不定期刊行            317号  2009.09.16中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

赤田さんの南極レポート その3

 帰国後の自分に起こった小さな変化

 2009年2月下旬、帰国直後は標準体重を4kgほど超過していた。また、越冬中に蓄えた腹まわりの脂肪も気になっていた。3月中旬から登山を中心としたリハビリを開始し、5月合宿をもってようやく標準体重に辿りつき、ほぼ以前と同じ登山が出来るようになった。

帰国後、自分に起こった変化がある。それは「買い物カゴ」を利用する様になった事だ。実に些細なことだが、環境保全隊員として南極に行き、ゴミ処理の苦労を経験しなければ、今でもレジ袋を利用していたかも知れない。買い物カゴを使えば、やがてゴミとなる余計な包装を自宅に持ち込む事もないし、何よりレジ袋から品物を出し入れする手間が省けるので大変合理的だ。買い物以外にも、書類などの運搬に重宝している。

 帰国後、地球環境について尋ねられた事があるが、もとより地球環境について語れる見識もなく回答に窮した。ただ、「地球にやさしい」などという表現には以前から違和感を覚えていた。この手の表現は企業広告の匂いがするからだろうか。そもそも、人間が地球環境を守ろうとするのは「人類が末永く存続するのに都合がいいから」だと思うし、その方が自然な考え方だと思う。南極の温暖化についても、メディアで取り上げられることがあるが、往々にして危機感をあおる報道が殆どだ。メディアは社会の不条理を叩く使命があるから、特定の信念や人々の心情に左右され易いのだろう。それに対して、実際に前線で活動している観測・研究者の考え方は非常に客観的だ。これも南極で越冬したからこそ理解できた事だ。これからは、私ももっと客観的に身近な環境問題をとらえていきたいと思う。

長山協「ジュニア登山教室」in高瀬渓谷

長山協では、今年初めての企画として10月10日に、小学生向けの「登山教室」を開催する。この企画については、かわらばん295号(09.02.19付け)で前触れのお知らせをしてあったが、ご記憶の方はいるだろうか。次世代を担う子どもたちに「登山」や「自然の中での遊び」を体験してもらうことで、必ずや益するものがある、またそれを今やらなければならない、との思いで傘木靖さんが長山協ジュニア委員という立場で中心になって企画立案されたものである。日山協からもこういった自然を舞台にしたジュニア育成のためのイベントについては、ここ数年補助金制度(5万円)が創設されており、各都道府県山協(岳連)などに通知がきていた。5万円もらえるからどうのこうのということではなく、長山協内でも、これをなんとか実現したいとの議論は再三行われてきていたが、ジュニア委員会というとどうしてもこれまでクライミングが中心にならざるを得なかった側面もあって実現できないでいた。しかし今年は、295号にも書いたが、「見る前に跳べ」の精神で先進県の広島県の実践に学びながら、とにかく一回やってみようということで、8月の理事会で実施が決定した。講師も募集しています。講師といっても堅苦しいものとは考えていません。いわゆる「山が好きなおじさん、おばさん」ということで結構。子どもと自然が好きなら大丈夫。傘木さんと不肖小生が主な計画は立てる予定。

詳しくは長山協ホームページを見ていただきたい。また、ご自分のご子弟、甥や姪、お孫さんなどで該当する人がいればぜひ参加させてほしい。なぜこの企画なのかは、かわらばん295号を参照願います。

長山協「ジュニア登山教室」のご案内(一部抜粋)

「ジュニア登山教室」は小学生のための山遊び教室。山や川といった自然の中でしかできないわくわくするような山遊びが体験できます。遊園地や公園とは違うから、もちろん危険もあります。でも、危険なことが何かわかっていれば思いっきり楽しい体験ができます。長野県山岳協会の山遊びの達人達がみんなに遊び方とおもしろさを伝授します。さあ君も、「ジュニア登山教室」に参加して、山遊びを体験してみよう。

期日  10月10日(土)日程及びコース(徒歩距離 片道約10q)

7:00 信濃大町駅集合―――7:50 高瀬ダム到着〜8:00 高瀬ダム出発〜名無避難小屋〜湯俣到着・昼食・足湯体験・湯俣噴湯丘見学等〜湯俣出発〜16:00高瀬ダム出発―――16:50信濃大町駅到着〜17:00 解散

募集対象及び人員  小学校3年生〜6年生 15名

費用  1,000円(保険代、交通費)

問い合わせ・申込先

〈長野県山岳協会事務局〉〒380−0961 長野市安茂里小市2−28−8
TEL・FAX 026−226−5415 E-mail:jimukyoku@nmaj.org

申し込み締め切り  10月2日(金)

編集子のひとりごと

今月号の山岳雑誌はいずれも「トムラウシ」の遭難を大きく取り上げている。ある意味社会問題でもあるので、興味深く読んだ。いわゆる「中高年登山」と「ツァー登山」の問題、加えて「気象遭難」など様々な切り口からの検証が必要だと思う。来週末に長山協が主管して行う「中高年安全登山指導者講習会〔中部地区〕」でも、当然このことが実技、講義を通して広く話題になることと予想される。この「中高年安全登山指導者講習会〔中部地区〕」に今年は、32名の受講生が参加される。講義は鹿屋体育大学の山本正嘉先生や日本登山医学会会長の小林俊夫先生が担当され、実技は長山協の指導員があたるが、うわべだけの講習会にならないようにしたい。僕は、登山者一人一人が「自立した山登り」にならなければならいという思いを強く持っている。「中高年」とか「ツァー登山」もそこが一番の問題であり、これは高校生の登山においても然りだと考えている。「連れて行ってもらう登山」では何年どんな山に行っても「初心者」だ。(大西 記)