不定期刊行            206号  2006.12.18

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

06年度第2回中信安全登山研究会

12月14日、大町北高校で本年度第2回目の「中信安全登山研究会」が開催された。出席は会長の柏原大町北高校長、今滝(白馬)、下岡(大町北)、松田(大町)丸山(松本筑摩)の各氏に僕の6名だった。例年にならい、夏の学校登山、各校のこれまでの山岳部活動、顧問研修会、冬山計画検討、山岳部をめぐる諸問題などが話された。

今年の夏は梅雨明けが遅かったので今年の学校登山は結果として、計画した3校(白馬・大町北・大町)ともに実施ができなかった。そのことそのものは、どの学校もやむを得なかったという認識で一致。白馬は秋に追登山という形で実施したが、他の2校はやらず仕舞い。全校で大がかりに実施している大町は昨年、今年と2年続けての中止で職員の全校登山引率経験者も激減し、来年度以降の実施が危ぶまれるとの報告があった。大町は、現行では順延する形で予備日をとっているが、全校規模での大規模登山であるため、宿や交通機関への対応上、この形では結局中止せざるを得ず、今年の白馬のように、秋に延期して実施するような方法を考えてみてはどうかとの提起もあった。

各校山岳部の活動はそれぞれに特色のある活動の報告があった。往時に比べれば、衰退したとはいうものの中信地区には現在10校に山岳関係のクラブがある。栂海新道を縦走した大町高校から最終日「食中毒」で8人中6人が病院にかかったとの報告があった。当たり前だが夏山の長期縦走では、食糧計画と食材管理は要注意だ。松本筑摩からは、昼間定時制の部活動の様子が報告されたが、中信地区では木曽高校(手前味噌で恐縮だが)とともに定時制の「アウトドア」関係の活動が展開されているということをここでは特筆しておきたい。恐らく全国的に見ても今は少ないのではないだろうか?いつも木曽高校のことばかり紹介しているが、筑摩でも雨飾山や大渚山登山といった本格的登山、クライミングをはじめ、そば打ち体験などもしながら楽しい活動が展開されている。ちなみに、そば打ちはかつて中信安全登山研究会の事務局を務めておられた高体連登山部OBの松田泰尚先生の小谷の山小屋での体験だ。これらの様子は今編集中(1月末完成予定)の今年度の「中信高校山岳部年報30号」に詳細に書かれているので、乞うご期待。

さて、安全登山研究会が開催をはじめて4回目となる「顧問研修会」については、すでにかわらばん202号でも報告済みだが、今年からは山岳総合センターの主催事業として、中信ばかりでなく広く「高校山岳部顧問」が参加できるような体制をとった。また参加については、安全登山研究会の会長であり、同時に登山部長もされている柏原校長からも強力な後押しを頂いた。講習については、思いがけない雪で有意義な講習ができたという反面、装備面等で若干の反省点も挙げられた。これらについては来年度の計画の中に活かされていくことと思う。中信地区以外からの参加者も4人おられたのだが、そのうちのお一人であった飯田高校の小西透先生からは次のようなメールを頂いたので、紹介しておきたい。

1日目、救急講習会は、実際、県大会で動けなくなってご迷惑をおかけした生徒がいるだけに、我がこととして講習を受けました。怪我の際の処置も、是非マスターしたい内容でしたが忘れてしまいそうなので復習をするつもりです。固定ロープの結び方は、初めての経験でした。経験のある先生方と一緒で、皆から親切に教わってなんとか一通りの手順をやってみることができました。

2日目の鍬ノ峰登山は、はじめから雪模様で、1000mを越えたあたりから雪山となり、寒くて滑りやすい中での実地訓練で予想したよりハードでした。1日目の講習で教わったことがなかなかできなくて皆さんの足を引っ張りましたが、良い経験になりました。

初心者でも顧問をやっている以上、責任ある立場で引率するので今度のような講習会は大変ありがたいと思います。1日目の夜、雨だったので室内に張ったテントの中で夕食のメニューを決める相談は、ベテランの先生方も生徒にかえったようで愉快でした。いろいろな意見を取り入れた結果、食べきれないほど作ってしまい、結局、次の日の朝食はすべて前夜の残り物、朝食の食糧計画は無駄になりました。他県から参加された先生もまじえ、有意義な交流ができて満足の2日間でした。

(飯田高校 小西透)

冬山検討については、大町、木曽から具体案が出されたが、いずれも例年行っている計画だった。ともに気をつけて実施しましょうということを再確認したほか、雪のある高い山以外の情報等(たとえば冬に使える小屋の情報など)をいくつか交換した。

その他としては、今年度から改訂された旅費についての問題点についての意見交換、北信越国体の人工ボードの設置校の問題、中信高校山岳部年報の30年記念特集についてなどが話し合われたほか、IHでの事故についても報告があった。旅費についてはこれまでの行きがかり上、大西の方でこの一年やってみた結果をまとめて問題点や改善点を洗い出し、県と折衝したいと思っている。近く県内の高校の山岳部の顧問の先生方には、簡単なアンケート調査をさせていただきたいと思っているので、ご協力いただきたい。また北信越国体のボードについては複数の高校から希望が出ているが、地域的に中信に偏っている現状もあり、長山協の普及部や競技部等とも協議の上、中長期的なビジョンを持って具体的な設置場所については決めていきたい。年報は、かつて中信安全登山研究会に関わってきたOBの先生方などにも寄稿いただき「30年記念誌」という形をとるため、発行が若干遅れることをご了承頂きたい。

最後に柏原会長より、「できる範囲の中で安全に気をつけて登山を続けてほしい。自然の中で子どもの生き生きする行事はなくさないようにしていきたいものだ。」という話があり、会議は締めくくられた。

編集子のひとりごと

教育の憲法たる「教基法」が、数の暴力により袋だたきのいじめにあってねじ曲げられたこの国は、この先どこへ行こうとしているのか。「狂気」の沙汰としか思えない。しかし、やんぬるかな、これが我が国の実態なのだ。中信安全登山研究会で話し合われたことは、最後の柏原校長のことばにもある通り、「自然」の教育の再確認ということだった。自然の中で行われる様々な活動のもつ意味を広く訴えていけるのは、子どもたちと本当に向き合い、自然の素晴らしさを語ることのできる我々山岳部顧問である。その点に確信をもって、これからも活動をしていきたい。(大西 記)