不定期刊行            222号  2007.6.5

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

「鍬ノ峰」の県大会が終わりました

大町市の「鍬ノ峰」を舞台に開催された今年の県大会は終わった。参加校は延べ数22校、参加者数129名と昨年より活況を呈した。これが一時的なものか、それとも一筋の光明なのかどうかはわからないが、ともあれここ数年の参加者の減少に歯止めをかけたのは間違いない。選手役員の皆さんお疲れ様でした。また、上位大会進出の皆さんおめでとうございました。

さて、トラブルもなくスムーズな運営がされた今大会だったが、コース前半の登山道は、大会中もあちこちで話題になったことではあるが、「大町高校山岳部」が2001年に開いた道である。この登山道については、私が以前当時の顧問松田さんから聞いた話をもとに「岳人」誌で紹介(bU82/2004.4月号)したことがある。その時掲載された記事をネタに皆さんにもう一度紹介することにする。

北アルプスの前山に位置するこの山(鍬ノ峰)は、標高が1623m。高さこそ背後の北アルプスに譲るが、ピラミダルなその凛とした山容は、安曇野からは一際目立つ。大町高校は過去10年間にインターハイに9回出場、2003年度には全国5位に入賞もしている。北アルプスのお膝元という抜群のロケーションと、そこを舞台に行われる全校登山、そしてそれをサポートする山岳部OB会などが山岳部を支えている。その大町高校は、2001年学校創立100周年を迎えたが、山岳部としても何か記念に残ることをしようと、いつも学校から見慣れている山に登山道を切り開いたのだった。

「あの山を開拓しろ!」最初は鶴の一声ならぬ顧問の一声で始まった。あの山とは、いうまでもなく「鍬ノ峰」。地元に許可を得て、のこぎりと地図、コンパスを手にしての作業が始まった。草やぶを刈りながら前進、慣れないのこぎりやビーバーに振り回され、できた虫刺されの痕や擦り傷はフロンティアの勲章となった。こうして6回に及ぶ悪戦苦闘の末、標高差900m、総延長6kmの登山ルートが切り開かれた。その様子を生徒は次のように綴っている。

「今回はメジャーで距離を測定しました。二人が50mの間隔をあけて登る、というスタイルで、先頭の者は普通に登り、後方の者は先頭が置いていった目印を注意深く探しながら登り、印を見つけると大きな声で合図して止まります。このとき先頭は止まった場所に印をつけます。そしてまた歩き、後方の者は印を見つけて合図をします。二人の間には50mの間隔があるので、後方の者が先頭の印を見つければそこまで登るのに50m登ったことになり、その回数を数えれば、距離が出るわけです。一方、他の者はといえば、やはり藪や潅木の伐採です。途中一名リタイアしたり、他人のノコギリをおっぽっちまったりというハプニングもありましたが、なんとか山頂まで着くことができました。第4回目にして初山頂なのです。待っていた景色は最高でした。」(第4回作業、2001.7.1より)

安曇野市の「有明山」にも池田工業高校の山岳部の生徒が開拓した登山道があり、今も多くの人に親しまれている。高校生が開いた山に集った多くの高校生が、この山で得た体験をこれからの人生に少しでも役に立てていってくれればいい、そんなことを思いながら大会役員を務めた。

来年度県大会は「蝶ヶ岳」で会いましょう

県大会の最終日、私は茅野高校の池迫さんと二人で来年の大会開催予定地である蝶ヶ岳に登るために上高地へと移動した。来年度の開催候補地である「蝶ヶ岳」は、1984年にも県大会を開催した場所ではあるが、それからすでに4半世紀たち、この時期の実際の山の様子を知る人も少なくなった。そこで、安全に大会を実施するための第1歩として、実際に大会が行なわれるのと同時期の山の様子を確かめてこようとの腹づもりであった。大会最後のイベントであるセンターの人工岩場での「交流クライミング」の終わったところで、閉会式を失礼し、我々二人は沢渡に向かった。

沢渡からはバスで上高地入りし、新緑の美しい中、ニリンソウやエンレイソウ、ツバメオモトの咲く道を横尾まで入って幕営した。6月第1周で、上高地はウェストン祭で観光客も多かったが、明神を過ぎ、徳沢まで入れば一般観光客の姿はぐっと減る。横尾のテン場についた我々は、2人用のツェルトを張り、ビールを片手に至福の一時。

6月3日は、朝3時に起床し、4時に出発。急坂を一気に登る。大会運営上の一番の心配の種は「雪」であるが、その「雪」は標高2100m付近から現われ、2200mくらいから稜線直下の2600mくらいまであった。しかし、樹林帯の尾根上であり、危険はないと判断した。赤テープや標識もきちんとしており、ほぼ夏道通り辿れるので、まず道迷いの心配もなかろうが、ガスが出た時だけは注意が必要だと思った。頂上からの槍穂高の展望はやはり素晴らしかった。来年、「この素晴らしい景色を高校生にぜひ味わってもらいたい」・・・そんな思いを胸に同じ道を下った。以下はコースタイム。

6月2日

沢渡14:00―バス―上高地14:2014:30―明神15:11―徳沢15:5516:10―横尾16:00

 6月3日

 横尾4:00―槍見台4:3019304:505:15―標高2255m地点6:006:15―稜線7:137:27―蝶ヶ岳山頂7:458:052255m地点8:45―横尾9:4310:07―明神11:4511:53―上高地12:35―沢渡13:00

編集子のひとりごと

県大会の際、皆さんに「旅費請求」についてお願いをしました。消耗品の請求、宿泊にかかる「入浴代」や「食卓費」についてのトラブルはないでしょうか?もし問題が出てくるとすれば、各学校とも「確定精算の回議」がなされる今日明日くらいからではないかと推察しますが、事務の方に言われるままに引き下がらないで欲しいと思います。もし問題等があった場合には、大西まで連絡して下さい。大会の時にもお話ししましたが、いわゆる「県の旅費規程」には、山岳部の引率は全く想定外なので、実績を積み重ねる中で、当局にも実態を理解してもらわねばなりません。また、そのことが実際の交渉をする際にも具体的な裏付けとなります。「たかが600円の風呂代」かもしれませんが、「されど600円」というのも事実です。「高校生を山に積極的に連れて行くことができる」ために、みんなで頑張りましょう。また、このことについての各学校での今までの積み重ねによる前進点などもあればお知らせ下さい。(大西 記)