不定期刊行 第310号 2009.08.13中信高校山岳部かわらばん 編集責任者 大西 浩
木曽高等学校定時制
静かなり、ガスの十石山
10日から12日に信高山岳会の仲間と「北鎌」へ行く予定であったが台風とバッティングしたのでやむなく中止とした。そこで山へ行くはずが3日間ポッカリ穴が空いてしまった。しかし台風は予想ほどには影響がなく、11日にはすでに青空が広がり、空を眺めて恨めしく思っていたのだが、一緒に北鎌に行く予定だった松田さんから12日日帰りでどこか行かないかというお誘いがあった。そこで、以前から気になっていた乗鞍の北にある「十石山」へ行くことにした。聞けば松田さんも行ったことはないという。
朝7時半、
9時20分歩き始め。9時30分尾根へ取り付く。落葉松林の中をおよそ40分登ると丈の高いササに覆われたプラトーに出た。積雪期は山スキーで人気のエリアだが、「どこを滑ればいいのか」などと話しながら登る。10時20分、プラトーが終わり再び急登が始まる手前(1900m)で一本立てた。ここで、知る人ぞ知るいつもながらの松田さんの奥さん手作りのパウンドケーキを一切れいただく。松田さんは山行の際にこれを持参して必ず振る舞ってくれる。だから小生は毎回ご相伴に与っている。毎回違った果実が入っていたりして手が込んでいる。感謝。実をつけたギンリョウソウが数株。
休憩地点から150mの急登ののち、やや傾斜がゆるくなった尾根をひたすら西へ向かって登っていく。昨日までの雨のため所々ぬかるんでいる上に、訪れる人も稀であまり歩かれていない登山道は石も苔むしていたり泥で覆われたりしていて滑りやすい。11時30分、ちょっとしたコル状の(2390m)場所から頂上ドームとも呼ぶべき最後の登りにかかる。樹林帯を抜けたこの辺り一帯まで登ると、花崗岩の上に広がるお花畑となっていて北アルプスの高山地帯の趣も出てきた。振り返ると霞沢が三角のピークを誇るかのように正面に見え、右の方には鉢盛山がたおやかな稜線を描いている。残念ながら西の上空はガスに覆われはじめた。お花畑では雷鳥も我々二人を出迎えてくれた。
ハイマツの脇を右に回り込むと、立派かつきれいな避難小屋が建っていた。この場所におけるこれだけの小屋の管理は色々な面で容易なことではないだろう。小屋に入ると「この小屋は『避難小屋でも気持ちのよくすごせる山小屋を造りたい』と思う有志によって1989年に建てられました。避難小屋なので利用料はいただかないというポリシーでやっています」との張り紙があったが、頭が下がる。たまたま下山途中に森林管理署の職員を案内して道を整備しながら登ってきた地元の人に出会ったのだが、その方の話によれば、ここはもともと乗鞍の遙拝所であり古くから道があったのだが、現在の避難小屋の場所にはそのためのお助け小屋があったのだそうだ。だから小生のもっている昭和61(1986)年修正測量の2万5千図にも「十石小屋」として載っていたのだった。しかし時代と共に荒廃したこの登山道とその運命をともにするように小屋も荒れていったのだが、1989年に地元の篤志家が中心になってこの避難小屋を建てたのだそうだ。建設資材だけでも3000万とのこと。ますます頭が下がった。しかし、その方は言った。「登山道整備をもう少しなんとかしないとせっかくのこの山もこの小屋も生きてこない。この山がミーハー登山の対象になっても困るが、ササは何とかしなければせっかくのいい山も死んでしまう。」と。確かに途中のササは一年放置しただけで道を覆い、3年も手を入れなければ道は消えてしまうだろう。僕らもかつて中ア経ヶ岳の登山道を整備したときの一番の問題はササをどうするかという問題だった。登山道整備の問題には、資金、行政や山小屋関係者の関わり、自然保護などいろいろな問題が絡んでくるが、ボランティアだけに頼っていては限界があるのも事実であり、僕ら登山者としては考えなければならない部分も多い。
小屋の前のイワキキョウ、小屋裏のコマクサを見ながら山頂に登る。折からのガスに覆われて期待した眺望が得られなかったのは残念だったが、そこは間違いなく2500mを越える北アルプスの一峰には違いなかった。二等三角点の標柱はハイマツに囲まれるように地味であった。素晴らしい景色はまた次回来るときのために取っておこう。小屋でゆっくり1時間ほど滞在し、下りは往路をたどって14時30分には登山口に到着。生徒を連れて行くにもいい山だというのが二人の共通した認識。意外に近場にいい山があるのを見落としていたというわけである。
講習会を2つ紹介しますーー詳しくはいずれもHPでご確認を
我々はどこで山の技術を身につけるのか?紹介したのはどちらも無雪期における危急時、遭難対策に関わる魅力的な中身の講習会です。ちょっと一歩踏み出してみてはいかがですか?詳細はそれぞれのHPでご確認を!また今回はメールに添付もしました!
その1 山岳総合センター「講師講習会」
1.ねらい 無雪期における危急時対策訓練によりこれからの山行をより安全なものとする。
2.
3.研修会場 高瀬川支流七倉沢
4.受講対象 センター開設講座の講師、山岳会関係者等
5.参加申込 はがき、ファックス、メール等で、センター所長あてに8月19日(水)まで。
その2 山岳レスキュー講習会(主催:日山協 協力:富山県山岳連盟)
1.主旨 無雪期の遭難事故現場で必要な登山者の救助技術の習得・研鑚を目的とする。
2.
3.会場・実技会場・机上講習・宿泊場所 国立登山研修所
4.応募資格 1)応募資格一般登山技術又はクライミング技術をお持ちの方
2)募集定員45名(経験及び希望に応じてクラス分け致します)一般登山者、他団体加入の方でも受講できます。
5.コース編成 @縦走・ハイキングレスキューコースAクライミング−セルフレスキューコース
Bクライミング−チームレスキューコース
6.参加申込 日山協事務局内 遭対委員会までFAX(03−3481−2395)にて8月17日(月)必着。