不定期刊行            232号  2007.9.27

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

「高校登山部顧問研修会」を自分たちの参加で育てよう!

中信安全登山研究会と県山岳総合センターの共催で行なわれる「高校登山部顧問研修会」の案内チラシが事務局の下岡さんより届きました。昨年から始まった新しい講習会を、自分たちの手で、顧問の力で発展させていきましょう!

もともと中信地区の顧問の中から「年に一度は顧問みんなが顔をあわせるような機会をもち自主的な技術研修や交流をしたい」ということから始まりました。でも、中信に拘らず山に興味のある高校の先生方なら県内外を問わず誰でも参加できます。昨年東京から参加した先生からはすでに参加の意向が示されているそうです。「山」を「肴」に「みんなで」ワイワイやりましょう。県内各校には案内が届き「出張」扱いになる筈です。

定時制アウトドア部のラフティング体験

木曽町には旅館組合の有志が中心になってたちあげた「ラフティングクラブ」があってガイドをしてくれる。夏には、かなりの人気だとのことだ。そんな話を生徒にしたらぜひやってみたいと言う声があったが、なかなか機会を持てずにいた。そんな矢先、今年のシーズンもぼつぼつ終わりになった23日月曜日、同クラブでは木曽町関係者向けの無料体験会を実施してくれた。新聞の折り込みチラシでそんな情報を入手した我々木曽高校定時制アウトドア部は、早速申し込んだ。急だったこともあって、参加者は、生徒が2人、顧問2人の計4人だった。アリューシャンに遠征したとき、ツンドラの湿原をエンジン付ゴムボートに乗ったことはあったが、あの時以来のゴムボート。朝9時にワクワクしながら集合場所の関所橋に向かう。なんとそこに現われたガイドは、地元の旅館の若旦那で、僕が木曽高へ赴任した年一年生だったM君。「なんだ!お前か!」というわけで一気に気持ちが和む。救命胴衣にメット、パドルを渡されて、漕ぎ方や転落したときの対応について、説明を受けた後、いよいよボートを川に浮かべて乗り込んだ。ボートは2挺あり、1挺は子どもを含む7人が、そしてもう1挺には我々4人が乗り込んだ。我々のボートのガイドはM君が買って出てくれた。ガイドは後ろで舵をとり、僕らは息を合わせて漕ぐ。瀞になっているところで、しばらく漕ぐ練習をした後、いよいよ川を下っていく。川幅が狭くなり激流になるとボートは翻弄されて前後逆になったり、座礁したりしながら、水しぶきを上げていく。最初はちょっとした流れでも、落ちないようにとおっかなびっくりの我々だったが、そのうちに大胆になってくる。そうなるとかなり楽しい。途中では、川の中に飛び込んで、救助訓練をしたので、もう全身びしょぬれ。圧巻は終了直前にある2カ所の堰堤の通過。ちょうどディズニーランドのスプラッシュマウンテンってな感じ。約2時間の体験だったが、身も心も満足。

「シャクルトンに消された男たち」ケイリー・テイラー=ルイス著 文藝春秋刊

シャクルトン遠征隊の欠けていた1ピースとも呼ぶべき、「ロス海支隊」の冒険を知っているだろうか?南極横断を目指して果たせなかったシャクルトンの冒険は、自身の書いた「南へ」を始め、アルフレッド・ランシングの「エンデュアランス号漂流」、キャロライン・アレクサンダーの「エンデュアランス」などここ数年相次いで邦訳が出版され、スコットやアムンゼンの極地一番乗り競争に優るとも劣らない評価がなされているのは周知のことかと思う。極地一番乗り競争に敗れたシャクルトンが、執念をかけたのが「南極大陸横断」という前人未踏の偉業だったが、彼が有名になったのは、南極に上陸を阻まれ船を失ってもなお不屈の精神で、隊を率い生き抜いたという事実だった。しかし、その影で彼の横断をサポートした男たちの命を懸けた冒険があったのはあまり知られていない。それこそ、本書が取り上げた「ロス海支隊」の10人の男たちの冒険だ。

シャクルトン隊はウエッデル海から南極大陸に上陸し、南極点を通過し、対岸のロス海に向かう予定だった。ロス海支隊は、ウエッデル海から上陸するシャクルトン本隊のために、糧食の補給所網を反対側から築いていくという任を負い、本隊とは一切連絡が取れない状態で黙々と自分たちに与えられた仕事をこなしていった。彼らは南極に上陸することすらできなかったシャクルトン本隊とは裏腹に、南緯83度まで進み見事に補給所網を作り上げた。本来は探検隊ではなかったはずの彼らが、実際には南極の陸路の旅の最長記録を打ち立てたのだ。しかし、この彼らが遭難しながら命がけで(実際に3人が死んでいる)建設した補給所は結局一度も使われることはなかった。彼らの存在は、一方で、シャクルトン率いる本隊が「全員生還」という華々しい帰還を遂げたことで、すっかり霞んで、結果として「消されて」しまったのである。これが邦題の意味するところだ。(原題はThe lost men)今まで殆ど取り上げられて来ず、「消されてきたロス海支隊の冒険」。前掲した本隊の記録とともに一読をお薦めする。

編集子のひとりごと

中信新人戦は、好天の下先週終了。出場男子7校、女子2校。交流会は生徒の部も顧問の部も大盛況。この火を絶やさないように顧問研修会へ集まりましょう。(大西 記)