不定期刊行            第141号  2005.6.1
中信高校山岳部かわらばん
     編集責任者 大西 浩
             木曽高等学校定時制
半年もの雪山体験は信州の山やの特権
長かった信州の山の雪のシーズンもぼつぼつ終わりを告げる。考えてみれば、12月から5月末まで、その気になれば、半年は雪の上を歩けるのが我々信州の「山や」である。なんという素晴らしい特権!半年間の雪山体験というのは、改めて考えてみれば非常に長い期間である。この期間に山へ行かないというのは、半年は休眠状態ということでもあるわけで、山の魅力は半減、なんとももったいない。雪の上の技術は雪の上で磨くのが一番。ところでこの冬、登山者として、一体今年僕はどのくらい雪上にいたのだろうか?我が事ながらちょっと興味深かったので、以下に書き出してみたい。
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   期日  | 
  
   山域  | 
  
   登山形態(中身)  | 
  
   備考  | 
 
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   12月25日  | 
  
   鍬ノ峰  | 
  
   往復登山  | 
  
   大町高合宿同行  | 
 
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   1月29日〜1月30日  | 
  
   黒沢尾根  | 
  
   講習会  | 
  
   センター講習会  | 
 
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   2月11日〜12日  | 
  
   西穂高岳  | 
  
   往復登山  | 
  
   信高山岳会  | 
 
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   3月26日〜27日  | 
  
   雨飾山  | 
  
   スキー登山  | 
  
   信高山岳会  | 
 
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   4月9日  | 
  
   白馬乗鞍  | 
  
   スキー登山  | 
  
   日山協山岳スキー大会  | 
 
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   4月16日〜17日  | 
  
   白馬乗鞍  | 
  
   スキー場内ツボ足?  | 
  
   日山協山岳スキー大会  | 
 
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   4月23日  | 
  
   乗鞍岳  | 
  
   スキー登山  | 
  
   個人  | 
 
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   4月29日〜5月1日  | 
  
   白馬岳  | 
  
   定着・雪稜&山スキー  | 
  
   信高山岳会  | 
 
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   5月21日〜22日  | 
  
   針の木  | 
  
   講習会・往復登山  | 
  
   センター講習会  | 
 
こうして見ると、今冬はのべ15日間雪上で生活をした。今年は自分の学校の生徒と雪山に行く機会がなかったが、その分日山協の山岳スキー大会があったりしたので、この点では帳尻があっている。また、僕は年末年始に4泊5泊というようなハードな山行をするような社会人の山岳会に入っているわけではないので、僕にとってはこのくらいの日数がほぼ平均的な雪山体験日数ということになろうか。信高山岳会にはいり、高校の山岳部の顧問をして以来、こんな生活を曲がりなりにもずっと続けている。少なくて10日多くても20日くらいとすると今年の入山日数15日はまあ、平均的なところだろう。そうすると単純に僕の国内での雪上経験は15日×約20年で300日となる。「それにしちゃあ進歩がないねっ!」っていう声が聞こえてきそうだが、それでも12年前にアリューシャンに行った頃に比べれば、我ながら多少は進歩しているという自負もある。この間には猛吹雪で一晩中雪かきをしてテントをつぶされないようにしたこともあれば、ピーカンの日もあり、酸いも甘いも経験した。さらにこの間、海外遠征も4回ほど経験したが、そこで平均25日の雪上体験をしたとすればこれで合計400日。そんな一つ一つの体験が自分を強くしているのは確かである。先日のセンターの研修会で高校生と一緒にキックステップやアイゼン歩行、滑落停止にロープワークといろいろなシチュエーションを試してみたが、これら技術の入り口は人から教わりつつも、それに磨きをかけていったのは、いうまでもなくこうして山の中に身を置くことの中で身に着けてきたものだ。
しかし、何も知らない高校生が、緑と残雪のベストシーズンだからといって、また雪上ではあっても比較的暖かく雪崩の危険性も少ないからといって、何の予備知識もなく雪の山にはいるのは無謀である。その意味で、最初の一歩はセンターの研修会から・・・山のベストシーズンに高校生たちと針ノ木で雪上研修会を行いながら、ふっと思った。ところで、皆さんの冬山の入山日数は何日くらいでしょうか?はたまた夏山は?とにかく山の中に身を置くことが、技術や体力を超越した複合的な知恵の集積につながり、それこそが本当の強さにつながっていくのだろうと思う。
みなさん、いざ山へ・・・!
県大会は我が思い出の熊伏山で・・・
 県大会が間近に迫ってきた。情報によると、山ヒルが出没するそうだ。特にコース後半の青崩峠以降の場所では要注意。ヒルにあったら決して手でむしったりしないように、火で焼くか、塩水を付けるのがよいという。僕らの下見の時にも山仕事をしていた村の人からここのヒルは「飛びつくから」とおどかされた。
さて、それはともかく、会場の熊伏山は初任で長姫高校に赴任したとき、今は県高体連の登山専門部の委員長をしている星野さんと二人で登った。当時も僕は、定時制に在籍していたが、そのころ長姫の定時には勝野さん、高橋さん(長姫に出戻り)、星野さん、福澤さん(今年の審査員長)と今でも高体連の登山部に関わる面々が大勢おり、遊び仲間には事欠かなかった。彼ら以外にも、僕も含め若い人ばかりだったので、それらの人も誘って、平日の昼間、そして授業終了後の夜、研修と称してはさんざん遊んだものだ。そして、それらの遊びはいずれ自分の血となり肉となり、やがては生徒へと還元されていくという非常に有意義な遊びでもあった。熊伏山に登ったのも、そんな遊びの一つで、平日に行ったものだ。当時は夕方までに間に合えば、誰からも何のお咎めもなし。勤務時間がなんたらかんたらなどという今とは大きな違いであった。
また毎週I先生のお宅に伺って、読書会と称して、テキストを一冊決めては、購読をし、教師としてのイロハを勉強させてもらったのもまた別の意味で今の自分に有益だった。I先生には本当にお世話になった。その読書会も、時には場所を変えて、治部坂でのスキーになったり、高遠の花見になったり、はたまた天竜川での釣りになったり・・・。そんなふうにあらゆる場面を通じて教師集団が切磋琢磨しあっていたように思う。
言ってみれば私の教師生活のベースを作ってくれたのが飯田での五年間だった。いい思い出ばかり残るその地での県大会。願わくはヒルにだけは会わないことを祈る。
編集子のひとりごと
県大会が週末にやってくる。今回は天龍村あげての歓迎だそうだ。昨年の秋、そして先週と二回入山したが、今のところ悪い印象はない。先週の下見の際にも、特に後半の生徒諸君が苦労するであろう場所は、とりわけ新緑が美しかったように思う。日頃なかなか訪れることのできない隠れた名山ではある。ずいぶん遠いような気がしていたが、この間の帰りは、夜だったということもあるが、高速を使わずに帰っても松本まで二時間半ほどであった。
心配された女子チームも今まで以上に多く出て、地元開催の北信越にチームが送れないという最悪の事態は免れそうだと聞いて一安心だ。(大西 記)