不定期刊行            300号  2009.05.08中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

青空が恨めしかった

今年の連休の登山は西俣定着で、鹿島槍と爺の雪稜を攀じる姿をイメージしてここ数ヶ月過ごしてきた。このあたりに詳しい大町山の会の榛葉伸男氏から情報も入手、準備万端整えて、5月2日早朝登山口である大谷原に向かった。そこにはすでに、信高山岳会の松田、沼田、田中の3氏、大町山の会の榛葉、栗原両氏がいた。早速共同装備の荷分けと荷造り。今回は後発隊の赤羽、久根、中山(労山・赤羽氏の知己)の3氏の分も荷揚げせねばならない。CLは私であるが、一番若い!ということもあって、分担した共同装備のほかに、液体エネルギーたる500mlのビール18本、ワイン1Lを犠牲的精神でザックに詰め込んだ・・・まではよかった。

いざ、出発。何の気なしにザックに両手を掛け、持ち上げようとしたまさにその瞬間、「ギクッ」腰に来た。全く動けなくなってしまった。というわけで、そのままUターン、後ろ髪引かれる思いで帰宅の途についたのであった。

思えば、5月の連休に山に入らないというのは大学1年のとき以来のことだ。大学2年のときからは連休中は常念で小屋あけのバイトをしていたから、これまで30年続けてGWには山に入っていたことになる。就職してからも数年はGWといえば、毎年常念の小屋明けを手伝っていた。その後、信高山岳会に入会して、高校生訪中隊に関わり、錬成合宿で仙丈ヶ岳に通った数年間、アリューシャン遠征の時の横尾ベースでの槍穂高での合宿、会の力量アップとそれの延長線上のカシタシ遠征に向けての岳沢通いや横尾尾根、東鎌など槍穂での雪稜登攀、ここ数年の白馬方面や剱立山での合宿に加え、山スキーで、守門岳や鳥海山・月山など県外にも足を延ばしたことも思い出す。緑が芽吹き始め、残雪がたっぷり残るこの時期は、山がとても表情豊かに見える僕の最も好きなシーズンだ。だから連休だけは何があっても山を優先してきた30年。

しかし、動けないことにはどうにもならない。腰は約20年前に一度「ギクッ」とやったことがあり、そのときは当時の教え子の父親の鍼灸師に「だまされたと思って」なおしてもらったことがあったのだが、昨年、文登研の研修会で剱に行ったときに今回と同じような痛みを感じた。初日雷鳥沢から剱沢の前進基地に入ったころから、じわりじわりと痛かったのだが、そのときはなぜか翌日には回復していた。腹筋背筋が弱ってきているのだろうくらいの軽い気持ちで何のメンテナンスもしなかった。それが今回は荷物をもとうとした瞬間に来て、それきり動けなくなってしまった。実は3月に長駆大山に行ったときも、2日目のスキーで下ったころから痛みが出てきたが、長距離の車移動が原因かとも思ってあまり気にもしていなかった。しかし思い返してみれば、あのときも「鈍痛」が一週間くらいは続いていた。今回は瞬間的に「ギクッ」と来たので万事休す、全く駄目だった。

そんなわけで、青空を恨めしく思いながら一人読書三昧の連休と相成った。まあ、全く動けないというわけではないので、それほど困ることはなかったものの、残雪に輝く山の上に広がる青空が何とも恨めしく思えた。・・・残念!捲土重来を期そう。

木曽・木曽青峰高校定時制アウトドア部活動開始

今年も木曽・木曽青峰高校の定時制アウトドア部の活動を開始した。全校生徒29名中部員数は14名、ここ数年の流れを引き継ぎ、ほぼ全校生徒の過半が所属するという活況を呈し、元気に動き始めた。なんと、顧問も4名付く(しかも、みな希望して!)という豪華布陣。

早速第1回の活動を4月28日にホームグラウンドである権現滝屏風岩で実施。この日は勤務等の関係で、参加した生徒は7名。やや肌寒かったが、初体験の1年生3名に混じって、こちらも初体験の顧問も加え、にぎやかな楽しい一日だった。

ここ権現の岩場は木曽高校にまだ筒井さん(現松本県ヶ丘)がいたころに二人で目を付け、今から10年ほど前の木曽高赴任直後から登っていたものだ。6年前に当時の全日制のワンゲル部の部長をしていた小松さんが国体少女の長野県代表選手に選ばれた折に、その練習場として森山議雄、中嶋岳志の両氏のご協力で整備したものだ。御嶽を開山した覚明が修行したという権現滝が至近にあり、一服の清涼剤となっている。トップロープを垂らすことも容易で、初心者が足の使い方を学んだり、斜面に慣れたりするには最適である。

みんなで確保したり、登ったり、ときには教えあったりしながら、楽しく遊んだ。しっかり部活をやったあとは、いつものように学校に戻って授業。今年も楽しい部活動になりそうな予感。

編集子のひとりごと

暑かったり寒かったりの陽気が交互に訪れている。そんな今年の陽気を象徴するような景色を、乗鞍山麓の「善五郎の滝」で見つけた。4月26日、ひそかに山スキーに出かけたのだが、休暇村から上は20cmの積雪で通行止め。除雪車が出動中。初夏のような暖かさで咲いたショウジョウバカマにも寒波が襲来。積もった雪を突き抜けたような、文字通り「雪割草」の趣。そこに滝の飛沫が凍り付いた様は、まさに自然の妙。(大西記)