不定期刊行            176号  2006.5.19

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

             木曽高等学校定時制

本年度のセンター「高校登山研修会」

5月12日(金)から14日(日)にかけて、今年もまた、長野県山岳総合センターの「高校登山研修会」が行われた。講師は信大学士山岳会の花谷先生と私の二人。参加校は「大町、美須々、木曽」の3校であった。雨による入山の見合わせ、最終日の行動中のブロック雪崩など、私自身、講師をしながら安全登山ということを改めて学ばされた三日間だった。初日はセンターで「講義とロープワークの基本、パッキング」等を講習した後、夜はセンターの内壁を使ってのボルダリングの自主練習。高校生にはこの世界は実に魅力的に映るらしい。パンプして、筋肉がカチカチになっても、時間を忘れてひたむきに壁にとりついていた。二日目は、朝から大雨であった。予報では一日悪くなる一方とのこと。一週間前の針ノ木での雪崩事故、例年をはるかに越える残雪を考えれば、この天気で入山するというのは考えられない。結果、入山は見合わせ、人工岩場に移動しての講習とした。結果的には生徒にはこれが大好評で大きな成果があがった。偶然、岩場には筑摩高校の藤岡さんご夫婦、穂高商業酒井さん、白馬高校の今滝さんがお見えで、高校関係者貸し切り状態で大いに盛り上がった。

三日目にようやく、雪上にでた。例年は土が見えている扇沢駅周辺にもたっぷり雪があり、大沢小屋まで移動する必要もない。顧問の先生方は花谷先生にお任せし、高校生を受け持った私は、実質的な講習時間を確保するため、トロリーバスのターミナルのすぐ目の前の対斜面での講習にした。時間は短かったが、歩行、滑落停止、道具の使い方、スタカットクライミング、固定ロープの通過、懸垂下降と一通りのことを講習した。例年だとこのことの応用編として、翌日の針ノ木峠への登山を行うのだが、それはどうしようもないことだ。今回参加者の中には、二年目の参加者が二人いたが、彼らはそれなりに去年のことを覚えていてくれた。先に書いたが、日が昇り緩んできたところで、上部のブロックが崩落し落ちてきた。大事には至らなかったが、自然の力を思い知らされる場面もあった。以下、参加してくれた生徒および顧問の感想を掲載します。

一年生なので、基本のザイルワークや、パッキングなどが一から学べたので、とてもよかった。毎回の登山で確認しながら覚えていけるといい。雨のせいで雪上は一日だけとなってしまったが、確実に習えた。忘れないようにしたい。雪山に登った時には、いつも心がけて行動できるといい。二日目に思いがけずクライミングができて、上手い人に教えて頂いていい練習ができた。クライミングにも力をいれていきたい。(大町生徒)

今回は針ノ木雪渓に行くはずだったが、あいにくの天気で、二日目は人工壁で活動することになり、ゆっくりした講座になり、ザイルワークやクライミングの技術を学ぶことができ、逆によかった。ただ、クライミングで手のひらが痛くなったので今後無理はしないようにしたい。実際、雪の上でやってみると思っていた以上に疲れた。足がすべったりしてなかなか思うように動くことができなかった。それに二日前にやったことでも忘れていることもあってとまどうこともあった。だけど、雪の上で何かをやるというのは楽しいものだと思った。その場では覚えたつもりでも結構忘れていることがあるので、これからもわからないところを復習しなければならないと思う。(大町生徒)

わかったつもりでも実際やってみるとできない。ロープワークにしてもビレイにしても全行程をしっかり把握していないと実際に使うことはとてもできないと痛感した。実地訓練に先立ってしっかり復習すべき。クライミングはとても面白かった。(木曽生徒)

あらかじめロープワークやビレイなどを練習してくればよかったと思いましたが初めてのことなどがかなりあり、楽しかった。今回は雨で山に泊れなかったけれど、半日の練習でそれなりの知識はつけられたと思う。しかし、これから今日習ったことを使い、慣れていかないといけないなと思いました。今回の雪上訓練でクライミングなどもでき、クライミングではムーブなどを身につけていかなければいけないと感じたし、雪上ではより使い、より慣れていかなければいけないと感じました。(美須々生徒)

大西先生の「最強の登山家」の話は去年も聞いたが、改めて生きて帰ってくることの大切さを知った。加藤幸彦さんの「狙った山は絶対におとす」という成果の裏には計算され尽くした計画があることを知り、計画の大切さを知った。実技面では、まずパッキングの面で驚かされた。余分なものは持って行かないという姿勢が素晴らしいと思う。ボルダリングやクライミングでは、とても楽しんでできた。花谷先生はすごいと思った。ビーコンの使い方やザイルワークなど新しいことを沢山学べてよかった。アイゼンは去年と違うタイプを使ったので、結構とまどってしまった。その他、雪上では基本的に去年の復習が多かった。しかし多くのことを再確認できたり、去年わかったことを覚えていたりして、楽しかった。ブロック雪崩が目の前で起きたからビビった。(珍しいものをみられた?)みんな楽しそうだった。また来年も来てほしい。(大町生徒)

わかりやすく丁寧に教えて頂けるので、質問もしやすく助かりました。ビーコンの体験ははじめてでうなずかされました。思いがけないクライミング実習でビレイに自信がつきました。生徒も意欲的に挑戦し、十分楽しんでいました。雪上も細かく説明して下さり、ロープの手順がようやくわかりました。(もっとくり返す必要はありますが・・・。)コース取り等雪崩を避ける知恵の一端もわかりました。高校生はボルダリングも含め、積極的で感心します。講師もぜいたくで少人数ではもったいない感じがします。私のように自分は指導できないので、連れてくるというのでよいのではないでしょうか。本当にありがとうございました。(美須々 白澤先生)

二日目は悪天で雪訓がキャンセルされたが、クライミングの技術習得ができたため、生徒には満足度はむしろ高まった。風呂にはいれたのも現代っ子には嬉しかったようだ。センターでの講習では、大西先生の話はよかった。登山の歴史に関する講義もあれば更によい。ロープワークやビレイシステムの実習はわかりやすく有益だった。実地指導は、本当に為になりよかった。山岳ガイドから指導が受けられるのは願ってもない機会。三日目、雪訓では二対一で指導が受けられたため、ビレイシステムの高度な技術を丁寧に教えてもらえた。顧問自身の力量アップは生徒の安全を守るベースになるのでこのような機会はありがたい。(大町 小沼先生)

編集子のひとりごと

小沼先生の言うとおり「顧問自身の力量アップは生徒の安全を守るベースになる」し白澤先生のいうように「自分は指導できないので、連れてくる」という姿勢がこの研修会の精神です。顧問にも生徒にも有益です。来年こそはご参加下さい。(大西 記)