不定期刊行            192号  2006.9.8

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

不思議の国チベット その10 最後のラサを満喫

タクシーに乗って、まずはポタラ宮広場に向かい、改めて外からポタラ宮を見る。ポタラ宮は市内の中心部の丘の上にあるので、これまで滞在中何度も何度も車窓から眺めてきたが、改めて宮殿前の公園から眺めてみると、その偉容に圧倒される。かつてはここは大きな池で、そこに映るポタラ宮の姿が印象的だったが、今は埋め立てられて市民の憩いの場になっている。今日は土曜日なので、カップルの姿も見える。

ポタラ宮の前の道を西に向かい、5分ほど歩いた路地をはいると市場があった。こういった場所は生きるエネルギーに充ち満ちている。魚、肉、野菜、果物、雑貨が所狭しと並べられている。生きたたまま売られている鶏、皮をはいだだけの塊としての肉、それらが無造作に置かれている様に、息子は少々カルチャーショックを受けたようである。日本では肉と言えば、スーパーで売られている小分けされたパック入りの切り身しか目にする機会がないのだから、それも無理からぬ話。また、一方で必死で商売をしている人がいるかと思えば、市場脇の食堂では、麻雀やトランプをしている人がこちらも真剣に勝負に興じている。こういう雑多な世界は、今の日本で目にすることはない。

街角の喫茶店でコーヒーを一杯飲む。チベットはもう少し、美味い紅茶が飲めるかと思ったが、意外に文化の中に紅茶は入り込んでいないように感じた。その点、ネパールとはかなり異なる。それに対して、コーヒーはちょっとしたところでも、「ブルーマウンテン」などの銘柄が置かれており、味もまあまあである。一休みした後、博物館に向かった。ガイドブックでは開館は18:30までと記載があったので、間に合うだろうと思ったのだが、残念ながら僕らの到着した18:00には既に入場は打ち切られていた。コーヒーをゆっくり飲み過ぎた。無駄足。

仕方がないので、最後のラサを感じるため、ジョカンを取り囲んで繁華街となっているバルコルへ向かった。露店が並び、歩行者天国になっているバルコルは、滞在中毎日のように歩き回ったので、少し食傷気味だ。そこで、最後は通りを挟んで東側の少し高級な感じの店が並ぶところを歩いてみようということになった。いくつかの店を冷やかしながら最後の買い物を楽しむ。店を構え、高級そうな感じだったのだが、意外と露天よりも安かったりする。いずれにしろ、外国での買い物には、相応の交渉術が必要である。今回は、僕が3人の買い物の交渉窓口を務めた。まあ、だいたいのものは言い値の半分近くまでは落とすことができる。

最後の晩餐は、街角の食堂にはいって、三人が思い思いのものを注文。僕は、炒めた野菜を小麦粉の皮でくるんでチーズ味で食べるボビという料理を頼んでみた。他にはヤクの焼き肉を食べた人、チキンカレーを食べた人、三者三様の質素な食事で最後を締めくくった。

ピンチ対策と非常時の装備(ピンチパック)を考える

インターハイのA隊で起こった遭難事故について、D隊の中でも話題になり、緊急時の対応や装備、また我々自身の力量のアップについてなどをめぐり何人かの先生と話をした。幸い、当該の先生は無事であったが、D隊解散を前に、全国高体連の中央総務の高橋先生(群馬県)から緊急提案があった。曰く「今回は大会中ということではあるが、参考までに、サブ行動であるD隊参加者が、実際にどんな装備を持って行動していたか調査してみたい。」と。この提案については、D隊参加者の賛同が得られ、単純に以下の装備を持って行動していたか否かということに関して、無記名でアンケート調査が行われた。以下の装備とは次の13項目である。@ヘッドランプAシルバコンパスBそれ以外のコンパスCツェルトDレスキューシートE笛または鏡F地図G雨具HかさI非常食J携帯電話K無線機LGPS。

ここには「火気にかかわるもの」や「防寒着」がなかったりするので、これを持っていればそれでよしというわけにはいかないだろうが、これらの装備を持っているか否かが、山に対する基本的な考え方を表しているように思う。もちろん大会中であり、しかもD隊であるというある意味特殊な状況であるということは割り引いて考えなければならないが・・・。この結果について、早速高橋先生から送って頂いた。結果および分析は全国高体連でなされるだろうから、ここでは多くには触れないが、その結果を拝見して、気になったのは「ツェルト」の持参が少なかった(参加者40人中持参者5人:12.5%)点だ。僕は今やツェルトは個人装備ではないかという持論を持っているので、ちょっとこの点だけは言及しておきたい。ちなみに僕自身は「大会中である」という認識の下、このうちのDKLについて、大会には持参していたが、「山行中」は持参しなかった。それ以外の10品目は持っていた。普段ならば持っているピンチパックを迷った末に車に置いていった(大会中とはいえ、反省材料)ので、Dのレスキューシートがなかった。ただし、レスキューシートは、防寒着とツェルト等で十分対応できると思う。

ところで、その「ピンチパック」だが、中身について皆さんはどんなものを入れているだろうか。「ピンチパック」の中身については、僕は「パーティから離れても数日は行動ができる」ということを基準にし、それを防水の効くタッパーに入れている。(写真参照)しかし、これらの中身については案外検討がされていないのではないだろうか?そこで、僕のピンチパックの中身を紹介したい。これについて、ご批判等いただき、検討材料としていただければ幸いだ。重量は700gある。入っているものを蓋に明記している。具体的には以下のものを入れている。@レスキューシート、A三角巾、B体温計、Cバンドエイド、Dテーピングテープ、Eガムテープ、F針金、Gドライバー(+−)、H六角レンチ、Iラジオペンチ、J細引き、Kライター、Lメタ、Mろうそく、N電池、O非常食、P食塩

それぞれの持参根拠については、あえて説明の要もないかと思うが、紙幅の都合もあるので、次号以降に改めて取り上げたいと思う。読者諸氏のご意見も伺いたいところである。

編集子のひとりごと

決して暇なわけではありません。書き始めた手前、最後まで決まりをつけねばならないので、書いております。チベットはもう一回?で終わる・・・と思います。(大西 記)