不定期刊行            226号  2007.8.16

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

海へ・・・栂海新道を歩いてきました

松本では猛暑日が8日間続いている。そのさなかの12日から14日まで2泊3日の日程で栂海新道へ行ってきた。信高山岳会のメンバー福島さんをリーダーに、沼田さんと私。そこに今回は福島さんの二人のお子さん想人君(13歳)と風子さん(9歳)も参加。若い!二人に非常に勇気づけられる山行であった。朝日岳以北には有人の山小屋もなく、水場も離れているこのコースを小中学生が踏破したというのは、出色の出来事である。

3日間、雲一つ浮かぶことのないピーカンの空の下、我々は蓮華温泉から入山し、親不知海岸まで抜けた。標高1500mの蓮華温泉から最初は瀬戸川まで標高差で300m以上下る。そこから初日はゆっくり時間をかけて五輪高原を経て、2418mの朝日を目指す。2日目は徐々に標高を下げながらもいくつものピークを越え、最終日のゴールは標高0mの親不知の海岸である。

歩いてみて初めてわかったのだが、このコースは基本的に忠実に稜線を辿っており、最初の長栂山以外はすべて山頂を踏むようにルートがとられていて(長栂山も当然ピークは踏んだが)、全くトラバースということがない。基本的には下るのだが、同じような標高の山並みが続いて、それぞれにかなりのアルバイトを強いられる。それだけに実質獲得標高ならびに損失標高は想像を遙かに越えるものだった。ちなみに、名前のついているピークだけでも、朝日岳、長栂山(2267m)、黒岩山(1623m)、サワガニ山(1612m)、犬ヶ岳(1593m)、菊石山(1209m)、下駒ヶ岳(1241m)、白鳥山(1287m)、尻高山(677m)、入道山(430m)と10峰を数え、その間名もない小ピークはその倍以上は優にあった。

出発後、しばらく歩いただけで、その歩きっぷりから、想人君も風子さんも山慣れしているのがすぐにそれと知れた。聞けば先月も富士山に行ったということで、それに向けて今年に限っても高社山、飯縄山、黒姫山へと登ったそうだ。自分の荷物はもちろん、食糧まで分担して背負ってくれる頼もしさである。こちとらもうかうかしていられない。

五輪高原は、木道が整備され山上のパラダイスといったところ。雪渓が出て来始めると随所に美味い水が湧き、お花畑に咲く花々が心を和ませてくれた。ことにハクサンコザクラの大群落は、すばらしかった。この日の夕食は沼田シェフによるそうめんのミートソースという変わり種、いくつかの隠し素材も味をひきたて、疲れた身体もリフレッシュ。期待ほどではなかったものの、明け方はペルセウス座の大流星群に歓声を上げながら満天の星にも満足。

2日目は今回の最高到達点である朝日岳から、目の前の雪倉・白馬の連峰と剱立山、そして行く手の栂海新道をはるかに望み、出発。今年は花が遅いのか、長栂山から黒岩山までの湿原(アヤメ平、黒岩平)は、見事なお花畑であった。しかし、気温は山上でも30度を優に超え、稜線の直射日光に照らされた我々はみな熱射病寸前。そんな状態でたどり着いた栂海山荘はまさに砂漠のオアシスそのもの。ここで1時間以上大休止をした後、さらに歩を進めたがさすがに白鳥山までは行き着くことができなかった。美しいブナ林の広がる黄蓮の水場と呼ばれる地点でテントを張らざるを得なかった。

最終日も愚痴一つこぼさない二人の子どもたちに励まされながら、アップダウンをくり返して、親不知にたどり着いた。暑さと長時間の歩行で、皆へろへろだったのだが、海を見るとその疲れも一気に吹き飛んだ。

朝日岳から親不知まで27km、かつては力のある人しか入れないと言われていたこの「栂海新道」だが、想像していた以上に道は整備されており、素晴らしい道だった。びっくりすると同時に40年以上にわたってこの道を維持管理してきた「さわがに山岳会」を始めとするボランティアの皆さんの努力に頭が下がった。天気にも恵まれたが、何より二人の子どもたちの笑顔にたくさんの元気をもらった愉快な山行だった。

編集子のひとりごと

栂海新道に行く前の9日間(3日から11日)、大学生の息子と二人で北海道に行ってきた。新潟からフェリーで小樽に入り、運転を交代しながら車中泊とテント泊をくり返し、小樽〜札幌〜富良野〜旭川〜層雲峡〜足寄〜弟子屈〜美幌〜網走〜知床〜根室〜釧路〜標茶〜霧多布〜厚岸〜帯広〜えりも〜日高〜小樽と道東をぐるっと回ってきた。走行距離は2800km。地平線から登る太陽、広大な湿原、どこまでもまっすぐな道・・・。北海道は広い!!!えりもでは、カシタシに遠征したときの清水ドクター(今はえりもの診療所に勤務されている)のところに一晩お世話になり、先週捕獲したというヒグマの肉を食べさせてもらってきた。味噌と酒、砂糖で味付けをして焼いたが、それほど臭みもなく、意外と柔らかくてなかなか美味。

さて、夏休みも間もなく終わるが、この暑い中佐賀ではインターハイの最中である。選手の皆さんの奮闘を期待したい。専門委員長の小林さんからは、佐賀も暑くてA隊では一部コースを短縮して行なった旨連絡があった。一昨年の千葉、昨年の奈良といずれも暑い中での大会だったことを思い出した。

明日、明後日(17、18日)は大町市のサンアルプス大町で第8回ライチョウ会議長野大会が開かれる。参加料は無料、参加制限なし。ライチョウをキーワードに高山環境をいかに守るかという問題に関して、様々な角度から講演やシンポジウムが行なわれる。興味のある方は参加してみてはいかがでしょう。17日は13:00から、18日は9:00から16:40まで。私は2日間とも会場にいます。大西記)