不定期刊行            326号  2009.10.15中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

赤田幸久さんの南極レポート「南極・昭和基地から」 その6

ミッドウィンターフェスティバル(MWF)

日本では梅雨入りして蒸し暑い日が続いているようですね。いよいよ北アルプスの雪が消え、里の緑も鮮やかになる頃でしょう。カエルの合唱や蛍の灯り、田んぼを渡る風、そして鹿島槍や有明山を思い出し、やっぱり池田はいい所だなと実感しています。

6月21日は夏至ですが、南半球では季節が逆ですから「冬至」にあたります。南極では1ヶ月以上太陽が昇らない「極夜(きょくや)」の日々が続いています。生まれて初めて太陽の無い季節を体験し、「おてんとう様」の有難さが良く分かりました。太陽の光を浴びない日が続くと、日中でも眠気がつきまといます。体が順化するまではつらいものです。

南極大陸では冬至を祝って各国の越冬基地でMWF(ミッドウィンターフェスティバル)が開催されます。南極最大のお祭りです。MWFはつらい極夜を乗り越えるため、越冬生活の折り返し点として隊員の英気を養うために開催され、既に50年以上の歴史を持っています。我々49次南極観測隊では6月19日から21日までの3日間MWFが行なわれました。29名の人員ですが、実行委員会を中心に、全員がスタッフとなり、手作りのお祭りが開催されました。餅つきから始まり、手作りピザ・綱引き大会・雪上サッカー・演芸大会・仮装ファッションショー・フランス料理フルコース・松花堂弁当・ウルトラクイズ・露天風呂・夜店と盛り沢山です。みんなで力を合わせて、ひとつの目標に向かって汗を流すのはとても気持ちの良いことですね。MWFが無事に終わった今、心地よい疲労と充実感に包まれています。さあ、あと2週間もすれば太陽が昇ります。越冬終了までは半年以上ありますが、昭和基地にいる全ての隊員が、無事にそれぞれの任務を達成できると確信していることでしょう。

極成層圏雲(きょくせいそうけんうん)

2008年7月7日

撮影:石際隊員

   (2点とも)

 
テキスト ボックス: 雪上車の中での昼食 昭和基地への帰路

7月7日に南極大陸への取り付き地点(とっつき岬)まで、ルート状況の確認に行って来ました。往復約30kmの行程です。極夜が明けると野外活動も活発になるので、海氷の厚みやクラックの状態を調べてルートの安全を確認するのです。今回の調査で海氷の厚みが増している事が分かり、ひと安心です。基地への帰り道、一人の隊員が叫びました。「なんや、あの雲は!まるでオーロラみたいや!」その声に驚いた私は雪上車を停め、助手席に身を乗り出して窓を覗き込みました。そこにはこれまで見た事のない、虹色に輝く雲がありました。後続の雪上車にも連絡し、しばらくの間その美しさに見惚れていました。

基地に戻ってミーティングの時に、気象隊員から「本日、極成層圏雲が現れました」との報告がありました。みんな初めて聞く名前です。気象隊員の説明によると、極成層圏雲とは高度20km〜30kmの成層圏に出来る特殊な雲で、日本

極成層圏雲

200877

撮影:青山()隊員

 
で見ることはできません。南極や北極など高緯度地方の冬に良く見られるそうで、この雲が現れる時、成層圏の温度は−70〜80℃まで下がっているようです。虹色に明るく輝いているのが特徴で、真珠母雲(しんじゅぼぐも)とも呼ばれています。更にこの雲はオゾンホールの活動とも関係があるようで、オゾンの生成や破壊のメカニズムを知るための研究対象となっているようです。

「樹木が語るAvalanche Path探訪会」のお知らせ

北アルプス北部の雪崩情報を提供している「NPO法人ACT(Avalanche Control Team)」の事務局の高木律子さんから標記の案内をいただきましたので、紹介します。

雪崩秋冷の候、NPO法人ACTから「樹木が語るAvalanche Path探訪会」をご案内申し上げます。昨秋は白馬村Wing21にて、2007年末に起きた「槍平雪崩事故」を検証し、樹木は何を語っているかを学びました。今年は白馬の二大雪崩フィールドに出てみたいと思います。雪崩研究の第一人者・若林隆三先生のもと、針葉樹・広葉樹が語る自然の驚異「巨大雪崩道」を勉強しませんか?Avalanche Pathの見方が変わるかもしれません!この機会に樹木が語る雪崩情報について学びましょう。

月日:  2009年10月25日(日)

集合:  7:30AM 八方第五駐車場(八方の信号〈ローソン有り〉を猿倉方面へ200mの所)

※八方第五駐車場〜栂池ゴンドラ駅〜猿倉〜八方第五駐車場 

マイクロバス無料送迎あり。(29名まで)

※現地集合の場合:午前の部  8:00AM 栂池ゴンドラ山麓駅 午後の部 13:30PM  猿倉駐車場

内容:  午前:栂池自然園・栂の森等で針葉樹が語る雪崩地形の観察

     午後:猿倉・中山沢にて広葉樹が語る雪崩地形の観察

講師:若林 隆三 (アルプス雪崩研究所所長、ACT会員)

参加費: ¥1,500/半日  ¥3,000/1日

      (テキスト等含む、ゴンドラ・ロープウェイは各自負担)

持ち物:  山歩きの格好(軽い藪漕ぎを含むトレッキング)、筆記用具、昼食・行動食等

お申込み・お問合せ: 担当 山岸 慎英(ヤマギシ ノリヒデ)まで

TEL      090-7827-9013  E-MAIL  nolly-y@vesta.ocn.ne.jp

お手数ですが資料等の用意がありますので、10月22日(木)までにご連絡ください