不定期刊行            307号  2009.07.16中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

中国を追われたウイグル人 水谷尚子著(文春新書)

新疆ウイグルの実態は、なかなか伝わってこないが、今日は一冊の本を紹介したい。

治安の悪化が報じられて以来、連日「ラビア・カーディル」さんや「世界ウイグル会議」のことが報道されている。この本は、サブタイトルとして「亡命者が語る政治弾圧」ともある通り、「1990年代後半以降、中国から政治的弾圧で海外に亡命した、或いは現在でも政治犯として中国の獄中にあるウイグル人たちの半生の記録」である。

これらは筆者自身が、直接聞き取り調査をした証言集である。しかしその作業は、筆者自身のことばを借りれば、「ウイグル人亡命者の口述史を纏める作業は、まるで平均台の上を歩かされているような感覚」であり、「彼らの『語り』は傍証となる資料を探すことが不可能で、客観的検証が非常に難しく」、「『語り』が本当に信頼に足るものなのか、自分自身が記している内容が正しいのかどうか、自問している状態」だったという。しかし、筆者がこれを活字化して世に問うたのは「たとえ亡命者たちの『語り』の中に『語りたくない部分』があったとしても、それでもなお彼らの語れる部分に耳を傾けておきたいと思った」からだ。2001年アメリカで起きた同時多発テロ以来、中国政府は世界的な「テロとの戦い」の潮流に便乗してこれまで「国家分裂主義分子」などと呼称していたウイグル人民族主義者を「恐怖分子(テロリスト)」呼ばわりするようになった。この頃から中国では、ウイグル人の反政府運動に関する書籍や番組が、数多く発行・公開されるようになったが、記されている内容は、この書で証言されている内容とは180度異なっているというのが筆者の見解である。筆者も述べているがこの書が「一つの事象を見るための側面的素材」であることは間違いない。

ここで取り上げられたのは、国外にいる11人のウイグル人だ。最初に取り上げられている「ラビア・カーディル」さんは若い頃から苦労してクリーニング業や行商などをし、その商才を活かして中国10大富豪の一人とも言われるくらいの財をなし、かつては中国人民政治協商会議委員など中国政治の要職を長期に渡って務めた。しかし99年些細なことを口実に地位も財産も奪われ、政治犯として6年間の投獄を経験、2005年にアメリカに政治亡命。現在は海外在住ウイグル人による「東トルキスタン」独立運動のリーダーであり、欧米のメディアなどで積極的に人権擁護の発言をしていることから、ここ数年ノーベル平和賞候補にもあがっている。中国政府による「拷問」の実態、亡命した後に起こった暗殺未遂とも思えるような「交通事故」。彼女には何人も子どもがいるが、中国で人質状態のまま監視状態におかれたり、公安に拘束されたり、政治犯として実刑判決を受けたりで、母のいる国外へ出ることも叶わないそうだ。

次いでドイツに本部がある「世界ウイグル会議」とその秘書長「ドルクン・エイサ」さんのことを書き、この組織がどういう組織であるかが明らかにされる。さらに本書ではこれまであまり伝えられていない事件を取り上げている。1997年にウイグル人が大規模な反政府デモを行い、当局の鎮圧により前代未聞の数の逮捕者と死者、処刑者(なんと公開処刑まで行われているという)を出した「イリ事件」がそれだ。この「イリ事件」に連座したとされた後、中央アジア経由でドイツに亡命した二人のウイグル人「アブドゥサラム・ハビブッラ」さんと「アブリミット・トゥルスン」さんにインタビューしてこの事件の実態に斬り込む。

そのほか、新疆での核開発の後遺症の実態を告発したことにより、イギリスに亡命せざるを得なくなった医師「アニワル・トフティ」さん。キューバのグアンタナモ基地でとらわれたウイグル人捕虜、東大の大学院生という身分のまま中国の政治犯としてとらわれている「トフティ・テュニヤズ」さんと、経歴も、追われた理由も異なるウイグル人たちに丹念に取材し、彼らの証言を書き綴ることにより、「一つの事象を見るための側面的素材」を提供してくれている。

改めて思う、「『新疆』とは征服者側の呼び名、『少数民族』とはあくまで支配者側の論理であると。僕もこれまで便宜上「新疆」や「少数民族」という言い方をしてきたが、そこに住む人にとっては「その地」も、「自分たち」も決して「新しい辺境の地」や「少数」ではないはずである。

励ましありがとうございます・・・今回の件は反響が大きかった

        高校生向けの計画の成功を祈りたい。県教委のOK等、順調なようで、手回しの良さには敬服。もう私は、何も出来ないが、話を聞くだけで、何か若さや元気をもらえるようで、嬉しい次第。無理をせず、頑張って下さい。

        羨ましいです。高くても低くても、未踏峰は心踊りますね。

        齢天命をお迎えになられても「高校生に夢を!」の崇高な情熱に圧倒されながら拝読させていただきました。新彊偵察の旅のご無事をお祈り申し上げております。

        中国遠征の話を聞き胸が(心)踊っています・・・・・・・・・。

        「高校生に夢を」は見逃せないフレーズです。大西先生の新しい挑戦が楽しみです。関西よりエールをお送りさせていただきます。わたしも先生に負けじと挑戦し続ける気持ちを持っていろんな方面で新しい人生を楽しみたいと思います。

        新疆行き残念ですね。西部地域は歪が大きいですね。次の機会ですね。

        「ヌル」さんの安否が確認できて良かったですね。新彊ウイグル自治区の問題がここにまで影響があるとは思いませんでした。

        事態が好転することを祈るばかりです。

        ウイグルの争乱の一報が入った時から、心配でたまりませんでした。「断念」とのこと、さぞ落胆されていることだろうと思ったり、ややほっと安心した気持ちもあったり、しています。時の運か。とはいえ、これが中国でなければ、とも。

        大変なご努力を重ね完璧な準備を進められておられると言うのに何ともお気の毒なことです。高校生に夢を!の高い志の実現に向け、次の機会をお待ちください。

        昨日のニュースでも,徐々に沈静化しているとはとても言えない状況で,いずれにしてもしばらくかかりそうな気配です。落ち着くまでは,致し方ないと思いますが,夢は暖め続けたいと思います。

        中国との外交事情に全くもって疎い小生ですが、ご心痛を察し致しております。晴れて計画が叶うよう祈念致します。

        状況よく分かりました。こんなに準備してきたのに、残念です。少なくとも、はっきりした時点で、みんなで会をしましょう。