不定期刊行            288号  2009.1.14中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

群馬県高体連登山部の現状と課題 その1 対比地 昇 先生

(編集子のまえがき)群馬県山岳連盟の機関誌「山岳ぐんま」9月号に群馬県高体連専門委員長対比地昇先生が寄稿されていた。先生の許可をいただいたので、掲載したい。

一.挨拶と概況 

 八年間という長い期間、委員長を務めた小林達也先生から引き継ぎ、今年度から委員長を引き受けることになりました。今までは副委員長という立場で、限られた範囲のことだけをこなしていけば良かったわけですが、事務局として雑務をこなしながら組織全体を見渡したり、関東・全国高体連登山の仲間や群馬高体連、群馬岳連の方々との関係も大切にしながらということで、関係する範囲が一挙に広がりました。今年度で五十九年目を迎えた群馬高体連登山専門部の歴史を背負い、その責任の重さを感じる今日この頃です。

 高体連登山専門部の長い歴史の中で大事にして引き継がれてきたことがいくつかありますが、まず、@「全員で取り組み、全員で指導」A「一人一人を大切に」B「尾瀬からヒマラヤへ」という三つの言葉が浮かんできます。他の競技にも当てはまることもありますが、登山というものの特殊性から生まれてきている言葉もあります。

 安全登山を徹底していくために@はとても重要なことです。顧問間の協力体制とともに、指導者の育成の重要性を訴える言葉でもあります。

 Aは一般的な言葉でもありますが、登山においては特別に大きな意味があるように思います。一人一人の話をしっかり聞くということを通して、組織の中でしっかりと実践してきました。

 登山は他の競技と違って、顧問も生徒と一緒に行動し、常に現役でなければならないということがありますが、現役ならば目標、夢を持って取り組もうということがBです。過去に五回の海外遠征を実施し、夢を叶えるとともに、生徒にも範を示し、教育にも生かすことができたと思っています。また、教え子たちの中からも登山界で活躍する人が出ることを願っての言葉にもなっています。

 このようなことを大切にしながらいろいろな行事がつくられ実施してきたわけですが、ここ十数年の社会の変化の中で問題点がたくさん出てきました。部員数の減少、指導できる顧問の減少がまず第一に上げられます。また、スポーツクライミングが登場し、国体や県総体・インターハイなどの登山競技にどう対処していくかという問題もあります。以下項目別にまとめたいと思います。

二.部員数の減少

 グラフを見て分かるようにこの十年で、全運動部登録人数(折れ線グラフ)に大きな変化が見られないのにもかかわらず、登山の人数は男女ともに減少し、特に女子の減少は著しいものがあります。登録学校数も女子の減少が大きく、今年度はついに一桁の九校という状況になってしまいました。他の都道府県も同じような状況があり、インターハイへの参加が危うくなってきたところも出てきました。

 最近の生徒の気質の変化(3K:きつい・汚い・危険の敬遠、個人主義等)、自然体験の不足、経済的問題など色々な原因が考えられますが、次に上げる顧問(指導者)の取り組み、意識の変化も大きな原因に上げることが出来ます。

三.顧問(指導者)の育成

テキスト ボックス: 夏山顧問研修会
谷川岳一の倉沢テールリッジ
 一昔前までは各学校に顧問が三,四人いて、自然にベテランから若い顧問に登山の楽しみ、技術、指導法等が伝わっていきました。指導者講習会にもたくさんの顧問が参加し、経験が積まれ、生徒に還元されていきました。ここ十数年の学校を取り巻く社会の変化でこのサイクルが崩れ、登山の魅力を生徒に伝えていくということが困難になってきています。体力を必要とし、重い責任を負わされながらの行動を負担に感じる顧問も多くなってきているように思います。このような状況の中で、顧問をどう育成していったらよいか、対策が検討されてきました。各地区毎に声を掛け合い、協力しあう関係をつくるとか(地区単位での顧問懇親会、夏山合宿の合同実施)、参加しやすく有益な講習会を実施する等の取り組みが考えられてきましたが、有効な対策にはなっていないのが現状です。若い顧問が生き生きと楽しみながら登山に取り組んでいる姿はとても魅力的ですが、そのような姿を見る機会が少なくなってきたのは残念なことです。(以下、次号につづく)