不定期刊行            155号  2005.11.06

中信高校山岳部かわらばん

     編集責任者 大西 浩

             木曽高等学校定時制

木曽の自然は素晴らしい・・・4連発

10月も終わりに近づいて、一気に紅葉が進み、木曽路にもようやく秋の気配が感じられるようになってきた。このところ、木曽の自然が妙にしっくりくる。ここ2週間ほど私の体験した木曽路でのアウトドア活動を紹介しよう。

その1 10月21日、同僚の今井先生を誘い、権現滝の岩場で岩登り。ここは昨年森山さん、中嶋さんと一緒に開拓したプライベートゲレンデ。福島の町から車で15分。車から降りたところが岩場である。眼下には木曽川を見下ろし、対斜面には木曽高校が望める。3本あるルートをそれぞれ一本ずつやっつけて、勤務時間前の適度なトレーニング。滝への遊歩道を町で補修作業をした結果、駐車スペースも広くなった。岩も硬く安定しており、傾斜も適度で初心者にも充分楽しめるゲレンデだ。

その2 10月22日、元高体連登山部長で我が師でもある小林俊樹氏と、木曽路を辿った。氏は47年前の教員としての駆け出しの時期に木曽山林に赴任。その当時の思い出を辿りたいとのたっての願いで、案内役を仰せつかった。途中の道中では、国道を外れ旧道を通り、宿場をなめるように木曽街道を行く。現在はトンネルで1分の鳥居峠も、旧道を通った。47年前にはバスも通っていたというダートを鳥居峠まで登る。このダートは、峠で旧中山道と交差し、峠の茶屋跡には避難小屋がある。車を降りて、しばらく街道を進み、有名な栃の大木群を愛でた。葉は黄色く色づき、あたりには落ち葉が散り敷かれていた。・・・この旅の一番の目的地は、王滝村滝越(たきごし)集落である。小林氏は47年前、まだ現役だった森林鉄道「やまばと号」に揺られて、滝越からさらに奥の三浦ダムまで「便乗許可証」なる切符を手に行ったそうだ。林鉄に「やまばと号」とは異な感じを抱く御仁もあろうが、滝越の小学校が村中心部に統合されて、子どもたちの通学の足として使われていたことに由来するなんともほのぼのとしたネーミングである。今ではわずか十戸三十人ほどが住む滝越の集落のはずれにはこの「やまばと号」を含む林鉄がそのままの形でひっそりと保存されている。林道が封鎖されているため、三浦ダムまで行くことは叶わなかったが、それでも保存されている「やまばと号」の客車に乗って大感激の小林氏。前回生徒とともに訪れた白巣峠まで登ると、なんと突然目の前に現れたのは、イノシシの親子。自然いっぱいの木曽路の旅だった・・・。

その3 10月24日、三岳村探訪。31日に木曽高校アウトドア部の活動を三岳村で計画。そのための下見に当地の生徒を案内役として出かける。倉越(くらごえ)から眼下にひろがる雄大な景色の先に、前々日の冷え込みで雪化粧をした乗鞍と御嶽が大きい。車で一回りし、31日のコースの目処をたてて目標は終了。31日のことは別掲。

その4 10月30日、霜も降りて、気温も下がってきたからそろそろよかろうと、昨年退職された元木曽高教諭のS先生と二人で、開田村末川地区でキノコ採り。新地蔵トンネルを越えて折橋峠への旧道から林道へはいったところがホームゲレンデだ。今年はずっとキノコはよくないと言われ続けていたが、お目当てのカヤ(シモフリ)シメジを二人で大きなレジ袋2袋ずつ収穫。あるところにはあった。美味なり、美味なり。

木曽高校定時制アウトドア部第3回活動・・・油木美林

10月31日。前回の下見をもとに、三岳村の油木美林へ出かけた。今回の参加者は生徒3名、OB1名、顧問は2名。隊長は、三岳村住民で生徒会長でもあるS君。木曽の美林といえば、上松の赤沢美林が有名だが、ここ油木美林もそれに劣らず見事な林だった。この日は、遊歩道を登り2時間半、下りが1時間のハイキング。ちょうど紅葉が最盛期で、その美しさは、光線の加減ともあいまって素晴らしかった。

三岳村の霊峰ラインの途中にある駐車場に車を止めて、遊歩道を5分ほど進むと「こもれびの滝」だ。木曽には本当に名瀑が多い。毎回見事な滝に心を奪われる。この滝は二段になっており、上段の一気に落ち込んだ水がなめるように下段を滑っていく。マイナスイオンを思い切り浴びて一気にリフレッシュ。さらに5分ほど進んだ「不易の滝」との分岐点から、遊歩道は尾根道にかわり、一気に高度を稼ぐ。急斜面に一体何段あるのだろうと言うくらいの階段が整備されており、そこかしこにはトチノキの大木が堂々たる風格をもって、存在を主張し、黄色く色づいている。

20分ほど登ると、傾斜は緩くなり、あたりは一面ヒノキの純林と変わった。ここらあたりから油木美林なのだろう。赤い樹肌ですっくと伸びたヒノキ林がどこまでも続いている中、よく整備された遊歩道が続いている。1時間ちかくヒノキの森で森林浴を満喫すると、ヒノキ林が終わって今度は白樺林が現れた。

もうそろそろいやになったなぁという気持ちに支配され、深く切れ込んだ沢を挟んだ左手の尾根の上部に田の原のレストハウスが見えたかと思った瞬間、道を右に回り込むと、突然パッと展開した風景に思わず息を飲んだ。目の前に大きく切れ込んだ沢を挟んで御嶽が現れ、その沢には幾筋もの滝が落ち込んでいる。頂上の雪化粧に綾錦、針葉樹の緑の織りなす見事な三段紅葉と岩壁に流れ落ちる白糸のような幾筋もの滝、まさに絶景であった。ここが終点の百間滝展望台だ。生徒たちもみなことばを失い、景色に見ほれている。案内役のS君だけは小学校の時に訪れたことがあったというが、それでも改めて自分の村(実はこの日を限りに広域合併で三岳村は消滅したのだが・・・)にこんな素晴らしい景色があったことに満足げだ。木陰には、先週降った雪も消え残っており、今シーズン初めての雪にも生徒は感動している。みんなでコーン、チャーシューをのっけたワンタンともやし入りラーメンを作って、少し遅い昼食をとって暖まった。下山時には、「不易の滝」を回って、駐車場に着いたのがちょうど15:00。

そのあとは霊峰ライン、パノラマラインを回り、倉越の景色を目に収め、おきまりの温泉へ。今回は木曽温泉で生徒も教師もなく裸のつきあい。素晴らしい景色を見たあとだけに話も弾む。帰りがけの駄賃に猿橋渓谷を見て学校へ着いたのは17:00だった。・・・もちろん生徒も今井先生も、そして僕もそのあとはしっかり授業をやりました。

学校発9:00〜駐車場発10:30〜こもれびの滝10:35〜油木美林〜美林終点11:20〜百間滝展望台12:30〜百間滝展望台発13:30〜不易の滝14:50〜駐車場15:00

編集子のひとりごと

木曽の自然をことばで伝えるのは難しい。木曽に来て7年目になるが、探せば(探さなくても)本当にどこの村にも、町にも素晴らしい自然が残っている。この場所で育った生徒たちと、自然を探勝できるということはなんと有意義なことだろうか。(大西 記)