不定期刊行            252号  2008.4.19

中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

県大会の前に「センター研修会」で足慣らししませんか

 山岳総合センターの高校登山研修会が今年は1泊2日の予定(5月10、11日)で開催される。これまでずっと2泊3日で行われてきたものであるが、なかなか学校をあけにくいという参加者の便宜を図ってのことだ。僕は今年も主任講師を頼まれているが、センターの中島さんとも相談して今年の研修会では、県大会の「蝶ヶ岳」を意識して雪上歩行を重点的に行うことを主眼に、一年生や初めて山歩きをする人でもより参加しやすくするためにアイゼンを使わないことにした。

 以下は、以前もかわらばんで書いたことの繰り返しになるが、今年の県大会を考えると、たとえ一度であっても雪上歩行の経験のあるなしがそのまま結果に影響するといっても過言ではないと思う。先日も栂池にいってきたが、今年の北アルプスの雪は少ないとはいえない。たかが「1泊2日の雪上体験」で何が・・・と思われる向きもあるかもしれないが、高校生にとってはじめての雪上歩行と2回目の雪上歩行は雲泥の差。一校でも多くの学校が、山岳総合センターのこの研修会の機会を有効に使って、足慣らしをすることを希望する。

 なお、要項はすでに各学校に届いていると思うが、高体連としてもこの研修会の意義と大会の成功のために参加を呼びかけたいということで、15日付けで発送した登山部報の第1号にも同封して送付した。申し込みは28日までに所定の様式で山岳総合センターへ。

テキスト ボックス: 蝶が岳2300m付近
2007年6月3日
蛇足ながら、昨年の県大会終了後、その足で僕は蝶ヶ岳に行った。県大会の時期の雪の状態を確認するためである。標高2100mくらいから雪が出てきた。樹林帯の中で、雪は締まっており、危険はなかったが、2200mから2400mまではほぼ全面雪上歩行であった。左の写真はそのときの写真だが、さらに詳しい状況が県連高体連登山専門部のHPに、「開催地視察情報」としてアップロードされている。

URLは、http://www.ngn-hssp.org/tozan/である。センターのこの研修会は、雪上に心得のない顧問でも安心して生徒を任せられる上に、顧問自身も経験が積める貴重な研修会だ。ぜひ、一緒に雪の中で遊びましょう!!

チョモランマ山頂に聖火はあがるか?

4年に1回開催されるスポーツの祭典オリンピックが、今年は北京で開かれる。そして、その象徴ともいうべきものが聖火。「平和の象徴」とも言いうるその聖なる火が、まさに各地で火種になっている。

5年前に中国北京を訪れたとき、中国登山協会の通訳趙建軍氏は言った。「北京オリンピックの聖火はチョモランマを越える。それが我々登山協会に与えられた使命だ。そのために今から準備をしているのだが、このことに失敗はありえない。」と。そして、一昨年チベットを訪れたときチベット登山協会の登山隊隊長の桑珠氏はこう言った。「自分が聖火をチョモランマに持って行く」と。

2008年のオリンピック開催地を決めるIOC(国際オリンピック委員会)総会の席上で、中国が世界の人々を驚かせたことの一つが、「聖火を世界一高い場所に登らせる」というプレゼンテーションの中身であった。中国にとっては、オリンピックは国威発揚の場であり、国の威信をかけた大プロジェクトである。そして、そのためにはどんなことでもするはずである。中国登山協会の主席の李致新会長は、昨年UIAA総会で松本を訪れたときに「(昨年)5月、チベット登山協会は、中国の政府の命を受けて中国登山協会と力を合わせて、聖火の登頂に向けてのシミュレーション登山に成功した。」と得意げに語ってくれた。

しかし、3月に始まったチベット騒乱は1ヶ月を経過しても収まる気配はなく、世界各地を回る聖火は、ズタズタの状態だ。現在聖火は、アジアを回っているが、長野でもスタート地点に予定されていた善光寺がそれを返上した。・・・こうして五大陸を回った聖火は、このあと中国国内にはいり、その後は中国国内を回る。そして、その途上の5月「チベット」に入った聖火は予定なら大歓迎を受けて、チベット領内を回り、最大の見せ場である「チョモランマ(エベレスト)」の山頂へと向かうのだ。しかし、おそらくは今起こっている騒乱がそれまでに収束することはあるまい。そして、これもおそらくだが、5月中旬のある日、中国側の発表では「聖火は大歓迎されてチベットに入り、チョモランマの頂上に聖火を高々と掲げた。」ということが写真とともに報道されるに違いない。現実はどうか?

本当ならば、今年チベットで行われる長野県山岳協会とチベット登山協会の友好協定締結20周年を記念した「合同登山」がチベットで展開されるはずだった。しかし、それはこの騒ぎの中で不可能になった。そしてその兆しが、すでに昨年の5月のこの聖火プロジェクトのシミュレーション登山のころに芽生えていたことに思い至る。

どんなことがあっても中国はチベットに譲らず、オリンピックを成功させるためには手段を選ばないだろう。「このことに失敗はありえない」冒頭の趙建軍氏のことばにすべては集約されている。チベットとそこに住む人を少しではあるが知っているだけに複雑な思いが湧いてくる。

編集子のひとりごと

過日行なわれた本年度の「長野県山岳協会」総会において、国体及びインターハイで活躍した長野県少年男子チームならびに松本県ヶ丘高校山岳部が表彰された。いずれも長野県のチームとしては久々の入賞を果たしたが、そのことへの評価である。今年の県大会ではどんなドラマがくりひろげられるだろうか?一方、国体は今年度からいよいよ縦走競技が廃止され、リードとボルダーの2種目となる。普及の方がなかなか進まない現状もあり、昨年の活躍が即長野県の現状を表していないというのが現実である。とりわけ女子は現在のところ取り組んでいる生徒は皆無の状態である。長山協の競技部長森山さんは「この状況の打開のためなら努力を惜しまない。」と全面的なバックアップを約束してくれている。どこかに眠っている女生徒はいませんか。(大西 記)