不定期刊行            148号  2005.8.21

中信高校山岳部かわらばん

     編集責任者 大西 浩

             木曽高等学校定時制

信高山岳会、今年の夏山縦走「笠ヶ岳」

残念ながら天候が悪く、期待した眺望は得られなかったが、17日から19日、信高山岳会のメンバーと2泊3日で笠ヶ岳へ登ってきた。昨年の夏、雲の平で会の合宿を張ったとき、ずっとその端正な姿を見せていたのが「笠」であった。ところがそのときのメンバー7人(かく言う私もその一人だが)がなんと誰一人「笠」には行ったことがなかった。安房トンネルが開通するまでは、長野県の人間にとって新穂高は意外と遠いところだった上に、「いつでも行ける」的な思い、また「笠」自体が他の山域とは外れたところに位置していることも相俟って、そこだけを目指して行こうという風にはなりにくかったのがその理由であろう。そんなわけで、今年の信高山岳会が夏合宿に選んだ山は、「笠ヶ岳」と相成ったわけだ。メンバーは遠藤・二村の明科高校コンビに、昨年の雲の平合宿に参加し、この例会の言い出しっぺである竹内(下諏訪向陽)さんと私、そこに大学一年生である遠藤先生のご子息が加わった。

北アルプスにあって、槍ヶ岳と対峙し、一際目立つピラミダルなこの山は、孤高ともいうべき表情で自己主張をしており、どこからも目立つ。古くから信仰の山で、その初登頂は円空と伝えられている。槍ヶ岳開山で著名な僧「播隆」は笠ヶ岳の再興をし、登拝道を復活した折、遙か東方に天を突き刺すがごとく聳える槍ヶ岳を見て、「世の人の恐るる嶺の槍の穂もやがて登らん我がはじめて」と詠んだという。

さて、その山に登るのに、今回我々はメインルートである「笠新道」は辿らずに、敢えて「小池新道」と「クリヤ谷」を使った縦走にした。初日新穂高から小池新道経由で鏡平まで、2日目は弓折岳、抜戸岳を経て笠ヶ岳のテント場で幕営、3日目は笠ヶ岳を越えてクリヤ谷を下るというルートである。

今年は天候がもう一つで、ずっと天気が安定しない。ちょうど我々が行く前に槍から笠に行ったという岡山県高体連登山専門部委員長の田中さんから、出発前日の16日に「千葉(のインターハイ)ではお世話になりました。先ほど北アルプスからかえって来ました。今回ほど雨にたたられた夏山はありませんでした。12日から15日どこかで雨に見舞われました。笠ヶ岳からの日の出も激しい風雨でダメでした。雨の笠新道を2回の休憩時間を含め2時間30分で降りてきました。その途中,何人か笠新道を登る人とすれ違いました。よい天気での笠ヶ岳であることを祈っています。」というメールが入っていた。田中さんには悪いが、「これだけ降れば大丈夫に違いない!」のつもりで勇躍新穂高へと向かった。

しかし、結果は冒頭に書いた通りだ。17日は登るには快適な天気ではあったが、曇りで期待していた鏡平からの槍穂のパノラマはお預けだった。翌18日は早朝こそ槍穂高から登る朝日も拝めたものの、朝の6時半ごろから雷が鳴るという異常な天気。そのため弓折のコルからは非常に見応えのある複虹がくっきりと見えたという意外なおみやげがあった。今回の眺望の最高はこの複虹だったかもしれない。しかしお楽しみはここまで。弓折、大ノマ、秩父平までの稜線上は、降られはしなかったが、全く眺望は利かず、足元の花をのみ愛でてきた。縦走路から外れている抜戸岳に登ったという事実を刻み、笠新道の分岐を分ける頃からポツリポツリと雨が降り始め、テントを張るころには土砂降り。しかし、テントの中では二村シェフが20年以上前にやったことがあるという「お好み焼き」を披露。テントの中ではビールが進み話も弾んだ。蛙の子は蛙、遠藤さんのご子息は、大学で地学を学ぶということで、その足慣らしもあって今回は同行した。彼にとっては久しぶりの山登りということで、歩いているときは少しばかりきつそうだったが、「基本的に山は大好き」ということだった。こういう青年が育つことが素晴らしい。一方遠藤さんは、すでに笠には6回登っているということで、信高にあっては珍しい存在だが、「ここからは本当に景色が素晴らしいのに」と、悪天がまるで自分の責任であるかのように申し訳ながって(実際は雨男は誰?)恐縮しきりである。

19日、出発時に雨は上がったものの、天気予報では飛騨地方には前線が居座り大雨洪水警報が発令されていた。雨雲の上のためかガスは濃いが時折太陽が見え隠れして思わせぶりだ。景色は見えなくても、その昔「播隆」が見たという笠ヶ岳のブロッケンが見られるのではと、淡い期待を抱き、頂上で30分、回復を願って粘ったが、結局景色はおろかブロッケンも見ることはできなかった。長いクリヤ谷は最近は使う人もあまりいないとは聞いていたが、下山する3パーティ5人、登山する単独行者2名と途中で出会った。今度は天気のいい日を狙って笠新道から再挑戦かな?

クライミング講習会のお誘い

既に夏休み前に各校に要項は届いているはずだが、例年同様、山岳総合センターと高体連登山専門部・長山協ジュニア委員会共催のクライミング講習会が下記の日程で行われる。もともと高体連の要請で作ってもらった講習会だ。ふるってご参加を!

1 ねらい  長野県の高校生(登山部以外の生徒でも一般参加可)・教員、小中学生のクライミング経験者を対象に、フリークライミング技術および顧問の指導力向上をはかる。

2 共催   長野県高等学校体育連盟登山専門部・長野県山岳協会ジュニア委員会

3 期日   1泊2日平成17年9月3日(土)〜4日(日)

4 研修場所 長野県山岳総合センターおよび人工岩場

5 受講対象 長野県内高等学校生徒・教員・長野県内小中学生でクライミングを定期的に練習している者・その保護者計30名

6 講師   堀江謙一(RockGymほりえ)他

編集子のひとりごと

今年の夏はどうもスカッとした夏とはいかないようで、山では毎日雨が降っている。それに加えて、梅雨時の国道158号の土砂崩れによる通行止めに始まり、白馬岳では土石流の発生で、死者まで出てしまった。笠から帰る途上、158号線を通ってきたが、あちこちの沢で今年のものと思われる新しい崩落があった。一方で、早明浦ダムの貯水率が0パーセント、四国では水不足が深刻である。そして、関東、宮城での地震に続いて今日はまた新潟で地震があり、普段あまり揺れない松本でも結構揺れを感じた。政治は我々の肌感覚からは離れたところで茶番を繰り広げ、混迷の度合いを深め、月末には総選挙が告示される。なんか暗いなぁ?こんなんでいいのかなぁ?(大西 記)