不定期刊行            158号  2005.11.23

中信高校山岳部かわらばん

     編集責任者 大西 浩

             木曽高等学校定時制

中信安全登山研究会技術講習会

かわらばんでもPRしてきた講習会だが、参加者は今滝(白馬)小林(白馬)下岡(大町北)松田(大町)佐藤(大町)竹田(大町)酒井(穂高商)大西(志学館)大西(木曽)の9名であった。

講習1は山岳センターの人工岩場でのクライミング。経験者ばかりだったのでリードクライミングの実習。わいわい楽しい一時だった。講習項目は互いの意思確認の重要性の再確認とハーネスの装着とザイルを結んだことの目視の再確認など。(参加者:酒井、松田、下岡、大西英、大西浩)

講習2はセンターに移動して担架およびザイルモッコの作り方。

【担架の作り方】3mくらいの棒2本、70cmくらいの棒2本とザイルを1本用意する。長い方の棒を40cmぐらいの幅で平行に置き、そこに身長より少し長めの間隔をおいて短い棒をおき、フレームを作る。フレームの固定方法は、前後それぞれ4尋とったザイルで縦棒と横棒を巻き付ける。巻き付けたあとは、余ったロープで結び目を締め上げることで強固にする。4カ所の固定ができたところで、担架の横棒が下になるようにフレームをひっくり返し、縦棒が地面から浮くようにして、あとは両サイドから真ん中に向かって縦棒に巻き付けては締めるの繰り返しでハンモックを編んでいく。編み上がったところで負傷者を担架に乗せ、余ったザイルを使って落ちないように固定する。

【ザイルモッコの作り方】ザイルに8の字結びを3つ作り、そこにザイルを引っかけ目を作って伸ばしていく。首のあたりを過ぎ、肩がのるあたりから目を五つにふやし幅を広げること。腰を過ぎたところで今度は目を減らしていき、最後は一つにまとめる。残ったザイルは負傷者を乗せたあとで、落ちないように編み上げていく。コツの第1は、最初に作る八の字をできるだけ間隔をおかず近づけて作ること。コツの第2は編み上げていく人が中から輪を抜いたところで、別の人が目をすかさず押さえていくこと。

実際にこれらを写真や絵を入れずに文章化してみたが・・・こういってもわからないでしょ?でも、ここにこうやって書いておけば、参加者にはピンと来る。そして忘れることはない。参加者だけの特権!

【ザイルのさばき方等の経験交流】バタフライノットからザイルを必要なだけ出せるようにしてザックに収納する方法、ザイルを絡まず輪にする方法。その他様々ザイルや結び方に関する蘊蓄が出始めてきたところで講習2は終了。(参加者:今滝、小林、酒井、松田、佐藤、下岡、大西英、大西浩)

講習3は深夜まで及ぶ大交流会。身体の中にアルコール燃料を充分補給して、今日の講習を反芻。明日への活力を蓄えた。この項省略。(参加者:今滝、小林、酒井、松田、佐藤、竹田、下岡、大西英、大西浩)

講習4は2日目、フィールドに出ての講習会と相成った。夜の雨も上がり、天気予報では雨という予測も吹き飛ばし、予想外にいい天気となった。講習内容は「地図にない道を歩く」ことと「大町高校の開拓した鍬の峰登山道を歩くこと」の二つ。この日は大町高校の山岳部5名も一緒に参加しての講習会となった。大町高ルートの起点仏崎に集合し、乗り合わせで、渋沢のとりつきまで移動した。地図で現在地点の確認。ここから沢を詰めて稜線へと上り詰める。前夜の雨で落ち葉が滑る。また岩も非常に滑りやすく難儀である。20分ほど登ると本沢との分岐点に出た。ここからは左股の支流を詰める。落ち葉の下には水が流れていたり、朽ち木があったりで歩きにくい。見慣れない大きな実があったが、それを朴の実と初めて知った。歩くことおよそ30分。最後は沢を離れて稜線に突き上げた。そこには仏崎から来る大町高校の開いたルートがもう何十年来の道であるという姿で続いていた。やはり登山道は歩きやすい。これまでの道なき道とは雲泥の差である。昨年来た時よりさらに道らしくなっているという印象を受けた。この道が歩かれているのだなと思うと、嬉しい気持ちになった。道は歩かれることによって道になるのだ。かつて池田工業高校の開拓した「有明山」我々信高山岳会の開いた「経ヶ岳」そして大町高校が整備したこの「鍬の峰」・・・いずれも開拓者が道を開き、それを歩いてくれる人々が立派な道にしてくれた。登山道開拓の楽しさはそこにある。

ここからはこの大町高ルートを使って、北稜から鍬の峰に登頂。生徒たちは、道普請の作業をしながらの登山である。すでに彼らは開拓第1世代の生徒たちではないが、こうして作業をする中で、自分たちのアイデンティティを獲得し、新たな伝統を築き、伝承していくことになるのだろう。山頂からの眺望はまずまずで、東には眼下に大町を望み下ろし、西には1800mぐらいの高さまで雪線が下がってきた唐沢岳や蓮華など北アの峰々が神々しく光り、七倉ダムがエメラルドグリーンの水を湛えていた。

地図にない道と我々の身近な人が開いた道を辿るというなかなか愉快な山行であった。(参加者:今滝、松田、下岡、大西英、大西浩、大町高生徒5名)

全体を通しての感想を一言。とにかく楽しかったというのが第1。みんなでワイワイ、ガヤガヤ、山屋にはやっぱり山が一番似合う。せっかくの出張旅費まで保障してもらっての講習会。こんないい機会を活かさない手はない。今回全日程参加できなくて部分的な参加の方もいた(それぞれのセクションの出席者を参照)が、そんな形でも得るものはあったと確信している。来年はこの講習会がまたパワーアップして企画できそうな目処もたった。これは講習会全体(特に講習会3で)を通して充分議論されたのでまず間違いのないところ。中信に限らず、多くの人が参加できるような体制、また初心者、経験者を問わず楽しめ、有意義な講習になるだろうと思う。乞うご期待といったところ。

編集子のひとりごと

前号で「小秀山」での敗退行とそれに付随する疑問を書いたところ、御大勝野さんから早速お返事のメールをいただいた。曰く「ルート図は作ってありませんが、最初から尾根をスナオに登ってヤブ漕ぎするのが目的だったので沢道には降りませんでした。あれは作業道で、登山道ではないような気がします。縦走路(と言うほどのものはありませんが)のはるか北に出るのだと思います。ヤブ漕ぎの一番は尾根が西に向かうところと、頂上直下のシャクナゲのヤブだったと思います。僕でも、荷物がなければ三分の二くらいの時間で登れそうです。積雪期(3月かなあ)にも行きましたが、もぐりが凄くて即止めました。」とのことで、さらに細かい山行記録と写真が添付されていた。やはり、そうだったのかと納得。まだ雪が来ないので、もう一回チャンスがあれば藪コギ覚悟で心して行って来ようかな。(大西 記)