不定期刊行            271号  2008.9.29中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

松川村で中信新人戦開催

中信地区の新人戦が、19(金)、20(土)の両日4年ぶりに松川村馬羅尾高原で開催された。折からの台風が日本の南岸を東進するという中での開催となったが、台風が予想より南寄りを進み、20日の明け方にはすでに日本の東の会場に抜けたこともあり、初日の神戸原でのオリエンテーリング競技、2日目の雨引山の交流登山をともに無事に終えることができた。他の競技の中には、前日に早々と延期を決めたものもあったようで、高体連本部としては野外で行う競技である「登山」についてもかなり心配があったようだが、登山専門部としては結果的には最後まで様子を見ながらということで実施した。専門委員長としては、やきもきしたがほっと一安心である。

秋の台風シーズン故、毎年天候のことは気にしながらの大会運営である。これまで土砂崩れで国道158号が不通になり、乗鞍での開催(98年)が一週間延期になったことがあった。一方で台風をにらみながらの大会としては、99年美ヶ原での開催が思い出される。このときは、台上では強風との戦いであった。しかし延期になったのは長い歴史の中で、乗鞍での1回だけというのも考えてみれば奇跡に近い。所帯が小さい「登山専門部」ではあるが、延期や順延などの措置をとると様々な部分でしわ寄せがある。気象ばかりでなく「『危機管理』については、しっかり考えておかねばならない」、無事に大会を終えての実感であった。

大会は男子が7校23名、女子が2校7名のエントリー。交流会での講演会の講師には、元梓川高校教諭の浅川行雄さんをお招きし、「常念山脈のおいたちをさぐる」と題したお話しをしていただいた。若年退職をして「悠々自適」の浅川さんの舌は滑らか。その後の交流会は、浅川さんの採ってきてくれた「きのこ」たっぷりの豚汁を囲みながら生徒も顧問も和やかに一時を過ごした。

さて、中信の新人戦はオリエンテーリングを通して、「体力」「読図」「設問」の3項目で競う。閉会式の講評で、僕は今回やや辛口に次のようなことを言った。かつて馬羅尾高原での実施の際の2日目の交流登山は有明山へ行っていたことや、初日のオリエンテーリングのコースもかなりエリアを狭くして実施せざるを得ない状況にあることなどの実態を紹介しながら、第1の体力については、以前に比べれば間違いなく低下していることを指摘。設問については、5問中3問は、地図を読む上で最も基本になる「標高差」「方位角」「直線距離」を問うもので、これらは毎年必ず出しているにもかかわらずなかなかできていない実態を憂えた。そして読図については、現在地が全く把握できていないような生徒もいたことを伝えた。・・・ただこれは、裏返して言えば、我々顧問の日頃の指導に帰ってくる問題でもあるのだが・・・。

しかし、彼らは「自然が好き」で入ってきた我々にとってはいわば「宝物」である。今回の新人戦の結果は結果として、これからに期待しよう。その上で、我々自身ももっともっと研鑽を深め、生徒と山を楽しみたいと思ったことである。

長山協キャンプ報告

1、振分け懸垂とカウンターラッペルなど 27、28の両日廻り目平で行われた恒例の長山協キャンプ。小生は、指導委員会と遭対委員会の「レスキュー講習会」に参加した。両日ともフェニックスの大岩で標記技術を実習した。振分け懸垂は、6月の日山協の遭対委員会の時に紹介された方法(かわらばん260号で紹介)だが、下降器のセット位置の高さと二人を振分けるスリングの長さ調整が非常に難しいことを実感。どうもうまくいかなかったので、帰宅後もう一度日山協の遭対委員会のときの写真を見てみた(左写真)。改めて下降器の位置と振分けの長さを見てみたが、実際の場面では岩場の形状や斜度によっても随分状況が変わることを知らされただけでも大いに意味があった。

「カウンターラッペル」は、救助者が岩場で動けなくなった要救助者のところまで到達してキャッチした後、上部の支点で振分けられた状態で要救助者と連結(要救助者にはロープ末端がつながっている)し、救助者は、要救助者とは反対側のロープにセットした下降器を使って懸垂をしながら要救助者を安全地帯まで引っ張りおろす方法である。(ことばで説明するのは難しいなぁ・・・。)

2、「ザック搬送」の新方法 背負い搬送については、菊地敏之さんが最新(10月)号の「岳人」で紹介している「ヌンチャクを使う方法」方法が気になっていたので、提唱して試してみた。菊池氏が「今までなぜこんな簡単な方法が挙げられなかったかと思うほどだ」と言っている方法だが、この手のものは実際にやってみなければわからない。実際にやってみるとこの方法は、背負われる方も背負う方も楽な上、セッティングや背負い替えなどの点でもこれまでの方法に比べれば優位である。「ヌンチャクを使う方法」というが、たとえヌンチャクがなくてもスリング一本あれば容易にセットできる。10月31日、11月1日に木曽高校で行う中信安全登山研究会の「登山研修交流会」でもいろいろ試してみる中の一つとして、ぜひ紹介したい。

3、「地物きのこの豚汁」で交流会 最後は、交流会の巻。夜陰の迫る6時半、乾杯。指導委員会の用意してくれた「きのこ豚汁」を充分楽しんだ。前号の「かわらばん」を読んで興味を持ったという名古屋の鈴木富雄先生も参加してくれた。これは嬉しいことだったが、学習会も実施した昨年までとは趣向をかえ、焚き火を囲んでと言う4年前のスタイルに戻しての実施で、参加者は全体としては昨年に比べかなり減少。僕自身はやり方も含め、多くの「会員の交流の場」をということを追求する上ではやや課題が残るのかなとも思いながら、豚汁を賞味し、酒を飲んだ。そうは言っても話をする中でいくつかの有意義な話も飛び出し、やはりこういう機会はいいなぁ、もっとみんなに出てきてほしいなぁと思ったことだった。長山協理事会としてもしっかり総括しなければ。

編集子のひとりごと

新人戦に長山協キャンプ。秋の恒例行事が済むと「山粧う」季節の到来だ。(大西 記)