ、もう一人の顧問の先生とゆっくりサポートし、励ましながら歩かせて下らせました。幸い顧問が二人いたからまだよかったし(生徒も一人)、もうゲレンデに下りてからのことだったので事無きを得たわけですが、山では引率はどんな場合でも複数ですべきであること、また突発事故に備えた対応が必要であるということを改めて認識しました。

また、山に登るにはそれ相当の道具も必要です。しかし、新素材の開発や需要と供給の関係で、一般に山道具は高価です。しかし、命を賭けるものですから、道具も安いまがいもので済ませるわけにはいかず、いいものを購入しなければなりません。実際普段着ている綿の下着やジャージ、普段履いている運動靴で山に行くわけにはいきません。その上でザックから始まり、シュラフやマット、食器にヘッドランプ、コンパスや地図に至るまでその部分はすべて個人持ちです。それらの装備もすり減らしながら、生徒の安全に責任を持って山へ行くなんてことは、よっぽどの物好きでもないかぎり、できません。

これじゃー、ヘリコプターにでも乗って、空の上から生徒に指示出して、その代金を実費請求でもしてみましょうかねって気分になってしまいます。

テント泊については、現在全く保障されていませんが、テントで暖をとり、水を作って食事を作るのに燃料費がかかります。暗くなれば、ランタンの灯やヘッドランプの電池も必要です。万が一の連絡手段のための無線機や携帯電話。これらの消耗品は、すべてが整っていない山の中だからこそいずれも必要なものです。テント泊は金がかからないなんて冗談じゃないです。最近は男女が同じテントに寝泊まりするのが問題だと、常に顧問は別テントを持参する例も増えてきていると言います。だいたい、テントそのものからコッヘル、ランタン、シュラフなどの生活用品はほとんど個人持ちでその減価償却の分は全くみてもらえないなんてのはどう考えても不合理です。少なくとも、テント泊、危険手当の二つぐらいは別枠で考えてもらいたいです。

北信

1994年当時、私は東信のある高校の山岳部を率いていましたが、その1年間の間に、下手すれば、校長もろ共首がとんでいたような事件を二度経験しました。一つは、八ヶ岳で生徒一人が道をはずれ絶壁の途中で動けなくなってしまっているのを知らず、行者小屋に遭難救助を求める1歩手前で、一般登山者の通報によりからくも連れ戻せたこと。二つ目は、剣岳で生徒がまさかの肺水腫になり「あと1時間遅かったら死んでたぞ。」と言われつつ、富山県警山岳救助隊のお世話になったこと。どれだけ注意を払っても(お前が甘いと言われればそれだけですが)危険と隣り合わせが山岳です。そして、このような事は運が悪ければどこででも起きえます。この教訓から、もしまたどこかで私が山岳部を面倒見ろといわれたなら、必ず生徒達にそれなりの保険をかけるかかけさせます。そうしないと今はとんでもないことになりそうだから…。それって、個人負担ですか?

剣の時は、後で診療所にお礼に行った生徒から、その夏に水晶岳では高校生が肺水腫で亡くなったと言っていたと聞きました。その顧問の先生や校長はどうなったのかなァと、当時考えたことを思い出します。

北信

かつては,宿泊費が山での危険をともなう生徒引率の対価という認識が管理職と顧問間にありました。それが今、県教委が安易に他のクラブと同様に扱ってしまうことで問題をつくってしまっています。現場の管理職や他のクラブ顧問も山岳部の特殊性には理解を示せるはずです。そこを汲み取って県には判断していただきたいです。

編集子のひとりごと

今日現在、11名の方から貴重な意見を頂けた。どの意見を下さった先生も山岳部の顧問をして苦労をしたことのある山好きの人ばかりである。118号とここにあげた最初の2つの高校の事例は、他人事ではない。山で「ヒヤリハット」を経験している方は多いはずだ。このような事例が今まで表立っては取り上げてこられなかった理由もそれなりにあろう。それがこうして出てきたこともそれなりに意味のあることだと思う。この現実を県教委は重く受け止めてほしい。また、最後の北信の先生の訴えは、多くの先生方のご意見と深く関わるが、これを読んで改めて山の引率と言うことを管理職には今一度きちんと認識してもらいたいと思った。(大西 記)