不定期刊行            169号  2006.3.12

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

             木曽高等学校定時制

社会人とともに高校生の山登りの活性化を

12月に行われた第5回の長山協の理事会の中で、「冬山に入らなくなってきている等、高校生の登山が変容してきている中、高体連等への長山協としてのサポートを考えていくことも必要ではないか」ということが提起され、一定の時間議論された。

        以前よりはかなり改善はされてきているが、中学校の集団登山のあり方も高校生の山離れの原因の一つにあるのではないか。

        地元山岳会(山岳協会直接では対応が難しいか)へ「こんなことをやりたいが」というように気楽に声をかけてもらえるような関係作りも必要か?

        社会人山岳会に所属している高校の先生山岳部の合宿をするようなときに、一緒に活動しても面白い。

        最終的には自分たちに還ってくる問題でもあり、どのようなニーズがあるのか、またそれをどのように受け止めていくのか、今後検討を加えていく。

内容をまとめてみると以上のようなことになるが、社会人山岳会の力を借りることもこれからは検討されてもいいのではないだろうか。大町北の下岡さんは社会人山岳会CCAに所属しているが、下岡さんからは、12月の安全登山研究会のときに、北高はCCAの力も借りて3月下旬に爺ヶ岳東尾根に行く予定であるという報告があった。同じ会に所属し、今は長山協事務局次長の赤田幸久さんは、かつてCCAと大町北のコラボレート合宿に参加したときのことを、「一緒にテントで語る中で、高校生にも大人にも刺激があり楽しかった、今後も機会があれば喜んで参加したい」と話してくれた。長山協の側としても積極的にこういう企画を一緒にやっていける素地はあると思うし、今後はこんなことがもっと行われてもいい。なんと言っても現長山協理事には高校の現役教師が「宮本、小林、浮須、今滝、中島、星野、大西」と7人が名を連ね、しかも全員が社会人山岳会にも所属している。こういったネットワークをもっと積極的に活用していけば山登りは大きく広がっていく。

「山梨岳連報」より 秋山教之(山梨岳連副会長)記

長山協の事務局長の僕のところへは、他県の山岳協会や岳連からも情報が届くが、先日届いた「山梨岳連報」の巻頭言が興味をひいた。上の課題への一つの解答でもある。筆者はかわらばんでもこれまで何度か登場願っている元山梨高体連専門委員長の秋山教之先生である。以下、全文を紹介する。

 
 

 


大歓声が山峡に響き渡る。夏でも肌を刺すような沢水で、垢を洗い流している。入部当初は、どうなるものかと心配された1年生も、夏山合宿を終え見違えるように逞しくなった。テントの陰で、「もう山は嫌だ。二度と登らない」などと泣き言を言っていた4ヶ月前から、大きく成長したものである。春山合宿。遅々として進まない腰までのラッセルを必死の形相で果敢に続ける2年生。よくもここまで逞しく成長したものである。テント生活は彼らの本音が出てくるときである。山岳部をやめようと思ったこと、合宿が耐えられず逃げ出そうと思ったこと、山への思い、将来のこと等話はつきない。恒例の顧問の一喝「いい加減に寝ろ」まで続くことになる。こんな山岳部顧問生活から離れて、4年が経過した。苦労も多かった二十数年間であったが、登山をとおして子供たちの変容と成長に係わることができたことにそれなりに満足している。登山はそれ自体が楽しくおもしろい営みであるが、子供たちに与えるインパクトは大きく、彼らの成長に大きいな影響を及ぼすものである。

 過去の思い出を語ってきたが、ここで本論に入りたい。相変わらず若年層の登山は停滞気味である。県の高校山岳部は30年前は約20校200名程度であったが、年を重ねるごとに減少し、ここ数年は15校80名ほどに減少し、復活の兆しがなかなか見えてこない。また、かって盛んに行われていた小中学校の学校登山は、最近ほとんど聞かない。私の知っている限りでは、芦安中学校一校だけである。行事の精選、危険回避、登山経験のある教員の減少等が原因と考えられる。家族登山も以前に比べ減少している。これまでのように学校体育や部活動に任せたままでは、若年層の登山の活性化は期待できない。今まで山岳連盟や各山岳会は、子供たちの登山活動を支援することは時にはあったが、主体者として取り組んではこなかった。しかし、今後は登山の普及と山岳連盟の次代を担う人材の育成の面からも、連盟として主体的に子供たちの登山活動の普及と組織化に取り組むことが求められている。他の団体ではスポーツ少年団やスポーツクラブ活動として従来から当たり前に行われてきたことである。

平成14年度はジュニアクライミング教室と少年少女登山教室を連盟主催で通算5回実施したが、それ以降の継続した取り組みはなされていない。指導者の確保が困難であること、担当者に相当の負担がかかってしまうことがその理由である。週末はそれぞれが登山活動を行う貴重な時間であるので、指導者確保が難しいのは無理からぬことであり、現役クライマーが週末に果敢にチャレンジすることは、連盟や各山岳会の活性化にもつながる。したがって、ジュニアへの普及活動を、現役世代に担わせることは現実的でなく、また望むべきではないと思う。そこで、各山岳会の第一線を退いた先輩諸氏に登場して頂くことを考えたらどうだろうか。先輩諸氏は、長年の登山活動をとおして培われた豊富なキャリアと指導力があり、時間的にも余裕がある方が多いと思われる。具体的な方法としては、各山岳会単位(複数の山岳会の共同でもよい)で地域の子供たちを対象とした取り組みにしたらどうだろうか。かなり以前、秋山泉副会長(白鳳会会長)から「登山スポーツ少年団」のようなジュニア登山クラブをつくることができないだろうかとの話を聞いたことがある。昨今の自然体験ブームは絶好のチャンスである。まずその一歩は、山岳会単位で地域に呼びかけ、ジュニア登山教室などの体験的な事業を計画実践していくことである。中高年山岳会組織化のプロセス同様に、その積み重ねによりジュニアクラブ設立の展望が見えてくるものである。孫に当たる年齢の子供たちとの山歩きやテント生活も楽しいものである。先輩諸氏の奮起をお願いする次第である。

なお、スポーツクライミングの底辺の拡大と競技力向上については前回号で山森氏が論じているのでご覧頂きたい。ここでは、国体がクライミング種目だけになることから国体委員会、クライミング委員会、ジュニア委員会の組織体制の見直しと一貫指導体制の確立が喫緊の課題であることを申し添えたい。

編集子のひとりごと

ジュニア層の育成についての提案2題。諸氏のご意見を伺いたいところだ。(大西 記)