不定期刊行            202号  2006.11.19

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

下岡先生からの報告「高等学校登山部顧問研修会」

さて、講習内容の報告です。第1日目、まずはセンターの古幡講師による、山で役立つ救急法の講義と実習から始まりました。骨折への対応を中心に、観察、手当てについての注意事項の講義を受けたあと、固定法の実習を行いました。固定は「痛みの緩和」「出血の防止」「骨折部の動揺により新たな受傷防止」ために行います。今回は、腕、下腿、膝、大腿、足首における、副子を用いた二関節固定の方法を実習しました。文面ではうまく説明ができません。興味をもたれたら、来年度ぜひご参加ください。講義の最後に、講師から問題が出されました。北アルプスの山域を舞台に様々な状況設定があり、それに対する判断と対応法について答えるというものです。問題を通して、高地肺水腫、被雷、出血、熱射病、脱水、低体温、ショックとそれに対する対応について学びました。

次は、センターの前庭で、確保、フィックスロープとその通過についての実習です。登山中に危険箇所に遭遇し、顧問2名でロープをフィックスし、生徒を安全に通過させるという設定で行いました。途中に支点を設置しながらロープを延ばし、上部にアンカーをセットしてロープを固定。途中の支点も固定して、複数の生徒を安全にすばやく通過させる方法について実習しました。ロープを扱うのが初めての顧問もいましたので、八の字結びをはじめとする、ロープワークの基本も学びました。

救急法、ロープワークともに、繰り返しやっていないとなかなか身につきません。こういう講習の機会に、あるいは講習の機会を動機付けに、定期的な反復練習をする必要があると、改めて感じました。

実技VWXは、幕営に関する研究と実習です。天候悪化の予報が出ていましたので、センター内の体験室にテントを張り、ひとり1,000円の予算で、朝食と夕食のメニューを考えました。普段の山行でどんなものを食べているかを交流し、献立を決めました。レトルト主体、山の中でもご飯を炊く、うどんが中心など、各校で様々なレシピを持っていて、交流を通してこれからの山行でのメニューが増えた気がします。

メニューが決まったら買い出し、そして調理。A班は質にこだわり、国産牛のすき焼きとご飯、スープ。B班は量にこだわり、豚汁うどん、マーボナス、舞茸ご飯、そしてプリンのデザート。どちらも予算の範囲内で目いっぱい購入し、大満足の夕食でした。そしてその後は・・・いわずと知れた大交流会、違った、大研修会。二班が一緒にテントに入り、情報交換に意見交換を重ね、次第に夜はふけていきました。

研修会2日目の朝は5時起床、朝食。天気予報を見ると、北海道の東側に強烈な低気圧が発達し、寒気が入って山間部や山沿いでは積雪しそうだとの情報が入ってきました。そこで、当初予定していた縦走コースを、観音寺からの往復コースに変更しました。

7時半にセンターを出発、観音寺で高体連登山部長の柏原大町北校校長と合流しました。登山部長として、来年の下見も兼ねて講習会に同行してくださるとのこと。

さて、観音寺へ到着し、いざ出発しようと装備チェックをしたところ、なんと、ロープが無い。個人装備はしっかり準備したものの、団体装備のロープを忘れていました。大急ぎで古幡さんにセンターにとりに行ってもらっている間、念入りに準備運動をし、簡易ハーネスの装着法についての実習を行いました。

ロープが届いたところで、班ごとに出発です。すでに雪が積もり始め、あたりは白くなってきました。鐘撞堂、955ピークと標高を上げるに従い、降雪量も積雪量も多くなり、本格的な冬景色となってきました。

1208ピークの手前、急な斜面でフィックスロープの固定と通過、回収の実習を行いました。講師が生徒役となり、各班の顧問がロープを張り、安全配慮をしながら斜面を登りました。降雪は強まり、雪と落ち葉で斜面はよく滑り、講習あるいは実習というよりいきなり本番、実戦です。ロープを2ピッチ伸ばして斜面を登りきり、1208ピークでツェルトを被って休憩。ツェルトのありがたさと団体装備としての大切さを確認しました。

降雪は続き、積雪量も多くなってきましたが、もう少し登って雪山体験をしてから下山することにし、さらに上部を目指しました。積雪量は、吹き溜まったところで25cmを超えていたでしょうか。

降雪は強まり、下山のことも考えて、上部屈曲点を越えたところで引き返すことを決定しました。ツェルトを被って昼食を済ませて下山です。下山時には、登りでフィックスをしたところに加え、その上部と下部の2箇所でロープを使いました。上部で確保しながら先行者が途中の支点を作り、生徒役の講師を安全かつスピーディーに通過させ、AB両パーティー、無事に下山することができました。

当初予定していた縦走はできませんでしたが、降雪、落ち葉の上の積雪、滑りやすい斜面、それに加えて寒気による低温と、厳しい条件がそろった中で、“荒天に恵まれた”実戦的なトレーニングをすることができました。

編集子のひとりごと

前号で予告した研修会の報告です。厳しい条件がそろった中で、“荒天に恵まれた”とは、名言であります。予想以上の成果に主催者もホッとしたことでしょう。

小生は、昨日信高山岳会の仲間と黒井沢ルートから恵那山へ登ってきました。初任校の飯田長姫時代以来ですから、23年ぶりのことです。山頂には新しくなった測量用のやぐらが当時と同じ位置に立っていたほか、別棟の立派なトイレを従えた?薪ストーブを備えた避難小屋が迎えてくれ、随分変わったという印象を受けました。上部は新雪が数p積もっており、今シーズン初の雪上歩行を体験。南アルプスの全山、富士山、中ア、八ヶ岳、御岳、北アから白山まで素晴らしい展望でした。大西 記)