不定期刊行            220号  2007.5.26

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

07年度長野県山岳総合センター高校登山研修会

今年の山岳総合センターの「高校登山研修会」は3校6名の参加と大変寂しいものになってしまった。私自身が講師を頼まれていながら、前々日にあの忌まわしい「事故」に遭い、実地の指導は出来ない中、昨年同様信大OBの「花谷泰広」講師が、顧問として参加した大町高の小沼拓也先生とともに実地指導してくれた。「花谷」さんは昨年インドヒマラヤメルー峰シャークスフィンの登頂に成功した今世界的にも注目されているクライマーである。なんという贅沢な研修会だろう!彼のことばや技術から、生徒たちの学んだものは、大きいはずだ。

生徒6名のうち木曽青峰高校の2人は、「生まれて初めてのテント泊山行」という状況での参加。また「大町からも一年生が一人参加」。この研修会はそういう人たちのためのものであるということを改めて知って頂きたい。ほかの3人はいずれも昨年に続いて2度目の参加であった。初日は、学校の枠を取り外して経験者と初心者でペアを組ませ経験者が初心者に指導をするような形でロープワークなどを研修したが、教わる方も教える方も楽しそうであった。木曽青峰の二人はテントに泊まるのが初めてだから、炊事をすることも初めて、もちろん雪上の生活などつい半月前までは想像の範疇にもなかったはず。そんな彼らが3日目に研修を終え、「また山へ行きたい」と日焼けして一回りたくましくなって帰ってきた。この状況では、来年は、本当に開催が危ぶまれる。しかし、参加した生徒や顧問の感想を読むと少数ではあってもこの研修会は続けたい、守り続けたいと心から思う。

5月の連休中、岡山高体連の田中先生と鳥海山を登ったが、その折岡山の現状を聞くと、岡山では年に6回高体連登山部が主催する行事があるとのことだった。詳細はまたレポートしてもらおうと思っているが、県大会の他に全県の高体連登山部に参加している生徒たちが集まる機会が5回もあり、その中には雪山の企画があるというのは驚きだった。誤解を恐れずにいえば、長野県の高校山岳部の山登りの「スタンダード」は、常念での県大会の事故以降確実に低下している。個人的には、この辺で何とかしなければもう復活の機会は失われてしまうのではないかという思いを強くもっている。以下、センターの研修会に参加したみなさんの感想を掲載するが、来年度こそ一つでも多くの学校が参加をするよう強く望むものである。

――以下参加者の感想です。――

生徒と一緒に実地訓練に参加した。講師の教え方が上手でさすがプロだと思った。ビレイの仕方やロープの使い方はクライミングに通じる点も多く生徒は熱心に学んでいた。雪上技術やこの講習会で学ぶことは、生徒が生涯にわたって登山に親しむための基礎になるので、今後も毎年参加を続けていきたい。講師の教え方を間近にみることで、指導のしかたの勉強になった。(顧問)

今回は2回目の参加でいろいろな事を再確認することができて良かったです。大西先生の「日本アルプスの自然特性」のパワーポイントは、おもしろくとても勉強になりました。2回目にして初の針ノ木登山で、久しぶりに感じの違う山を登ることができてとても楽しかったです。ロープワークも2回目なので身体で覚えることができたのではないかと思います。木曽・木曽青峰高校の皆様と一緒に行動ができてとても楽しかったです。(生徒)

いろいろなロープの結び方を教わり、講習以降の登山やクライミングで生かしていくことができそうです。「手でおぼえる」ということで、これから何回も練習を行って自分のものにしていきたいです。「雪山」ということでこの講習が初めての体験になりました。ピッケルやアイゼンといった装備の使用法を習得できるとともに、雪山での歩き方などをていねいに教えていただきました。僕は習ったことと多少違っていたかもしれませんが、それを生かしつつ下山することができました。「すべったあとどうやって体を止めるのか」ピッケルを使った実習はとても役に立つと思います。この実習を通し、自分は新たな登山の一面を見つけることもできました。それからロープの結び方があいまいなところもあるので、自分で練習していきたい雪山を甘くみない!!(初参加生徒)

今年は先輩から教えてもらう立場から後輩に教える立場になって少しとまどうこともあったけど、クライミングで使っていたこともあってなんとか教えることができた。でもやっぱり人に教えるのは大変だ。大西先生の「残雪期の山の魅力と危険、必要な技術」も知らないことだらけでへぇーと思うことがたくさんありおもしろかった。実地ではとにかく転ばないこと。そうすれば滑落停止の技術も必要ないといわれ、確かにその通りだと思った。それと歩行技術をこれからもっとみがいていこうと思った。またロープワークで練習した技術は、プロのクライマーも同じことをやっているのだと聞き、アルパインクライミングもできるかなーとか思った。この技術は、4つの結び方だけなので、よく覚えておきたい。この講習会はとにかく楽しかった。多少さむかったり暑かったり、ころころ変わったので大変だったけど、楽しかった。今回教わった技術はできるかぎり覚えておきたい。(生徒)

二年目の参加だったが、いざ教える側に回ると、うろ覚えの部分が目立つ。いい加減な状態で技術を長く使っていたので、自分がどれほど危険なのか思い知った。荷物の未確認による紛失や、取り出す際にまごつくことなど、事前準備の不徹底が目立ち、また装備に不備があり、まないた、包丁などを大町高校より借りることになってしまった。食糧計画、時間配分に大きな改善が必要。(生徒)

ロープの結び方やパッキングの仕方などが覚えられて今後の参考になった。冬用登山用具の使い方や野外での自炊のしかたがとてもよくわかった。体力をつけて来年はばてないようにする。(初参加生徒)

けっこう恐かったけど、自分に力をつけることができてよかった。みんなで楽しくごはんを作れてよかった。実地指導はとても分かり易い指導で技術をてきかくに身につけることができた。課題としては恐くて上までいけなかった。体力がつづかなかったので、少しずつつけていきたい。(初参加生徒)

編集子のひとりごと

県大会には21校が参加するとのことだ。少なくともそれだけの学校に山岳部があるというのはまだ少々の救いがある。衰えたとはいえ高校登山について、まだ多少は体力の残っている今、なんらかの手立てを講ずることが求められていると思う。(大西 記)