不定期刊行            279号  2008.11.06中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

永らく憬れた六百山についに登った 登山編 (松田 大)

18日朝5:30波田町役場集合。小生の車で沢渡へ。バスに乗り換え上高地へ、天気は無風快晴、気温は高からず低からずの絶好の登山日和、何よりの魅力はアプローチがほぼゼロ。7:15五千尺ホテル手前の公衆トイレ横より作業道にとりつく。砂防堰堤を巻いたり乗り越えたりしながら中畠沢を登る。上の堰堤横には土石流や落石の監視カメラがあり、更に上には所々土石流センサーのラインが沢を横切っている。このラインを切ったらどうなるかななどと冗談を言いながら踏み越えながら登る。沢には水は全くなく、踏み跡も可成りしっかりしている。1800mを越えた辺りで最初の休憩(7:55)、ここから上がガラガラの急登で歩きにくいこと夥しい。足下の石が安定しないのはこんなに大変か、降りはもっと大変だろうなと言いながら、時には四つん這いに、時には灌木を掴みながらよじ登る。以前ヤマケイで読んだことがある曲がったダケカンバ(2140m)からガレ沢を離れ草付きに取り付くと、幾分歩きやすくなる。少々滑るものの、踏み跡を時には灌木に捕まりながら登る。所々に真新しいと思える足跡も見受けられ、先行者の存在が伺われる。「そう言えば石井スポーツからガイド登山の案内がネットに出ていたなー、でもそのうちに追いつくだろう。」等と話ながら、一気に稜線まで登り詰め、2250m付近の小鞍部(中畠沢の源頭)で2回目の休憩(9:05)。上を見上げると岩峰が覆い被さって見える。其れにしても良い天気、良い景色、穂高連峰や焼岳、笠ヶ岳が綺麗だ。急ぐこともないと景色を堪能しながら20分ほど休憩。此処からはブッシュ混じりの岩や草付きの急登をよじ登る。まるで有明山の登りみたいだ、いや有明山の方が急だが、道がしっかりしている。などと云いながら、慎重に登る。登りは良いが下りは大変だ、下りはロープを出そうとも話ながら一気に登り、9:50最後の嫌らしい岩場を登り切る。其所からはハイマツの藪漕ぎであった。9:55三角点(2449.9m)のある頂上に到着。頂上は狭く数人も居たら満杯であろうが、絶好のビューポイントで、特に明神から続く穂高連峰の眺めが素晴らしい。尾根伝いに南に見える地点の方が明らかに高い。序でだから行こうと云うことで出かけるも、ハイマツの藪漕ぎ、いや藪潜りで大変であった。ほんの100mほどに20分近くかかった。さらに南のもっと高そうな地点も見えるがもっと大変そうだからとパス。再びハイマツ漕ぎで三角点に戻った。

居るだろうと予想した先行者も居らず、たった二人で満喫した眺めであった。実に1時間強も楽しんだことになる、11時少し前に、どうせ使うし、持って来たのだからとゼルブストとヘルメットを装着して下山開始。嫌らしい岩場は慎重に通過したが、登る際話題になった手掛かりのない草付きはロープを使い懸垂下降。確かに有明山の表参道(黒沢口)の方が急峻で長い。しかし彼処はしっかりした灌木もあり、第一トラロープがベタ張りである。仮に足を滑らせても、「溺れる者は何とやら」と言うが如く。藁ならぬ綱にしがみつけばよい。しかし此処ではそんな物はない。足を滑らせそうものなら、空を掴むか、然もなくば浮き石や枯れ灌木、もしくは直ぐ抜ける草を掴むがおちで、転滑落は免れそうになく、とても痛いでは済むまい。有る道具は有効に使う。ロープの使用も慣れていれば、出し入れにそんなに時間も掛からない。11:30登りと同じ鞍部で休憩を取り、登攀具やメットをしまう。後は快調に且つ慎重に下る。しかしガレ沢は予想以上に歩き難い。足を乗せた石が動くのでバランス取るのに変に力が入り、登りより遙かにくたびれる。お互いに落石の洗礼を浴びせないよう

縮尺は当てになりません(念のため)

 
にと、ルートを多少ずらせながら下る。12時少し前に(2020m付近)登ってくる単独行者とすれ違う。こんな山を良く一人で入るね。と変に感心する。彼は何時に下山しただろうか。少なくともニュースにならなかったから無事下りただろう。12:12登りと同じ1820m付近で最後の休憩、此処からは足下もしっかりしており、随分とラクに下れた。12:30一番上の土石流センサーのライン(1760m)を跨ぐ。12:42五千尺ホテル下手のトイレ横に無事到着。

河童橋周辺は観光客でごった返していた。こんな時間にまず知り合いに会うこともないし、混雑の上高地に特に用事もないと、バスターミナルへ直行。12:47シャトルバス乗車待ちの最後列に並んだ。その後は、沢渡で梓川渓谷の景色を堪能しながら入浴、さらに鵬雲崎でソバを食べ、本日の登山活動終了。素敵な秋の一日が終わった。六百山、長い間憧れていた山に遂に登れた。登山口がバスターミナルから数分とアプローチ殆どゼロ。急峻ではあるが踏み跡もあり、登山経験者ならそんなに難しい山ではない。でも、初心者や生徒とは一緒に登ろうとは思わない。

六百山はバスターミナルや河童橋から近すぎて、その全容がよく見えず存在感の薄い山である。登山史上にも余り語られない山でもある。標高が焼岳とほとんど同じであるとか、霞沢岳より200m程度しか低くないなんて事は、地図をよく見るまで気が付かなかった。

小生、昨年は前穂のひょうたん池を訪れた。今年の7月には徳本峠から霞沢岳を往復した。しかし上高地周辺にはまだ登ったことのない峰やルートが残っている。明神岳や中山、西穂山荘から新中尾峠焼岳小屋の間などである。何時の日かと云わず、近いうちに行ってみたいと思っている。

編集子のひとりごと

「何時の日か」なんて言ってるとだんだん登れなくなるのが落ちです。「近いうち」にまた誘ってくださればお供します。小生としても、愉快な山登りをしたっていう感じの玄人好みの山でした。もつべきものは「友」ですなぁ・・・。(大西 記)