不定期刊行            197号  2006.10.6

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

「ベテラン登山者」「山の専門家」の条件 2

当たり前のことながら、僕は山岳部の顧問である前に、一登山者であるという視点を持ち続け、またそうあり続けることを改めて提案したい。登山という自然を相手にした活動をしている限り、どんなことでもあり得るというのはいうまでもないことだが、通常の山岳部の顧問としての活動の中では、「日頃の登山活動」言い換えれば、「登山者としての総合的な力量」が問われるような場面はあまりない。しかし、だからといって、技術も知恵も持たないまま、顧問をすることはリスクが大きすぎる。まさに転ばぬ先の杖が必要なのである。しばらく山に登っていない人がベテランでないのと同じく、最初からベテランはいないというのもまた真実だ。その意味においても、「山の顧問をしているから『ベテラン登山者』『山の専門家』でない」のもまた真実である。もう一つ重要なことは、山に謙虚に、先人の知恵に学ぶということだ。

現役で山に登るというのが、口で言うほどたやすくないのが、現在の高校の現場であるのは承知している。そんな状況の中、少ない時間を有効に使えるのが、各種の講習会や研修会への参加ではないだろうか?次号あたりで詳細を紹介できると思うが、「中信安全登山研究会」の研修会が11月11日から12日にかけて行われる。2003年夏の「中信安全登山研究会」の折、山岳部の顧問が自分たちで行う研修会を開こうという話が自然発生的に持ち上がった。(かわらばん72号・2003/10/13参照)そして、その年の11月、第1回の研修会を、白馬高校の合宿所を会場に行った。(かわらばん75号・2003/11/30参照)顧問同士が人と人のつながりを持つこともこの研修会の大きな主眼の一つだ。気楽な気持ちでご参加いただければ嬉しい。

クライミング日誌

このところ、クライミングづいている。決してうまくはできないのだが、行くと面白いし、やればまた行きたくなる。ここ数日の僕のクライミングの記録から。

9月28日 木曽高校定時制アウトドア部は駒ヶ根の人工壁へ。同行者は顧問の今井先生と、一年生の女子。クライミング初挑戦の彼女は、こんなことを書いてくれた。

今日私は、初めてのクライミングをしました。けど、私はクライミングが全くの素人で、なにをしたらいいのかわからなかったけど、少しずつやっていたら慣れてきて、二回で一番上まで登りきることができました。登りきったら、気持ちがよく達成感がありました。だから、またクライミングがやりたいと思うようになってきました。また行くことができたらいいなって思いました。今度は他の人も一緒にどうですか?楽しいですよ。

9月30日 長山協キャンプで小川山へ。本日の同行者は、大町北の下岡さん、大町山の会の山内さん、登攀クラブ安曇野の柴田さん。天気も上々。最初は屋根岩2峰のセレクションへ。マルチピッチのスラブ登攀。そのあとは、おむすび山スラブに移動して・・・。なんて書くといかにもクライマーって感じだが、知っての通り私などは、クライミングに関してはずぶの素人も同然。しかし、同行者の皆さんのおかげで、肝を冷やしながらのスラブ、快適なチムニーなどなど大変楽しい登攀ができた。いずれにせよ、「山は仲間だなぁ」と、思いを強くすることしきり。

一日楽しんだ後、金峰山荘で行われる長山協キャンプの懇親会に向かう。長山協キャンプは今年で、21回目を迎えるが、昨年から少し趣向を工夫し、長山協の多くの会員が懇親を深められるものへとパワーアップして行っている。2日間の日程の中、各自が思い思いの場所でクライミングや登山を展開、そのほかに指導委員会、遭難対策委員会の技術講習会、今年はそれに加えて、泉山さんの講演会(前号で紹介)をプラス。夜は金峰山荘を会場に大懇親会、それで足りない向きは焚き火を囲んでの第2部。長山協傘下の団体から総勢40数名が参加。親睦を深めながら技術交流を行った。高校の教員としては、宮本(中実)松田(大町)下岡(大町北)に僕の4人が参加。

10月1日 小川山2日目。昨日のメンバーに木曽高の今井さん、登攀クラブ安曇野から浅川さん、高野さんが合流。さらに諏訪山岳会のクライマー古倉さんが同行してくれた。今日は西俣沢を対岸に渡って、父岩へ。小川山物語、小川山ストリート、タジヤンU、岩壁の父・・・いずれも古倉さん、下岡さんがリードでトップロープをかけてくれたので、楽しめた。とはいえ、僕にとって小川山は敷居が高いなぁ。技術不足を痛感。お昼を少し過ぎたころ、雨が降り出してきたので退散。下って廻り目平キャンプ場から、昨日今日のルートを観察。楽しかった2日間を反芻。

10月4日 木曽高校定時制アウトドア部は、今度は木曽福島、権現滝の岩場へ。ここは、一昨年、長山協の森山副会長、中嶋ジュニア委員長のご協力で開いたが、木曽高校専用ゲレンデともいってよい。学校から車で10分。駐車場のすぐ脇がゲレンデという好条件。こぢんまりとした岩場だが、ルートは3本。写真は、前回の駒ヶ根の壁に行き損なったT君がリードしているところ。

朝10時ごろから始め、それぞれがそれぞれのルートを1〜2回登って満足したところで、帰校。授業の前に、職員室で写真を整理しながら大声でクライミングの話をしていたら、「先生、今度はいつ行くの?」と、ほかの生徒たちが寄ってきた。「うーん、どうしようかな?来週行こうかな?」と僕。「僕でもできるかな?」「私も行っていい?」思わず、ニンマリしたことだった。次回はまたメンバーを増やして行えそうである。権現の岩場は初心者の入門には最適です。一度お出かけください。

編集子のひとりごと

木曽高は、来年度の一年生から木曽山林高校と統合し、木曽青峰高校となります。私の担任している現一年生は木曽高校の最後の卒業生となります。この間色々あり、暫く生徒と山へ行くこともできませんでしたが、方向が決まり少しゆとりが・・・。(大西 記)