不定期刊行            165号  2006.2.1

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

             木曽高等学校定時制

ところ変われば その2・・・静岡からの便り

前号に続いて、もう一つ県外からのメールを紹介します。やはり昨年のIHで同室だった静岡県の平井勤先生からの報告です。

 静岡の委員長をやってます平井です。いつもいつも「かわらばん」を送っていただき、楽しく拝見し、返事を書かなければと思いつつ、年が明けてしまいました。夏以来、長野地方には五回ほど、スキー、山で通わせていただきました。

 10月〜11月、3回戸隠周辺の北信五山を登りました。戸隠周辺は、数年前五月連休に山スキーで火打、妙高に登っただけでした。昨年度今の沼津東高に異動になり、この学校は修学旅行の替わりに高原教室を志賀高原で四〇数年続けていています。

 今年度担当の二学年所属となりましたので、5月、6月、本番の7月と、志賀高原に自己下見や出張の下見で3回行って、岩菅山、焼額、志賀山、本白根などを登りましたのが縁で、秋の戸隠周辺を訪れた訳です。3回の山行で、黒姫山、飯縄山、高妻山、戸隠山、斑尾山の5山に登り、下っては美味しい蕎麦をいただいて、戸隠ファンになりました。素晴らしい紅葉や雪の戸隠・蟻の戸渡りは冷や汗ものでした。

 12月の冬休みには、近隣の2校の山岳部員と総勢25人で、戸狩スキー場に2泊でスキー合宿をしました。例年になく、大雪でした。奈良の委員長の前田先生にも恒例ですがお会いしました。奈良はスキー部と山岳部が合体しているようで、例年スキーのインハイを戸狩で実施しているようです。

 最後に登山部顧問有志4人で、甲斐駒・鋸岳に29〜31日に入山しました。天気はままでしたが、トレースが途中までしかなく、鹿窓を過ぎてからラッセルに悩まされました。他パーティの入山もなく、このラッセルでは遙か彼方の甲斐駒には日程的に届きそうもないので、大晦日の早朝、好天の中ノ川乗越から熊穴沢を下ってしまいました。鋸は前から気に掛かっていた山だったので、半分くらいは満足しました。次回は、秋に甲斐駒からの下山路として通過しようなどと密かに思っています。

 以上長野に関する山でした。

 かわらばんを拝見していると、顧問の講習会やらがとても活発で羨ましい限りです。また大西先生は定時の先生なのに山の顧問なんて素晴らしいですね。静岡では、定時には山部は在りません。また、山岳部顧問の旅費の改正要求などに取り組んでおり、いいですね。いろいろ教わることの多いかわらばんです。今後は、こまめにメッセージを送ります。静岡の方も12月、1月初旬に雪が降ることは希ですが、今冬は3〜4回周りの山々が雪化粧してます。長野在住の方は大雪で、悠長に山登り気分ではないと思いま

すが、大雪を楽しむ登山もいいですね。気をつけて登ってください。では、失礼します。

講師講習会・・・埋没体験報告

 1月28、29の両日山岳総合センターと長山協指導員会、遭難対策委員会の共催による講師講習会が開かれた。今回の高校関係者の参加は、松田(大町)下岡(大町北)久根(飯田風越)赤羽(塩尻志学館)それに僕の5人。僕は都合により28日の夜からの参加であった。

内容は初日がスノーピットを掘っての雪質観察が主体。2日目が雪崩捜索に関するものであったが、今回私は、埋没体験をさせてもらったので、今回はその点を中心に報告する。あとで聞くと私はおよそ1メートル埋められただけであるが、全く身動きはできなかった。雪は私を覆ったその状態で焼結、圧密し、固まったためだろう、この位の時間ではそれほど圧迫されているという感じは受けなかったし、頭の方に少し空間があって薄明るかったので、まだよかった。しかし、もし実際に雪崩にやられ、身動きできず真っ暗な状態だったとすればすでにそれだけでものすごいパニック状態になることは想像に難くない。それをシミュレーション?できただけでも貴重な体験だった。

それでは、雪の中とはどんな世界か?うつ伏せの状態で埋められたわけだが、外の声は意外と聞こえるものだ。やはり高い声の方が通る。また、人が自分の上を歩くシャカシャカという音もかなりよく聞こえた。それでは外の人間には、雪の中の人間の声は聞こえるのだろうか。うつ伏せで下向きに埋められたということにも理由はあろうと思うが、僕が声を限りに雪の中で叫んだ声はまさに虫の息、消え入るようにしか聞こえなかったそうである。回りの雪が音を吸収するという効果もあるかもしれない。いずれにしろ、たかだか1メートル程度埋められただけでも、埋められた人間が自分の居場所を伝えることはかなり困難だということはいえる。そういう状態に加えて、実際には雪と空気を大量に吸い込み、口の周りに空間もない状態では、叫ぶことはおろか声を出すことも容易でないはずだ。まして、暴風雪の中ではまず期待はできない。

雪の中に埋もれ、他人の声や足音が聞こえる状態で、自分の存在を知らせられないというのも、ものすごい恐怖状態だろう。もし雪崩にやられれば、閉所、暗闇、窒息、隔離、身動き不能という人間にとって耐えられない何重苦もの状態が瞬時に発生する。そのままの状態で、ゾンデ(プローブ)で突かれたが、上からゾンデで突かれると先端が当たるのは分かる。突いた方も僕がいることが分かっているので、注意して突いてくれてはいるのだろうが、それほどの衝撃は感じなかった。

その後、ビーコンを使っての捜索訓練も行ったが、これらについては改めて過去2年間のかわらばんも参照していただきたい。今までふれていなかった今年の教訓を二つ。多くの場合、雪崩れた場所は未知の谷である可能性が高い。仲間の救出はもちろんだが、冷静な状態で「未知の谷」にはいることの是非を確認することも重要である。また、捜索の際のマニュアル化も重要だが、それに拘泥してしまうことの罪もよくよく考えねばならない。「やられた!」「それ、行け!」ではなく、その場、そのときの状況に応じた救出作戦の立案をするには、むしろ「マニュアルを壊すことも重要だ」というのが、柳澤講師の提言でもあった。

編集子のひとりごと

中信高校山岳部年報に、すでに多くの注文をいただきました。ありがたいことです。広告も石井スポーツ、常念小屋、新ばし飴、白馬館、ブンリン、槍岳山荘(50音順)からいただいておりますので、年報を持って広告代をいただきに伺って暫時お話をしてきます。高校生の山岳部の活動を見守ってくれる人々の温かい視線を感じます。訪れる機会がありましたら年報をネタにこれら広告社主と話をしてみてください。(大西 記)