不定期刊行            339号  2010.01.13中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

木曽高等学校定時制

山岳総合センターの調査研究に協力、また活用しましょう

12月の下旬に、県内の全高校に長野県山岳総合センターから「アンケート調査」が配られたが、ごらんになっただろうか。この件については、事前にセンター主事の傘木さんから相談されていたのであるが、今年センターでは「長野県内の高校、短大、大学の登山(的)活動(野外活動を含む)についての調査」をしたいということであった。

センターでは毎年、登山活動に資するために、「自然や山に関する調査研究」と銘打って、テーマを決めて「学校登山の動向や登山全般」について、様々な調査や研究をしている。ちなみに昨年は、「高校生が安全にスポーツとして楽しめる自然の岩場やボルダーの発掘と紹介」がテーマであった。このことは以前かわらばん(297号)でも紹介した。岩場やボルダーの詳細をまとめた報告書は3月に各校に送られたが、もっと活用されてはいかがだろう。ちなみに、この報告書は、センターのホームページの、知る人ぞ知るところにひっそりと(笑い)掲載されている。せっかくの情報だからここで紹介しておくので、読者諸氏の積極的な活用を乞う。山岳センターのホームページを開き「活動」をクリック、そのページの「過去の調査研究」中、青字の「長野県内の高校生練習用岩場とボルダー」をクリックすると合計10カ所のエリアについて、アプローチはもとより、難易度や、トポなどの情報が無料で得られる。前主事の中嶋さんの力作である。センターのホームページは昨年夏にリニューアルして結構パワーアップしているので、これという目的でなくても一度見てみてはいかがだろう。

さて、話をもとに戻そう。これまでも、かわらばんで傘木さんのことは何回か触れてきたが、「高校生なども含む若者にどう『自然』のよさを伝えていけばいいのか」という彼の意図は僕の意図と一致している。今年主事になった傘木さんの第一歩は、まず実態を把握したいというところにあるとのことだ。今回の調査は、高校に限って言えば、県内全高校を対象にして山岳関係クラブの有無とそこで「登山(的)活動」がどう行われているのかということに関する調査である。調査の結果は3月までにまとめられ、センターのホームページで公表される。実態を知らずして対策を立てることもままならない。高体連などでも最近この手のまとまった調査をしたことはない。ぜひ県内の読者諸氏のご協力で、長野県内の実態が浮かび上がるような研究となればと側面的に応援したい。

山岳総合センター講師講習会に参加しませんか

1月30日から31日にかけて恒例の山岳総合センター講師講習会が開催される。ねらいは、「講師としてまた山岳関係のリーダーとして、雪質観察や埋没者の捜索救出訓練・搬送訓練をどう展開したらよいか検討することを通して、講師としての資質を高める」ことである。高校顧問という「山岳関係のリーダー」であるみなさんにぜひ参加をお薦めしたい。詳細は、すでに山岳センターのホームページにアップされているので、そちらを参照されたい。

今年の講師は国立登山研修所の専門職東秀訓氏があたる。過去この講習会は、経年的に「雪崩」をメインテーマに据え、雪を見て、状況を把握・判断し、互いの知恵や経験を出し合う中で、研修をしてきた。僕自身は、継続的に参加する中で随分勉強させてもらってきた。そしてその結果は、毎年講習会終了後に僕なりにまとめて、かわらばんでも報告してきた。参加される際には、過去の「決定版雪崩学」などを読まれた上で、不肖小生の過去のかわらばんの報告も読んできていただければ、多少は役に立つかと思う。毎年のかわらばんの2月上旬発行のものを見ていただければ、必ずこのことに言及した記事があります。

長野県山岳協会 「山のセミナー」のご案内

2月6日、7日の両日、山岳総合センターで、長野県山岳協会の「山のセミナー」が開催される。国際部、自然保護委員会、医科学委員会のコラボで盛り沢山の内容だ。こちらも長山協のホームページに詳細がアップされているが、一言ずつコメントを付して紹介する。ぜひ積極的なご参加を。申し込みは1月31日までに小生にご一報を。

2月6日は国際部関連の企画として、以下の4セクションの報告ならびに意見交換。

@「信大創立60周年記念登山計画の報告」(信大学士山岳会 江川信氏)

編者注→昨年9月から11月かけて行われた信大のネパールにおける一連の登山活動(ペリヒマール・マナンヒマール・アンナプルナヒマールトレッキング等)の報告。

A「ネパールヒマラヤ・シェルピニ・コル(6110m)踏査報告」(松本登高会 小松達氏)編者注→定年退職後、毎年ネパールに通い続けている小松氏の報告。この地域の踏査は日本人としては初ということで興味深い。

B「カリンガルポ山群における最初の登頂 神戸大学・中国地質大学合同学術登山隊の報告」(神戸大学登山隊 副隊長 山田 健氏)

編者注→昨秋、中国を訪れた際に接触できた神戸大学と中国地質大学合同隊の報告。昨年の日本人の海外登山の中では注目すべき登山でもある。

C海外登山情報「中国の最新情報」「シルクロード情報」等

2月7日(日)はまず医科学委員会と自然保護委員会の企画で4報告。

@「下肢のストレッチとテーピング」(安曇野赤十字病院 牛越浩司氏)

編者注→牛越氏は国体山岳競技帯同トレーナー。実際に役立つ技術を身につける好機。

A「鹿の高山における食害調査」(信州大学農学部教授 泉山茂之氏)

編者注→「クマ」の研究者として著名な泉山氏の動物たちへの愛情あふれる話は、自然と人間の関わり方について示唆を与えてくれるはず。

B「エベレスト山群環境トレッキング隊報告」(トレッキング隊長 田村宣紀氏)

編者注→昨春、県自然保護連盟と長山協が合同で派遣したトレッキング隊がネパールで見た融けゆく氷河の実態の報告。

C「南極越冬体験記」(登攀クラブ安曇野 赤田幸久氏)

編者注→第49次南極越冬隊に環境担当として参加した赤田氏の体験記。

編集子のひとりごと

奥信濃栄村「秋山郷」を訪ねてきた。一面雪に覆われた墨絵の世界は美しかった。人々の厳しい暮らしは一度訪れたくらいでは容易に知れないが、隔絶された仙郷に静かに降り積もる雪の中でじっと春を待つ人々が今もたくましく暮らしていた。(大西 記)