不定期刊行 第293号 2009.2.4中信高校山岳部かわらばん 編集責任者 大西 浩
木曽高等学校定時制
寒中休業の「研修」をピーカンの鉢伏山で
今は長野県でもほとんど消えてしまった「寒中休業」を利用して、赤羽康定氏と二人で鉢伏山に出かけて、「研修」をしてきた。ピーカンの一日、誰にも会うことなく素晴らしい景色をまさに二人占め、大満足の一日であった。
9時、
ちょうど、2日前の長山協の「山のセミナー」の自然保護のセクションで、鹿のことについて議論があったばかりである。議論の中では時々訪れる大雪の年に自然に淘汰されるのを待つか、積極的に狩猟をして頭数調整するかというようなことが「生物多様性」の問題と絡めて議論されたが、この姿を見ると、いくらなんでも数が多すぎるということを感じざるを得ない。
少なかった雪も、1500mあたりを過ぎるとぼつぼつ現れてくる。傾斜が急になると登山道は九十九折れになっているが、雪上故僕らは構わず直登する。10:45、急登を登り終えた尾根上の小ピークからは、北アルプスがよく見える。木の間越しの乗鞍、高ボッチの先に御嶽が美しい。11:10尾根を登り切り、車道に合流。素晴らしい景色が広がる。ポイント、ポイントで写真を撮りながら、まずは前鉢伏山方面へ向かう。少ないと言っても吹き溜まりにはかなりの雪がある。ツボ足ではまると次の一歩が大変である。11:50前鉢伏山到着。雲一つない青空の下、眼下に松本平を見下ろして北アルプスの大パノラマが広がる。これほどの景色はそうはない。せっかくだからとこの景色をバックにセルフタイマーで二人を入れた写真を撮り、鉢伏山に向かう。
11:50頂上の鳥居から左手に登山道を外れ最高地点に向かうと、ここもまた吹き溜まりで、深いところは股までもぐる。
12:55、この絶景を見ながらやや遅い昼食。山頂でおよそ30分。充分堪能したところで往路を下山する。雪道の下りは早い。15時無事下山。いい日を当てたと二人とも大満足、鹿の食害観察、雪上歩行、ルートファインディング、よい「研修」ができたことだった。
学校統合に居合わせた幸運・・・日の目を見た山岳古書
木曽高校は定時制の私のクラスが卒業する一年2ヶ月後に閉校となる。木曽高と木曽山林高が統合して新たに発足した木曽青峰高校は、これまで二つのキャンパスに分れて展開していたが、新校舎が完成する来年度からは木曽高のキャンパスに一本化される。つまり旧山林高校が木曽高校に引っ越してくることになる。しかし必ずしも受け入れスペースが保障されているわけではない。そこで両校で残すもの、捨てるものの洗い出しが急ピッチで進んでいる。その最たるものが図書館の蔵書をどうするかということである。結果、多くの書物が廃棄処分の憂き目を見ることになった。・・・これが私にとっては千載一遇のチャンスともなるのだから世の中面白い。少しずつ整理が始まり、廃棄と烙印を押された書物は、一定期間引き取り手を募るため、図書館前に展示される。
うずたかく積まれたその最初に出された本の群れの中に愛知大学の大量遭難の記録の書かれた「薬師」や長山協がサンタクルスノルテに登った「ペルーアンデス遠征1967」の報告書、チェリーガラードの「世界最悪の旅」などを見つけた僕はそれらを手にすぐに図書館に飛び込んで、司書に言ったものだ。「これください。それからこれからもまだ出てくるようなら『山』に関わるものは全部大西用に取っておいて。」と。司書は言った。「捨てるのは本当に忍びないのだけれど、価値を分かって大事にしてくれる人がひきとってくれるのならこんなにうれしいことはない。大西用段ボール用意します。」と。
それから僕の手元にはあかね書房の「世界山岳名著全集」「日本山岳名著全集」が届けられた。その後も「現代世界ノンフィクション全集」や「世界ノンフィクション全集」も届けられたので、その中から探検ものや登山関連のものチョイスしてゲット。まだまだ出てくるようなので、期待をし、涎を垂らして待っているところ・・・。
編集子のひとりごと
土日に行われた長山協「山のセミナー」は良き学習会。海外登山から身近な自然保護の話題まで。盛り沢山であったが、もう少し討議の場があればよかったなぁ。(大西記)