不定期刊行            175号  2006.5.11

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

             木曽高等学校定時制

滑って滑ってまた滑り・・・剱、立山スキー山行(5/3〜5)

GWの山は、信高山岳会の松田、久根の両名に信高に新規加入した岡山の田中初四郎さんを加えたメンバーで雷鳥平に定着して、スキー合宿を行った。立山山崎カールと剱沢、長治郎谷に雷鳥沢、最後は雄山谷と滑りまくった3日間。滑った標高差はトータルで4000mをこえた。天気にも恵まれた山スキー三昧の合宿だった。

初日、扇沢の駐車場は6時半の段階ですでに満杯。連休初日とあって、やはり剱沢を滑りに行くという大町山の会の松原さんと浅川さん、八峰に登るというCMCの佐藤さんなど見慣れた顔がある。山や山で会えば、話も弾む。9:00、室堂で富山側から入山してきた田中さんと合流し、雷鳥平まで滑り、ベースキャンプを設営した。天気もいいし、雪の状態もよさそうなので、雄山山頂から山崎カールを滑ろうということになった。11:00テン場から正面の山崎カールをまっすぐ雄山を目指し登った。BCでの安着祝いの一杯のビールが効くこと。途中2本休憩をとり、3ピッチ目、頂上直下の正面の岩稜を右にまいて登ろうとしたが、カリカリに凍っており、さらに壁は40度近い傾斜である。そこで、山頂からの尾根にトラバースしたが、これがかなり緊張を強いられた。なんとか難所を抜けて、到着した雄山山頂でお参りをし、そのあとは山頂の小屋の直下から、テントが150張はあろうかと思われる雷鳥平を目指して標高差700mを一気に滑り降りた。

BCに降りてくると何やらものすごい大所帯の団体が、ワイワイ言いながら、昔懐かしいかまぼこ型テントを建てている。諏訪の「百名山に登る会」の面々、バス一台を仕立て33名の大合宿を張るとのことであった。指揮するのは諏訪の大御所島田良さん。下諏訪山岳会の星野さん、篠崎さんの顔も見えた。こんなにぎやかな合宿に出会うのも楽しい。恐るべし中高年パワーである。

2日目は「雷鳥平から剱御前に登り、剱沢を長治郎谷の出会いまで下って、そこからコルまで谷を詰め、スキーをデポして山頂をピストンし、一気に長治郎谷を滑り降り、そのあとはもう一度剱沢を登り返し、最後は雷鳥平までの滑降。」文字にすれば何のことはないのだが、登っては滑りを3回繰り返し、トータルとしては標高差で2200m登って2200m下るというとんでもない長丁場。早朝5時40分に出発してBC帰着が午後5時40分、行動時間はなんと12時間であった。朝一の剱御前への登りは、雪が堅く傾斜がきついので、シールが利かず苦戦。300mほど登ったところで小生始め3名はさっさとアイゼンにはきかえた。若干一名は、シールアップにこだわって登る。8:40剣山荘も剱沢小屋も営業していないが、ここ剱御前の小屋は営業しているので、人も多い。そんなギャラリーの見送る中、まだ堅い雪エッジ利かせながら、剱沢へと滑り出す。広い剱沢を大きく、そして時には小さく自由なシュプールを描きながら下るのは、気持ちがいい。雪面のシュカブラが板を通してガタガタ足裏を刺激し、「まるで足裏マッサージ状態だ」とは松田氏の言。文登研の前進基地はまだ雪に埋もれたままで、その前には20張りほどのテントが張られていたが、このあたりからは雪もよくなり、大きく右にカーブを切りながら、長治郎谷の出会いまで、標高差700mを15分で滑り降りた。ここで再びシール登高となり、標高差1000mを登る。行く手のコルが雲一つない青空への窓となり、シール登高も快適だ。先行する他のパーティは剱沢からの出発だろう。もう遙か上部に小さく点となり、我々はしんがりである。中間点の熊の岩の左股は、大きな雪崩のデブリで沢全体が埋まっていたので、岩の右側から上部へ回り込んで左股のコルを目指した。モノの本によるとコル直下は40度の壁とのことだが、この急傾斜を左右に切りながら、コルまでシールアップした。コルには先行者のスキーが数台デポされており、小窓の方面から縦走してくるパーティもいくつかあった。我々もここでスキーをデポし、アイゼンとハーネスをつけて山頂に向かった。雪壁は階段状になっており、約20分で剱山頂に到着。剱の山頂は雪に覆われており、祠も道標も何もかも埋まっていた。

コルまでの下りにザイルを2ピッチ使用。先行者に随分待たされたため、結局コルまで下るのに1時間も要したが、無事悪場をクリア。40度というコルからのスキーでの下りは私にとっては、少し手強かった。剱沢の出会いまで、割合に開けた長治郎谷はしかし、十分に堪能できた。この段階で時刻はすでに14:45。が、今日の旅はまだまだ終わりではない。ここからもう一度剱御前小屋(別山乗越)までの登り返しが待っている。西日に照らされたこの3ピッチ2時間半は、まさに「無言の行」ほとんど誰も口も利かず、ただただストックを前、スキーを前へ前へと、足と手を動かし続けた。別山乗越からは、最後の一滑り。眼下の雷鳥平のテント村に向かって思い思いのシュプールを描いた。17:40雷鳥平に無事帰着、長く充実した一日だった。

最終日は、ゆっくりと出発。8:45撤収を完了し、一ノ越を目指したが、昨日の疲労がまだ残っているのか、20kg近い荷を背負っての登りはさすがにこたえた。一ノ越からは雄山谷を下ったが、これもまた標高差1250mにも及ぶ大滑降である。雄山谷の上部は広い。途中で一本とっていると、上部から猛烈なスピードで落ちてくる物体がある。目の前を猛然と滑っていったそれは一枚の「スノーボード」あっという間に小さくなり、沢の傾斜がゆるくなった、最下部でようやく止まった。あとで、聞けば一ノ越で装着するときに滑らしたとのこと。お気の毒様・・・。

下るにつれ雪崩のデブリのあとがすさまじい。なんとも滑りにくくなったが、右岸につけられた先行者の滑ったあとを転ばないように辿った。ダム湖におりてからも、まだべったり雪がついていたので、再度シールをつけて、ダムまで水平移動。楽しかった3日間は、終わってみればあっという間だった。裏話はいっぱいあるけれど、こちらは信高山岳会のニュースにアレンジして発表します。そちらには写真もアップしますよ。

編集子のひとりごと

毎度おなじみの「山岳総合センターの高校登山研修会」が明日から3日間の日程で行われます。今年は扇沢から雪上になるという雪の多さです。先週はこのフィールドで大規模な雪崩が起こったばかりですので、講師の一人として慎重な研修会にせねばとの思いでおります。今回は木曽高校定時制からも一人生徒が参加します。定時の生徒を連れて行くのは、本校に赴任して2回目ですが、他校の生徒との触れ合い、自然との対話の中で、何を持ち帰ってくれるか楽しみです。(大西 記)