不定期刊行            280号  2008.11.13中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

「スキー、人模様――高校スキー部30年」 宮本義彦著

読み始めたら面白くて一息に読み終えてしまった。・・・この春、中野実業高校を完全に退職された宮本義彦先生から「30年間、多くの方々との出会いがありました。その皆さんのことを思い出しながら書きました。『百人に百通りのスキーあり』ということを感じております。」という一文とともに、標記の本をいただいた。宮本さんは、グループドモレーヌ、信高山岳会にも所属され、現在は長山協の副会長である。私自身は「アリューシャン列島登山自然調査隊」「カシタシ主峰登山隊」でご一緒したほか、様々な面でお世話になっている山の大先輩でもある。先生の山登りとしての経歴は言うまでもないと思うが、この本は高校の教員としてのその殆どに渡って関わってきた中野実業高校のスキー部の顧問としての回顧録で、421ページにも及ぶ力作である。

中には「鉄人」こと山口辰也さんや「お母さんふたり」という標題で書かれた渋沢(旧姓松岡)由里さんと金井(旧姓白鳥)真紀子さんなど僕自身が国体山岳競技で、思い出を共有させてもらった選手の記述もあるが、ここに描かれているそれ以外のほとんどすべての生徒たちのことを当然ながら僕は知らない。またスキーにも不案内である。にもかかわらず僕がこの本にとりこにさせられたのは、そこに著者の宮本さんの人生観、教育観が押し付けがましくなくさらりと書き込まれていたからだと思う。何より温かい本だと感じさせられ、「教育」の真髄ってこういうことなんだということを改めて教えられた思いである。文中にちりばめられた教え子の結婚式で読まれたという自作の「詩」にはそれぞれの生徒への愛情が満ち溢れている。また、それぞれの生徒への気配り、目配りは、中実に何度も全国優勝を導いた「名伯楽」の面目躍如たるものがある。

自らは競技スキーの経験などないのに、中実に赴任早々「『宮本先生は、登山がご趣味と聞きました。雪には慣れておられると思い、スキー班の顧問を考えております。いいでしょうか。』と言われた。着任したばかりで何も分からないし、断る理由などない。仕事だから何でもやるのが当たり前なので、『はい』と即答した。そしてそのまま、30年それが続いた。」といういわばあてがわれたスキー顧問からスタートしながら、生徒と歩んだ30年。小手先のテクニックではない本当の意味での「教育論」、そんなことを感じさせるさわやかな読後感の残る本だった。宮本先生の意向で、高教組を通して県内各高校の図書館に寄贈もされたそうです。県内のみなさん、ぜひ手にとってお読みください。

「登山研修交流会」の感想をいただきましたので紹介します

1)鈴木富雄先生(名古屋市立向陽高校)

無事に名古屋に着きました。楽しく充実した二日間でした。紅葉の木曽の山々を満喫し、長野県のみなさんのさまざまな話をお聞きすることが出来、さらに登山技術も学べました。いろいろ企画してくださった大西先生お疲れ様でした。取り急ぎ御礼まで。

2)下島順一先生(伊那弥生ヶ丘高校)

10/31〜11/1開催の中信地区安全登山研究会主催の研修交流会に参加しました。内容てんこ盛りの1泊2日研修会の内、2日目朝まで参加させて頂いた。「中信」なのに南信からおじゃまして事務局の方には大変お世話になりありがとうございました。

さて私はハーネスを持っていましたが使い方を教わったことがなく、何もかも初めてで新鮮でした。ハーネスを買ったのは「ツリークライミング」のためでした。以前樹高10数メートルの桜の大木を伐採したときに少し危ない思いをしたので、安全確保を考えてのことでした。実技講習のロープの結び方から固定と通過は「なるほど」と納得でき、ツリークライミングに使ってみたくなりました。

翌日の児野山登山での実習は参加していないので山での応用は再度どこかで実習・訓練に参加したいと思っています。背負い搬送実習も応用版も含めて何通りも試しましたが、状況に合わせて「臨機応変」が何より大切と感じました。

花井先生の「山の気象の予報」は時間が足りず、もっと時間をかけ、体系的にお聞きしたい興味深いものでした。肝心の交流会も筑摩高の下岡先生が用意してくださった、ほどよい薄味のキムチ鍋を囲んで楽しいもので、やみつきになりそう。またよろしく。

2)小林國弘先生(白馬高校)

「継続は力なり。」と言いますが、継続だけでなく、本当に徐々にですが、広がりと発展を見せていますね。中信地区以外の先生が参加されるようにもなってきましたし、今年は生徒の参加もあり、研修の為の研修では無く、日頃の部活動の中での安全対策という、花も実もある研修会になったことは、大いに価値あることだと思いました。

さて、夜の天気図講座。地上天気図は、それこそ嫌になるくらい過去に書いてきましたし、自分の書いた天気図からある程度の予報も出せていました。で、そこで、満足していましたし、それ以上研鑽を深めなくともこれくらいで充分だという自己満足にも陥っていました。今回の研修項目、高層天気図は、自らの思い上がりを戒める絶好の機会になりました。短時間ではありましたが、高層天気図の仕組みと見方を学んだだけでも、これからは一見より専門的な講釈も垂れられるかと、内心密かにほくそ笑んだものでした。余談ですが、地球規模の気象の特徴、赤道付近では降雨量が多く、緯度が高くなると乾燥砂漠地帯、その更に高緯度ではまた降雨量が多くなり・・・という話、早速中学生の息子の地理の勉強に役立てさせてもらいました。

2日目の、登山行動の中での読図とフィックス、搬出も、高校生にとっても、新しい技術を得られて登山の幅が広がり、見えない部分での自信になったのではないかなと思いました。ただ、意識としてつい、生徒は指導、保護される対象という意識がつい表出してしまったことでした。もっと生徒たちに先頭に立たせてやらせてみてもよかったかな、と後で思ったことでした。

天候にも恵まれ、いい2日間でした。西牧先生、大西先生はじめご苦労いただいた先生方、有難うございました。

なお、今後、個人的には、@テーピング、A(現地調達の食材も使った)各自自慢の食事など、研修項目に入れていただけると有り難いな、と思っております。

編集子のひとりごと

32号となる中信地区の「年報」の編集作業を進めています。今年は昨年まではなかった学校の紀行もあります。できあがりは来年早々を考えています。原稿未提出の学校の顧問の先生方、締切日をすぎていますので提出方よろしくお願いします。(大西 記)