不定期刊行            302号  2009.06.19中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

ヌルさん、木曽・木曽青峰高定時制で講演

昨年から来日していた元新疆登山協会のタシ・ヌルマイマイティさんのことは、これまでも何度か「かわらばん」で紹介してきた。そのヌルさんが、故あってこのほど(6月15日)中国新疆に帰国した。

それに先立つ6月12日、友人のよしみで木曽・木曽青峰高校定時制で講演してくれた。題して「新疆ウイグルの自然と文化」。以前からヌルさんには生徒向けの講演をお願いしていたところだったが、今年度の本校の社会人講師活用事業として実現した。

ヌルさんが講演で本校を訪れるのは実は今回が2回目。自費留学していた2000年冬にウイグル舞踊の専門家である奥さんとともに招いたことがあった。ウイグル人は「立てる者は踊り、話すことのできる者は歌う」と言われるくらいに歌と踊りが大好きな陽気な民族でもある。奥さんが来てくれた前回も二人の踊りに魅了されたのだったが、今回も僕のたっての願いを聞いて頂き、ヌルさんには民族衣装姿での踊りを交えての講演をしていただけた。

ヌルさんのパワーポイントを使ったビジュアルでポイントを押さえた講演は生徒にも好評。きれいな民族衣装で登場したヌルさんが発する流暢な日本語には生徒たちもびっくり。右から書くウイグル文字の話、ウルムチを始めとする有名な観光地の話、砂漠と氷河を従えた雄大な山、活気のあるバザール。木曽の山の中とは全く異なる環境の話に大いに刺激されたひとときであった。

全校生徒29人の前で、講演の最後はみんなでマシュラップ(踊ろう)ということだった。ヌルさんの踊りのすばらしさに恥ずかしがり屋の定時制の生徒たちが「みんなで」とはならなかったのがちょっと残念だったが・・・代表して・・・僕が踊った。わずか数分の踊り、それも盆踊りに毛の生えたようなものだったと自認しているが、懐かしいウイグルのリズムに合わせると、なんだか気持ちが解放されてポカポカしてきた。

実は前回の講演がビデオに録ってあったのであとで見てみたが、今は踊りの師範をしているという奥さんの指導の賜物か、ヌルさんの踊りも、随分軽やかに洗練されている印象を受けた。ヌルさんにそのことを伝えると、「そうですか。僕も少し修行しましたから。」ということだった。納得!

すべてが終わったあとは、みんなにウイグル帽やウイグルの靴をかたどった携帯ストラップのお土産までいただいて、2時間に及ぶ講演会を終えた。ヌルさんホントにお疲れ様。講演を終えて、僕は定時制に通う生徒たちのことを話し、ヌルさんからは彼らの印象を聞いたりしながら、未知なる世界の一端を生のことばで語ってもらったことが大きかったなぁなどと会話しながら車を我が家へ走らせた。

ヌルさんには、その前日に松本に来てもらい、我が家に二晩泊まってもらった。今回の講演を最後に帰国してしまうということでもあったので、初日の晩は信高山岳会の仲間にも声をかけて、松本市内某所でささやかながら送別の宴を催した。集まった仲間は松田、宮本、飯沼の3氏。敬虔なイスラム教徒で飲酒をしないヌルさんを前に、日本人四人は悪いなぁとの思いもちょっぴりもちながら、信高山岳会のコンセプトでもある「高校生に夢を!」を肴に大いに盛り上がった。

なお、今後新疆を訪れる人のために、ヌルさんの情報を・・・。ヌルさんは帰国後は、新疆ウルムチの「青年旅行社」の日本部副部長として、登山を含む日本人の旅行者を受け入れてくれている。もしこちらを訪れる機会のある方には取り次ぎますので、遠慮なくご連絡を。

編集子のひとりごと

今年の定時制アウトドア部は、月二回の活動を目標にして、そのうち一回はクライミング、もう一回はいろんな自然に触れる企画をと考えて、年間の活動を組み立てている。

生徒はクライミングが大好きだが、そこに焼肉が加わろうもんなら、もう黙っててもにおいをかぎつけてやってくる。左は5月のセンターの人工岩場での、右は6月の駒ヶ根での一シーン。若い者の上達は早い。生徒ばかりでなく始めたばかりの若い顧問の先生にも置いてきぼりを食っているおじさん月一クライマーの小生は、嬉しいような悲しいような・・・。でもこうやって若者たちがアウトドアに親しんでいくのは、山登り冥利に尽きるというものだ。

僕の木曽高での生活も11年目、さらには山林高との学校統合も最終年度を迎え、全日制は全クラスが青峰高生、定時制も3年までは青峰高生となった。私が担任している文字通り「木曽高最後のクラスの生徒たち」も4年生となって、そろそろ先が見えてきた。そんなことも考え、後継者も育てながら、クライミングばかりでなく、これからもいろいろな活動を展開していけるような一年にしたいと考えている。(大西記)