不定期刊行             134号  2005.4.13

中信高校山岳部かわらばん

     編集責任者 大西 浩

             木曽高等学校定時制 

1回全日本山岳スキー競技選手権大会

「山岳スキー競技」とは耳慣れないことばだが、ヨーロッパアルプスで始まった山スキーを使った競技である。この山岳スキー競技が世界各地に広がり始めている。2004年3月にスペインで実施された第二回世界選手権では、ピレネー山脈のスキー場周辺に設定された5回の登り下りを含む水平移動距離20km、累積標高差2100mのコースで競技が行われ、通常の山スキーならば一日行程のこのコースを、世界のトップ選手はわずか2時間30分で走破したそうだ。日本を含む世界各国から237名の選手が集い、盛大に行われたこの大会を視察してきた日山協の国際部が中心になり、来週の日曜日(4月17日)に、栂池で国内で初めて大会を開催する。場所柄、長野県山岳協会もお手伝いをすることになり、2月から準備を進めてきた。信高山岳会の関係者には、役員として多くの方に協力いただくことになっている。また長野県高体連登山専門部、新潟県高体連登山専門部には業務用無線機をお借りして、大会をスムーズに運営できることが可能になった。あわせてこの場でお礼申し上げたい。

さて、その大会も直前に迫ってきたわけであるが9日の土曜日に、そのコースに入ってコース作りをしてきた。メンバーは僕と松田大さん、小林國弘さん、大西英樹さん、白馬の降籏義道さん、日山協から国際部の笹生博夫さん、笹生さんの友人の若木さん。

コースのあらましは、地図を参照願いたいが、栂池スキー場の最上部、栂の森を一斉にスタート。成城小屋まで登り、そこからは、滑ったり登ったりしながら山の神、唐松沢へと向かい、さらに天狗原を経て、乗鞍岳頂上へ至る。最後はそこから栂の森まで一気に滑り降りるという全長約15キロ、累積標高差1600m余りのコースである。途中8箇所の登りと下りの切り替え地点にはそれぞれ旗門が設けられ、そこでは選手の通過とシールの脱着などを確認、チェックする。選手は万一に備えビーコン、スコップ、サバイバルシートなどの定められた持ち物を背負うことが義務付けられ、装備チェックもある。また、今回はそれほど厳密ではないが、正式な国際大会ではブーツやスキー、ヘルメットにも長さや形状の規定があり、選手はその規定すれすれに軽量化を図って大会に望むのだそうだ。

大会には今のところ女子選手4名を含むおよそ30名がエントリーしている。日本選手が殆どであるが、今回の競技にあたっては、イタリアから昨年のスペインでの世界選手権優勝者のリコ選手も特別に来日する。スペインで彼の滑りと登りを目の当たりにしている大会事務局の笹生さんによれば、このコースならば、彼は2時間そこそこで回ってくるだろうとの予想である。将来のオリンピック種目化をにらみ、アジア各国登山協会(特に中国と韓国)でも、世界選手権を誘致したい意向をもっているらしいが、フィールドとしては日本の、とりわけ白馬小谷方面がなんといっても最適で、日山協としても国際山岳スキー連盟にアピールしたいとの思いもあるようだ。おりからの竹島問題で韓国選手は急遽来日をとりやめたが、中国選手は来るということで、そのあたりの活躍も楽しみである。

9日のコース作りは無線の伝播実験も兼ねて、全体を前半部と後半部に分けて精査した。私は後半のA旗門から天狗原を経て、乗鞍へ登り、大滑降を楽しんできた。しかし、このコースを2時間!なんてとんでもない。化け物である。当日はそんな化け物の登りと滑りが目の前で展開されるかと思うとわくわくする。

編集子のひとりごと

この大会、日山協からは昨年の5月にいったん話はあったのだが、その後具体的な話がないまま時が経過し、正式な申し入れはこちらも忘れかけていた今年1月になってからのこと。そのときには予算の裏づけはおろか、具体的な青写真が何一つ見えず、かなり冒険的な要素もかかえながらの受け入れであった。当初は日山協主催、長山協主管でやってもらえないかということであったが、2月に開催した理事会では「とても主管はできない。協力という形で、できる範囲でお手伝いするというスタンスを崩すべきでない。」というところから出発した。実際には長山協では西田理事長、日山協では笹生さん、そして降籏さんの3人を中心に、環境省や森林管理署にもかけあい、許可申請をしたり、コース作りをしたりした上で、受け入れ態勢を整えてきた。役員もここ数日でバタバタお願いしたりなど、まだ不安要素も多々ある大会ではある。多くの方にほぼ手弁当状態でお世話になるが、そこは山やの世界。ここまで来た以上、同じ釜の飯を食いながら、なんとかいい大会になるようにしたいものである。(大西 記)