不定期刊行            321号  2009.10.02中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

09中高年安全登山指導者講習会 その2

残る二つの講義は長野県山岳協会の重鎮お二方(柳澤、田村両氏)の体験に基づいた話である。まさに長野のみならず「日本の登山界の財産」ともいうべき大先輩の話は、内容も話し方もすばらしく、参加者はもとより講師陣からもいい話だったという声が多く聞かれた。こういった先人の知恵に学ぶことが、今の僕には何より楽しい時間である。

肝心の実技講習は、初めての試みとして、危急時にパニックに陥らないための「ビバーク体験」を取り入れ、悪場の通過のための防御の技術として「積極的にロープを使う技術」、さらに「応急処置」と「背負搬送」にポイントを絞って行った。長山協からは指導員19名が実技講師として指導に当たったが、事前にシミュレーションをし、講習内容の精選と統一を図ってあったため、講習はスムーズに進んだ。小生は全体の取り回しをしながら、山仲間の強い絆、長山協の底力を感じた。そんなこんなで3日間の日程はあっという間であった。主催者の日山協内藤副会長、登山研修所の東専門職からも、「長野モデル」ともいえる良い内容、運営の講習会であったとの評価をいただいた。参加者には、当初意図した「『連れてってもらえる登山』から『自立した山ヤ』へ」という自覚を持って帰っていただけたのではないかと自負している。

09中高年安全登山指導者講習会 その3・・・山本先生の提案

山本正嘉先生から提案された体力テストについてもう少し詳しく紹介する。以下のゴシックの部分は今回の講習会のテキストに掲載したものの一部である。6種類のテストを行ったが、ステッピングテスト以外は用具なし、しかも短時間でできるテストばかりである。まずはお読みいただきたい。

中高年登山者の体力測定 鹿屋体育大学スポーツトレーニング教育研究センター 山本正嘉

〈目的〉これまで登山者の間で関心はあるものの,必ずしも適切には行われてこなかった。体力や体力トレーニングに対する正しい知識を身につけてもらうために,参加者自らが簡易な体力測定を行い,自分の体力の現状や,その長 短所を認識する.

その際,用具を使わず簡易にできる体力測定方法を学び,各自が各県に 持ち帰って指導できるようになることも目指す.

また体力の評価方法についても,人にやってもらうのではなく,データを見て自分で評価ができるようになることを目指す.

今回行う6種類の体力テスト

@閉眼片脚立ち(バランス能力)  A30秒間椅子立ち上がり(脚筋力) 

B30秒間上体起こし(腹筋力)         C長座体前屈(腰の柔軟性)

D5秒間ステッピング(敏捷性)                     E膝曲げ(膝の柔軟性)

この結果は、その年齢での平均値と照合する表があり、まず現在の自分の状態をチェックできるようになっている。それを知った上で、自分の山登りを振り返ることで、自分の山への体力の現状が見えてくるはずである。その上で、仮にさらに困難な山に「少しでも楽に登ろう」という目標を定めたとすれば、そこからトレーニングの目標が生まれてくる。そしてそのトレーニングの結果をチェックするのに、この体力テストがまた有効に使える。中高年に限らずそれが高校生であったとしても、トレーニングが有効に機能しているか、図るのにも最適だと思う。

高校生ではなくご自分のことも気になるという「中高年顧問」の方で、もっと知りたいという人は、ご連絡下さい。またこのことについては、登山研修所発行の「登山研修」VOL.24−2009にも掲載されているので、そちらも参考にされるといいかと思う。ちなみに私事ですが、この「登山研修」VOL.24−2009には小生も駄文を掲載してもらっています。手違いで「標題」が少し中身とずれていますが、もしお読みになる人はその辺含んでいただければ幸いです。(ついでにちょっとしたPRでした・・・)

「渡會意士遺作展」のお知らせ

昨年の10月に亡くなった高体連登山専門部、信高山岳会の大先輩で彫刻家としても著名であった渡會意士さんの遺作展が、10月6日から11日まで松本市美術館にて開催されるそうだ。題して「石の粘りと強さに魅せられた石彫の世界」。渡會さんのことについては、以前かわらばん(第276号2008.10.27発行)でも紹介した。もうすぐ一周忌を迎える渡會さんに会いに行ってこようと思っている。