不定期刊行            237号  2007.10.27

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

来年度県大会会場蝶ヶ岳下見報告

少し前のことになるが、来年度県大会の会場となる蝶ヶ岳を県と中信地区の専門委員7人で下見した。すでに小林専門委員長から「2008年度長野県高校総体登山大会について」という文書が届いていることと思う。また、高体連のホームページには、今回トレースした登山道の地図がアップされている。実際に歩いてみると2万5千分の1地形図の登山道は現実のものとはかなりのズレがあったことを報告しておこう。当然大会時にはその点については、できる限り配慮することになろうが・・・。私が池迫さんと昨年の6月に登ったときの写真も事務局には届けてあるので、近日中にホームページにアップをお願いしようと思っている。6月上旬の雪の状態や、テントサイトの様子、山頂からの展望などを知っていただくことができるかと思う。

さて、僕らの登ったのは10月11日のこと。秋晴れの一日、早朝午前5時に梓川高校に集合、沢渡から上高地に入り、徳沢からは2班に分かれて、蝶ヶ岳を周回した。私は小林、松田の両名とともに、なんと年寄り3人組の一員(若い方は久根、浮須、大西英、西牧の4名)として、大会とは逆コースを辿り横尾から登り、長塀山へ下りた。6月の大会直後、池迫さんと二人で特命を帯びて登っていたのだが、今回は紅葉の始まりかけた美しい山を満喫した。大会はここ数年とはいくつかの点で違いがある。

その1、開会式会場が車横付けとはならない「徳沢」である。

その2、概ね2000mから上はほぼ完璧に雪上となる。

その3、審査に筆記試験がはいる。

などの点である。その3は別として、1と2については、顧問自身の意識改革も必要ではないかと考える。当たり前のことだが、まず、沢渡で2泊3日のパッキングした荷物ができていなければならない。笑い話のようだが、車に最終日の食糧をデポしておいたり、忘れたものを顧問が気楽に調達しに行ったりというわけにはいかないのである。

雪上歩行については、「雪上」だからといって、それが即危険に結びつくわけではないし、当然安全に登山ができる場所として専門委員会として蝶ヶ岳を大会会場に設定した。だから、すべての学校が安心して今まで通り参加し、交流できる場である点は全く従来通りである。しかし、高校山岳部の生徒の場合、「雪上歩行技術」は、一度でも経験した者と全くの未経験者では間違いなく差が出る。その点では、大会までに必ず一度は雪上を歩いておくことを強くお願いしたい。顧問が雪上へ連れて行ける所は各校ごとに対応すれば済むことだが、失礼を承知でいうのだが、もし不安がある場合は、専門委員長からの通知にも書かれているとおり、5月に行なわれる山岳総合センターの「高校登山研修会」への参加を躊躇なく薦める。実際ここ10年近くセンターの講師を頼まれている私であるが、この講習会を受けた生徒は全員5月の針ノ木雪渓を登る技術を確実に習得していることを皆さんに知って頂きたい。来年の大会に向けては、今から、このセンター研修会への参加を計画に入れて活動計画を立てておいてほしいものだ。

木曽高定時アウトドア部 木曽街道踏破 福島関所から寝覚の床

10月25日、アウトドア部の木曽街道踏破計画を久々に実施。今回の参加者は、部長の田中君、2年生の水上君に顧問が今井、大西という4名であった。10:10福島関所跡を出発、島崎藤村の小説「家」の舞台になった高瀬家を横目に福島の町をたどる。木曽病院の信号から中部北陸自然歩道にはいる。しばらく進むと「トンネル」があったが、入り口には消えかかった白ペンキで「列車注意」と書いてある。今はもう一段上を通っているJR中央西線だが、かつてはこの道が線路だったのだろう。列車が通っていた時のトンネルが今は車も人も通る普通の道になっているのであった。

国道と合流してしばらく進み、11:15に元橋を通過。そこから15分ほど歩いたところに御嶽山の遥拝所があるが、このあたり一帯が国道19号から御嶽山を望める唯一の場所。先日降った雪を頭にいただいた御岳が大きかった。色々な意味で噂の?カレー屋(知る人ぞ知る)のあたりで上松町に入るが、国道の東側には沓掛「一里塚」と「馬頭観音」があった。桟温泉から国道を離れ、木曽川の右岸に渡る。ここはかつての難所で、名勝としても有名な「木曽の桟」である。歌枕でもあり、芭蕉の句碑と子規の碑(かけはしの記)があったのでチェック。「桟や命をからむ蔦かづら」芭蕉が辿った当時は文字通り命がけの難所だったのである。

右岸の台ヶ峰線には、「平成の木橋」とも言われる木製の橋が架けられているが、そのたもとの木曽川を望む公園で昼食とした。まだ少し紅葉には早いが、緑の水をたたえた木曽川と桟を望むこのあたりの景色は、なかなかのものだ。昼食後、木橋の先に進むと台ヶ峰線の崖の法面がクライミングにおあつらえ向きのパネル状になっており、そこにいい具合のパターンが刻まれている。さすが、クライミングフリークの田中部長・今井T両氏は見逃さなかった。早速取り付く、イヤハヤなんとも!台ヶ峰線を500mほど辿ったところから中部北陸自然歩道にはいると、竹林が続く美しい緑の道となった。

竹林が切れ、展望が開けると同時に正面には大パノラマが広がった。木曽川右岸から眺める中央アルプスの峰々は美しい。中アが「木曽山脈」と呼ばれる所以だ。三ノ沢岳がゆったりと大きくそびえ、駒の長い尾根、宝剣の尖塔もそれぞれに自己主張していた。

13:00再び木曽川を左岸へと渡り、ループ橋の下を通って上松の町へと入る。13:20上松小学校前を通過。校門近くには、藤村「山は静かにして性を養ひ、水は動きて情をなぐさむ」の碑。山口村が岐阜県になろうとも、藤村は郷土の文学者であることには変わりがない。13:45寝覚の床に到着。裏寝覚から寝覚の床へ降りる。花崗岩の白さと緑の水は、はにかむように僅かに赤や黄色に色づいた山の木々を背景にして美しい青空に照り映えていた。

【番外編】車回しをしてあった今井先生の車で上松まで戻って、右岸道路をひとっ走り。一度行きたかった「隠れ滝」を見に行く。道路からおよそ5分、木曽川の川原にあるこの滝はその左右に立派な岩壁を擁し、堂々たる姿の滝であった。ここもクライミングのゲレンデとして開拓したら面白そう。そんなおまけまでついた楽しい一日だった

編集子のひとりごと

今日から山岳総合センターで中信安全登山研究会の研修会が行なわれる。台風が接近しているとのことだがどうなることやら。楽しい研修会になればいいなぁ。(大西 記)