不定期刊行            297号  2009.03.25中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

長野県内の「高校生練習用岩場とボルダー」公開

先ごろ長野県内の山岳部のある学校(20校)に、「高校生練習用岩場とボルダー」という冊子が山岳総合センターより一部ずつ送られた。この冊子は、山岳総合センターの中嶋岳志主事が、今年度のセンターの調査研究の成果としてまとめたものであるが、高校生が安全にクライミングを練習できる岩場やボルダーへのアプローチとそれぞれの岩のルート図やボルダーの課題がまとめられている。この調査研究は、形の上では長山協のジュニア、国体、スポーツクライミングの各委員会も協力したことになっているが、実質的には中嶋さんがほぼ全面的にまとめた労作である。なぜ、今「高校生練習用岩場とボルダー」なのか?その回答がこの冊子の冒頭にある調査研究の目的の項に書かれているので、以下に引用してみよう。

「長野県山岳総合センターでは平成14年より高校生を対象としたクライミングの研修会を行ってきた。参加者の確保をするため対象を小中学生や県外にまで広めたこともあったが、次第に希望者が増え、本年度は施設面で限界に近い人数が参加するようになっている。また、登山部でない生徒の参加もあり、高校生の間でクライミングの人気が高まっているのを感じる。原因としては、各種メディアにクライミングが取り上げられるようになり存在が知られるようになったこと、国体の山岳競技がボルダリングとリードクライミングだけになったこと等があげられる。高校登山部数、登山部員数の減少が伝えられる中、クライミング人気の高まりは光明である。かつてクライミングは登山の最も先鋭的な部分だったが、これからはクライミングを入り口にして登山の世界に入ってくる若者が現れることも期待できる。しかし、研修会に参加しても、その後もクライミングを続ける高校生は少ない。参加者に聞いてみると、やりたい気持ちはあるのだが、施設が遠い、施設の利用料金が払えないなどの理由で続けることが出来ないでいるようだ。そこで、もし近郊に安全を確保しやすい岩場やボルダーがあれば、これらの問題は解消される筈であると考えた。」

この観点に立って、長野県山岳総合センターと長野県山岳協会は、共同事業として、ここ数年県内にある岩場で高校生が練習できるスポーツルートとボルダーを調査、開拓、整備してきたが、それをまとめたものがこの冊子というわけである。当初の目的に沿って、情報を提供し、後継者の育成に寄与しようと、全県の各学校の山岳部にこの冊子が送られたわけである。この冊子にはここ数年、僕も開拓に関わってきた「木曽の岩場」を始めとし、県内10ヶ所の岩場とボルダーが取り上げられている。

この調査研究は今後、長野県山岳協会が引き続き継続しさらに多くのボルダーを公開していく予定である。期待していてほしい。長野県山岳総合センターでは、例年秋に高校生と指導者を対象としたクライミング研修会を開催している。ぜひこの講習会でクライミングの楽しさに触れ、さらにその先の世界への扉を開いてほしいものである。

なお、この冊子本文とすべてのトポは、センターのホームページで公開されている。アドレスはhttp://www.pref.nagano.jp/xkyouiku/sance/20/tyousamokuji.htmである。ダウンロードもできるので、積極活用していただければと思う。

「伯耆大山」で滑ってきました

20日からの3連休を利用して長駆、鳥取県の大山に山スキーに出かけてきた。同行者は松田大氏と岡山県高体連登山専門部の田中初四郎氏。20日の未明に松本を出て登山口に着いたのは20日の8時半ころ。しばらく時間をつぶし天気の回復を待って12時半に夏道登山道から歩き出し、7合目まで登り、「行者谷」を、翌21日は快晴、絶好のコンディションの中、西斜面の「草鳴社谷」から頂上へ登り、登った谷を8合目から滑ってきた。あいにく雪が少なく当初予定していた谷とは違う谷を滑ることとなったが、十分楽しむことができた。一日目はカリカリの斜面だったが、二日目は雪の状態もよく気分よく滑ることができた。

大山は頂上稜線の崩壊が激しく、「弥山(1710m)」までというのが今は一般的であるそうだが、ぼくらはせっかくだからと頂稜を「剣が峰(1729m)」まで辿った。距離にすればわずかだが、この間の難所「らくだの背」と呼ばれるナイフエッジでは極度に緊張した。同行の田中さんもこちらから剣が峰へ登るのは初体験とのことであった。頂上からは眼下に日本海が広がり、東・南・西には中国山地の山々が重畳とつながっていた。伯耆富士とも呼ばれる大山は西側からは裾野を広げまさにその名の通りだが、北壁や南壁の迫力ある姿、剣が峰までの道にその魅力を感じた次第である。天気にも恵まれ愉快な山行であった。

「ライチョウが語りかけるもの」講演会のお知らせ

日本山岳会信濃支部では公開講演会「ライチョウが語りかけるもの」を開催する。講演は信州大学教授で日本鳥学会会長の中村浩志氏。詳細は以下の通り、興味のある方はどうぞ。中村さんは以前にも取り上げましたが、アリューシャン遠征のときの山仲間。

≪日時≫ 2009年4月18日 午後1時30分〜午後3時30分

≪会場≫ 松本市Mウイング3階会議室 松本市中央1−18−10263-32-1132)

≪主催≫ (社)日本山岳会信濃支部

≪共催≫ 松本市山と自然博物館・北アルプスブロードバンドネットワーク

≪後援≫ 環境省松本自然環境事務所・中信森林管理署・市立大町山岳博物館・長野県山岳協会・北アルプス山小屋友交会・上高地ネイチャーガイド協議会・信州まつもと山岳ガイド協会やまたみ・信州野鳥の会・野生生物資料情報室・田淵行男記念館むしの会ほか

≪問い合わせ先≫ 0263−77−7069 (金子丞二)

編集子のひとりごと

大山には、善通寺一、観音寺一など香川県の4つの高校が合同合宿で、また岡山朝日高校山岳部も登っていた。多くの中高年登山者に混じって、この時期の雪山で30人以上の若者の元気な姿が見られたのは、ある意味驚きでもあり、羨ましさも感じた。かつて信高山岳会が訪中登山を企画していたころ、春休みには「鍋倉山」や「栂池」で合同合宿を組んで、雪山体験をするというのが定番にもなっていたが、現在はそれもなく寂しい限りである。なんとかしなきゃ・・・と思った次第。(大西 記)