不定期刊行            322号  2009.10.07中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

少年男子ボルダリング優勝、リード3位!新潟国体観戦記

10月3日から5日に行われた「トキめき新潟国体」山岳競技で、長野県少年男子チーム松本深志高校の中嶋渉、中嶋徹の両選手は大活躍。ボルダリングで1位、リードで3位という見事な成績を収めてくれた。小生は、松田さんと二人で珍道中、野宿をしながら応援に行ってきた。場所は上越市安塚。今回のチームはすでに報告しているとおり、成年男子は大町高校山岳部OBの橋本今史、笠原大輔選手。松田さんの教え子たちである。朝7時豊科で待ち合わせ、9時から始まる成年男子のリードに4番で出場する長野県チームの登攀に滑り込みで間に合った。

国体のリード競技は左右に作られた同じ壁を同一県の2選手が同時に登る。橋本・笠原の両選手は、よく健闘した。速報掲示板には最後の最後まで7番手・8番手として残っていたが、最後のところで彼らの成績を上回るチームが出てきて、結局10位とあと一歩のところで決勝進出を逃した。しかし、出場46チーム中の10位、しかも出場者の顔ぶれを考えれば誇ってもいい見事な成績だった。

成男リードと同時展開で行われた他種別のボルダリングでは、少男の長野県は予選から危なげなく他を圧倒して1位で通過。4課題を徹選手が先行して一撃完登、渉選手も余裕をもってそれに続いた。ライバルと目される千葉は、長野出身で千葉に引き抜かれた格好の羽鎌田選手と中学3年生の村井選手という構成。村井選手の登りもしなやかで素晴らしいものがあり、決勝もこの2チームの争いになるだろうことが予想された。成女はGDMの宮崎選手が出場すると言うことで、所属のGDMからは、宮本、古畠、北原、それに宮崎選手のご主人も応援に駆けつけた。ねばりの登りで、観るものを感動させてくれた。ほとんどの選手がクライミング専門といってもいい選手構成の中で、「社会人山岳会」所属のクライマーとして「グループ・ド・モレーヌ」の名前がコールされたのはかえって新鮮な感じであった。

初日の競技が終了したところで宿無しの我々二人はGDMグループとともに「キューピッドバレースキー場」に移動。雪だるま温泉で暖まった後、前祝いの祝杯をあげてそのまま野宿と決め込んだ。スキー場のあちらこちらにご同輩の姿が散見。

4日は、それぞれの種別の予選、決勝とはしごをして見て歩く。前日帰った宮本さんに代わり、長山協事務局長の小林さんが駆けつける。まずは少男リードの予選。3番目にスタートした千葉県の2選手が危なげない登り方で二人とも完登。その直後に登場した長野も徹選手があっという間に完登、観衆を魅了。拍手が沸いた瞬間、やや気を取られたかクリップで若干躊躇した渉選手が終了手前で落下。結局、この日の予選では、4位での決勝進出となった。成女、少女も緊張感の漂う中、持てる力を発揮すべく壁に向かったが残念ながら決勝の壁は越えられなかった。室内で行われた成男のボルダリング。長野は、極端にむずかしい第2課題で手こずり思うように登れなかったが、第2ラウンドで橋本選手は第3課題を一撃。第4課題でもボーナスを獲得。最後まで苦戦していた笠原選手だったが、残り1秒のところまで粘った末、第3課題を登り切って意地を見せてくれた。

午後4時から開始予定の少男ボルダリングは少し遅れて始まった。予選の下位チームから登場するので、いやが上にも盛り上がる。下位チームはなかなかボーナスにも届かず苦戦。どんな形で中嶋兄弟が攻略してくれるのか、楽しみな反面、他チームが苦戦しているだけに大丈夫かという不安も増す。そんな中、予選2位の千葉は、恐るべき中学生村井選手があっさり完登すると、第2課題に手こずっていた羽鎌田選手も苦労しながらもタイムアップ寸前に登り切った。県体協からも二人が視察に見え、中嶋さんのところは祖父母も交え家族総出での応援。我々も含め長野県選手団への応援は最高潮に達する中、いよいよ本命の登場だ。青のユニフォームの二人は、徹選手が先行して、それまでのチームが苦戦していた第1、第2課題をともに一撃で完登。持ち時間を3分も余しての余裕の登攀を見せてくれた。観客席からも思わずガッツポーズ、「よし」「やった」と割れんばかりの拍手と歓声。

決勝第2ラウンドは岩手、北海道を加えた上位4チームの争い。いずれも第3課題はクリアするものの、最終第4課題が大きく重くのしかかる。3番目に登場した千葉もあっさり第3課題を登るが、第4課題だけは登れないまま終了。いよいよ最終競技者長野の出番である。まず徹選手が問題なく第3課題をクリア。弟のアドバイスを受けて挑戦した渉選手は、気負いが出たのか出だしで足を滑らせ思わぬ落下。もう一度臨むもあえなく落下。「集中」「渉、ガンバ」の声に励まされるようにもう一度トライ。一方で徹選手はひょうひょうと第4課題に向かった。4度目のトライとなる渉選手が自分のふがいなさに気合いを入れるように大声で吠えた。そして、ついに第3課題を登った。兄の横で挑む徹選手は、これまで1度も落ちずに来たが、ここで初めて落下。壁をじっくり眺めてもう一度チャレンジ。ついに誰も越えられなかった壁を越え、ゴールでもあるマスコットの「トッキッキ」をあしらったホールドをがっちりつかんだ。続いて弟に負けじと第4課題に挑んだ渉選手があっさりボーナスを獲得。この瞬間に優勝が長野のものとなった。完登を目指して最後の最後まで立ち向かったが、わずかに及ばなかった。終了後思わず悔しさにへたり込んだ渉選手だったが、優勝を告げられ、みんなから握手を求められると相好を崩した。

翌日のリードでも少年男子は踏ん張り、予選の順位を上回る3位を獲得。かくて今年の国体は終わった。多種別の選手・監督のみなさんの労もねぎらいたい。2年連続で好成績を残した少年男子だが、選手層は薄く来年以降は予測できない。しかし、一方で特に少年女子に見られるグレードや格の違い、「地域格差」を目の当たりにして、この競技がどうなるのかに不安を感じたのも実感である。県体協の視察の方とも少し話をしたが、山岳協会の役員として、浮かれてばかりはいられない大会観戦でもあった。