不定期刊行            277号  2008.11.05中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

充実の「登山研修交流会」、県内外から21人(内生徒5名)が参加

10月31日、11月1日の両日行われた中信安全登山研究会の「登山研修交流会」の報告をしたい。2003年に自発的に始まったこの研修会も6年目を迎えた。昨年、一昨年は山岳総合センターを会場に行われたが、今年は最初の形に戻った感じの手作りの研修会となった。中信の高校の顧問のほか、他地区・県外から3名、さらに5名の生徒の参加もあり内容は充実した。

10月31日は木曽高校の合宿所で行った。参加者は今滝・小林(白馬)、小沼(大町)、西牧(大町北)、浮須(池工)、松田(県ヶ丘)、下岡(筑摩)、下島(弥生)、塩川(野沢南)、高橋(野沢南生徒)、沼田(王滝中)、鈴木(名古屋市立向陽)、花井・田口・河上・大西(木曽)の16名。それぞれ金曜日の授業終了後、三々五々木曽高校に集まり、20時までに「ザック搬送」、「フィックスロープの張り方ならびに通過方法」の研修を行った。ザック搬送については、「さらし」「ザック」「ロープ」「ハーネス」など様々なものを活用して背負うことを意見交換をしながら試してみた。以前お薦めの方法として紹介したヌンチャクを使う方法については、「ザックと救援者の間に挟まれた要救助者が圧迫され苦しい」などという意見があった。その意味では、要救助者と救助者の間にザックが介在する方式(カッパやストックを使う方法)の方がよいのではという意見が出された。(これについては2日目にも実践)

ロープワークについては、今回の参加者の中にはじめてハーネスをつける人からエキスパートまでの様々な人がいる中、ハーネスの装着方法、8の字結びを始めとする「基本のき」から丁寧に研修し、フィックスロープの張り方と安全な通過方法について意見交換をした。

紅葉の中を進む

 
午後8時15分からは、全国初の「気象予報士」資格を取得した花井嘉夫先生(木曽高校定時制教頭)に「気象の見方、気象情報の求め方」と題した講演をしていただいた。前半は、気象の基礎知識からはいり、それに基づいた天気図の見方がわかりやすく話された。後半では、31日当日に入手した生の種々の気象情報を使いながら、翌日の気象を予測するという実践的な内容であり、非常に興味深かった。「夜のうちは雨、朝方には回復し、冷え込みも木曽あたりではそれほどでもない」という翌日の天気予報は予想通りドンピシャであった。凄い!花井さんは信高山岳会の設立会員でもあるのだが、山屋はやはり山屋である。我々が山屋としてどんな情報が欲しいのかというツボを押さえた講演は、参加者には大好評であった。予定していた時間を大幅に超過したが、あっという間に時間が過ぎてしまい、もっと聞いていたいと思う内容だった。これだけでも参加した甲斐はあったと思う。

盛り上がりました

 

生徒にロープの扱い方を伝授

 

バックは御岳なんだけど…

 
夜10時近くになって始まったもう一つの目玉の「交流会」。この交流会の準備は、金曜日は通信制が休みなので、筑摩高の下岡さんが朝から木曽に来てくれて、午前中は隠れ滝で少しクライミングを楽しんだ後、様々な準備を手伝ってくれた。小生が授業や会議でバタバタしている中、下岡さんがすべての調理を担当。ありがたかった。できあがったキムチ鍋と木曽の地酒、さらに登山部長で中信安全登山研究会会長でもある大町北の柏原校長の差し入れで、みんなの心もお腹もほっかほか。開始時刻が遅く心配されたが、そんな心配は杞憂。宴会は延々と、夜中の3時まで続いたことだった。こちらの方も充分所期の目的を果たせた。

ザックでの搬送

 

お互いに学びあう

 
翌日は、木曽青峰高校の三村先生に生徒4名(三澤君、田代君、志水君、大津君)も交え、児野山へ。8時40分に木曽高校を出発。権現滝からのコースは道は整備されているが、2万5千分の一地形図には登山道の記載がないため、格好の読図研修となった。途中の権現滝の脇の、木曽高校プライベートゲレンデを見てから、沢を詰めて、11時40分頂上到着。御岳はちょうど前日夜の雪化粧で頭が真っ白。そこから今度は、尾根を下り、最初の急坂のところで5人ずつ3班に別れてフィックスロープを張る。各班にそれぞれ生徒が1人または2人配置できたので、張ったあとは生徒に通過方法を教える。スリングでのハーネスの作り方、少ない(手持ちの)装備でどう対応するかという実践的な研修ができた。尾根の下部では、それぞれの班ごと搬送体験をする。こちらも手持ちのものを使って、班ごとに工夫する。さらし、ハーネス、ストックとザック。写真はレスキューザックを使っているものだが、やはりそれべしのものは使い勝手がいい。実際の場面で何をどう使うか。ドラえもんのポケットにはいろいろなものがあれば、応用も利く。

山林高校の演習林から、黒川を渡って終了。時刻は予定通り午後2時。その後、希望者は上松町の隠れ滝岩場を視察。秋の一日を有意義に過ごした。

編集子のひとりごと

おかげさまで参加者に恵まれ充実した研修会となりました。遠くは名古屋市の鈴木さん、生徒を連れての塩川さん、これから山を学びたいという下島さん。いつもと違う顔ぶれの皆さんとも交流し、なかなか歩けない木曽の里山を堪能しました。(大西 記)