不定期刊行            332号  2009.11.18中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

「南極のはなし」・・・木曽・木曽青峰高校定時制講演会

16日、木曽・木曽青峰高校定時制では、赤田幸久さんを招いて講演会を行った。せっかくの機会だからと授業が始まる前の日中は、本校アウトドア部のホームゲレンデ「レークサイド」でクライミング練習を行い、講演前に親睦を深めた。僕自身も赤田さんと久しぶりにロープを結んだ。ロープパートナーというのはいいもんだなぁ、ロープを結んだだけで気持ちが通い合う。

さて、クライミングを楽しんだ後の講演は、本校の2、3時限をあて正味1時間半。南極とはどんなところなのかという話から始まり、観測隊で経験してきた様々な体験をユーモアも交えながら話して下さった。白い氷の世界、一年中ほとんど氷点下の寒い世界、世界一空気のきれいな世界、南極の特徴をそうまとめた上で、生の声で語られるそれと南極の美しいスライドは、生徒はもちろん居合わせた教員にも感動を与えてくれた。ほとんど知る機会のない昭和基地内部の施設の詳細、砕氷船が暴風圏を波に翻弄されながら突破していく様子や、文字通り船ごと体当たりしながらその重さで氷を押しつぶして進んでいく様子など興味深い話も満載であった。

生徒たちもそれらの話に虜になって熱心に聞いていたが、ペンギンやアザラシの愛くるしい表情が映し出されると思わず「かわいい」の声、さらに最後に映し出されたオーロラの映像にはあちこちから感嘆の声が聞こえてきた。何人かの生徒からはいくつかの質問も出されたが、それらにも丁寧に答えてくださった。あとで感想を聞くと、「夢」のある話を聞いて、どの生徒も何事かを感じてくれたようで、企画をした者としてはうれしかった。

読図は奥が深い

14日から15日にかけて、国立登山研修所の「安全登山指導者中央研修会」が行われた。大きな流れは夏に行ったものとほぼ同内容で、今回も「読図プランニングコース」の講師を依頼されたが、以下その内容を紹介したい。

今回の私が担当した班は、高校の顧問の先生方4名(福島県、栃木県、鳥取県、沖縄県)であり、その部分でも勉強をさせていただけた。沖縄の高校の山岳部というのははじめて聞いたが、その先生によると、沖縄県内にも山岳部を作りたいという県教委の方針があって、野球でも名高い「沖縄尚学高校」にはじめて山岳部ができたのだそうだ。彼自身は、そこの顧問として現在は沖縄岳連の指導でインターハイ目指して活動を始めたところだそうだ。山の経験はないため、プランニングの実際を学び引率に役立てたいということでわざわざ参加されたということだった。ほかの先生方もいずれも顧問歴が短いが、非常に前向きな方々で、目の前にいる山岳部の生徒たちをどう指導すべきかを学びたいという意欲に燃えた方々であったので楽しく研修を深められた。

2日間という短い日程の中、初日は雨降りであったため机上講習をみっちりやった上で2時間ほどフィールドに出て、地形をみて判断すること、コンパスと地図の使い方を知ること、サムリーディングの実践などを行ったものの、やや消化不良気味。それでもコンパスと地図の使い方のさわりは研修できた。急激に発達した低気圧の影響で、2日目はなんと「暴風警報」が出されるという悪天候の中、出発を少し遅らせて注意しながら実施した。最初は猛烈な雨であったが、次第に止んできて11時頃からは青空も覗いてきた。前半は、予測される地形を地図で先読みしていくことの重要性などを説明しながら、私が地形を判断して地図上の位置を確認しつつ進み、コンパスによる尾根や沢の方向を見る方法の実践などを行った。その上に立って、後半部は道のない部分にルートを描き、地図を見ながらそれを忠実にたどるという実戦的な内容で研修を展開した。地形も意外に複雑かつ薮漕ぎも強いられるなどかなり高度な内容であったが、なんとかルートを見逃さずに辿ることができた。

終了後、班のメンバーのみなさんは「道のないところをコンパスと地形図をたよりに歩くという貴重な体験ができた。コンパスの使い方を初めて知ったが、近くの山でも実践してみたい。」「地形図をみんなで読み、確認しながら自分の考えを検討するのは楽しかった。コルと沢の関係などがよくわかった。」「地形図を読むことをはじめて知った。自分の浅い知識を痛感。生徒にはコンパスを持てといいながら自分自身使い方を知らなかった。実践的な内容で多くの収穫を得た。」「コンパスを使えるようになった。地形が地形図とあっているということがよくわかった。これまでは、地形図ではなく、地図にある文字情報で知ったつもりになって生徒を引率していた。」などという感想を寄せて下さった。私自身講師でありながら、初見の場所で、読図をしながら薮漕ぎをするという貴重な体験ができ、自分を試される部分も多々あり、前回同様大変に勉強になった。いずれにしても「読図」はわかってくると楽しいものだが、やればやるほど奥が深い。中信高体連の研修会でもそうだったが、

編集子のひとりごと

昨日(17日)付けの信毎に掲載されたが、このほど長山協顧問(元会長)の田村宣紀さんが2003年に出版された「春夏秋冬 山歩きの知恵」が中国で翻訳出版されることになった。田村さんはご承知の方も多いと思うが、長山協の「マナスル登山隊(イラン・ジャパン)」や「チャンタン高原探検隊」の隊長をはじめとして海外の登山経験も豊富、中国登山協会との関係も深い。この翻訳も、もともとは田村さんが隊長として2000年に行った「チョモラリ清掃登山」の際に、中国登山協会の紹介で同行した通訳の李建華さんとの親交から生まれてきた。田村さんから長山協理事長である私の所にこの話が伝えられたのは、9月29日のことであった。曰く「さて、中国登山協会から連絡がありまして、私の拙著、『山歩きの知恵』の出版が決まったそうです。出版社は、李致新CMA会長の尽力があったようで、武漢地質大学出版社とのこと。また、翻訳者の李建華先生からも連絡が入りました。それで、11月22日に武漢で出版記念パーティーを開催していただくとのことで、日本から約10名ぐらいは招聘したいとの、ありがたい話です。また、最近では、長山協とCMAの交流も途切れ気味なので、私の考えとしては、この機会に、長山協からも代表1〜2名を派遣するのもいいのではないかと思っています。」と。そんなわけで、長山協でもこれを受け止め、西田副会長と小生が、田村さんのお供をして長山協代表として明後日から25日まで中国へ出かけてくる。音信が途絶えている新疆のヌルさんとも直接連絡をとれればと期待している。(大西 記)