不定期刊行            348号  2010.04.02中信高校山岳部かわらばん     編集責任者 大西 浩

池田工業高等学校

岡山 田中初四郎さんの御嶽・乗鞍連続山スキー報告

3月27日・28日と山スキーの報告。天気予報を見ると雨は降りそうにないので出かけることにした。26日年度末の仕事の関係で学校を出たのは19時30分。早島ICを20時20分通過。途中、北陸道のチェーン規制を聞き、気温も低く、パウダースノーの期待が膨らむ。阿智SAに2時着、仮眠。5時30分出発、伊那ICから御嶽ロープウェイスキー場を目指し、7時40分着。8時30分ロープウェイ乗車。シールを手際よく張り、8時50分ゲレンデトップを出発。風はほとんどなく,快晴で日当たりのある所は心地よい。シラビソの樹林帯を抜けると風が強くなり寒い。稜線は雪煙が上がり、風が強そう。ここまでは前日の降雪もありシールがよく効き快適であったが樹林帯を出るとクラストしている部分がありシールだけでは滑るのでスキーアイゼンを装着。

先行者は谷筋を詰めている。谷筋の上部は急に斜度が増しているようなので、右手の小高い尾根筋を進むことにした。最初は斜度も適当で快適であったが、クラストの部分と新雪の部分がまだら模様になり難儀する。斜度が増し、前方に避難小屋が大きく見えるようになる。小屋直下は一面クラストしているようで、スキーで登るのを断念し、アイゼンを装着する人がほとんど。小屋の右側は斜度は急だが雪が深そう。大きく左右に振り高度を稼ぐ。小屋の上部に出るには3メートルほどの氷の斜面を横切らなくてはいけなくなるが、乗り越えるしかない。11時30分やっとの思いで小屋の上部のテラスに到着。精神的にも肉体的にも疲れた。それ以上に気温が低く、手袋を脱いだ右手の中指と薬指がじんじんする。凍傷になるのではと思われるほど。脇の下で温めやっと痛みがなくなる。三岳山頂が目前であるが、手がかじかみアイゼンを装着する意欲が出ない。昼食を食べ下山することにする。

12時20分、天候もよく快適な滑降と行きたいところだが、クラスト・クラストに薄く新雪が乗った部分・ある程度深さのある新雪部分と非常に滑りにくい。慎重にスキー場トップにつながる尾根を目指す。13時10分ゲレンデトップ到着、スキー場を一気に下り13時25分駐車場着。晴れて展望もよく快適であったが、雪面に難儀する山スキーとなる。ひなびた「鹿の湯」で汗を流し、乗鞍高原へ。

28日6時,乗鞍高原温泉スキー場第三Pで目覚める。8時30分からリフト営業、それにあわせて準備する。8時50分ゲレンデトップ着。風もほとんどなく薄日が差す。予想よりよい天気だ。手際よくシールを装着し出発。ゲレンデから見える壁を行きに登る。汗がにじみ、1枚中間着を脱ぎ歩き始める。この辺りの新雪は5センチ、シールもよく効く。位ヶ原直下の急斜面のたもとで1本。先ほど脱いだ中間着を着る。位ヶ原はいつものように風が強そうで,雪が舞ってくる。案の定、位ヶ原に出ると風が強く、視界がない。GPSのトレースを確認しながら、肩の小屋方面を目指し、11時10分車道沿いのトイレで1本。静岡から来たという63才の方と話しをする。この辺りで新雪は30センチ前後、3月下旬にしてパウダースノー。静岡の方はここから下山。肩の小屋南のピーク・朝日岳を目指して登る。シールも効き登りやすいが雪面の様子・斜面の様子がほとんど分からない。登るにつれ,風が強くなる。朝日岳まで登ることは可能と思っていたが、斜面の様子が分からず滑るのは怖い。急な斜面の途中でシールを剥がすことが無謀なのでどうしようかと思っていたら、まばらに岩が見えてきた。岩の上部でシールを外せる場所を見つけられた。

12時20分滑降開始。斜面の様子がほとんど見えない。確実なターンを繰り返し、トイレを目指す。風で新雪が飛ばされたクラスト部分が所々ある。12時55分ゲレンデトップ着。一気にゲレンデを滑り降り、13時15分第3駐車場着。「ゆけむり館」で汗を流し、名古屋の娘の所に宅配品を届け、600キロの道のりを帰る。今年になり、山スキー2回、ゲレンデスキー2回、信州へ。西日本のゲレンデ・山にない魅力が片道600キロを信州に向かわせる。

眺望も標識もない地味な山頂、黒沢山(2051m)

田中さんが御嶽に登っていた3月27日、松田大さんと二人で旧梓川村、三郷村、安曇村の三村の境をなしていた黒沢山に登った。前日は荒ぶる雪の天気であったが、この日朝、窓の外は目の覚めるような青空が広がっていた。7時三郷村に集合。黒沢沿いの林道を詰める。社の脇に車をとめ、その先の黒沢ダムから登るか、送電線沿いに登るかを偵察。結果、送電線の監視路を詰めることにし、7時50分、歩き始める。すぐに鉄塔の下に出た。この81番鉄塔から金比良山の北北東の尾根を登る。いきなりの急斜面に面食らうが、8時30分には金比良山(1156m)の三角点に出た。そこで、地図にもある登山道が東側に続いているのを確認する。ここからは、その刈り払われた登山道(昔の木馬道か?)を進むが、至極歩きやすくはなったものの昨日はみぞれだったのだろう、雨氷状態の枝が重く垂れ下がり、行く先を覆っている。しばらく南西方向に尾根通しに登ると傾斜が緩くなった。9時25分、1391mの台地下でダムへの尾根を確認。その先に小さな祠があった。このあたりまでは、深くても足首程度の雪。しばらく進んでいくと雪が深くなってきたので、スノーシューを装着。小生も松田氏も自前のスノーシューは持っていないが、今回は松田氏が前任の大町高在任時にクラブの備品として揃えたものを借用。これまではワカン一辺倒で、登山でスノーシューを使うのは初めてだったが、このくらいの傾斜地においては、傾斜が少しきつくなっても意外と爪が利いてくれる。10時35分、1672mの標高点のある台地で一本。このくらいの標高になると、昨日の雪が樹氷となって美しい景色を醸し出している。ちょっと感動。しかし、温度が上がってくると、樹林帯の中ゆえ、上から落ちる雪爆弾の洗礼もしばしば。

11時35分、標高1900m、傾斜がかなりきつくなり、雪も堅くなり、スノーシューの限界を感じた。里山とはいえ、そこは3月の2000mの山。この高度の堅雪には、場所によってはキックステップでもせいぜいつま先が5cmほどしか立たないところもある。時に緊張を強いられながらツボ足で登ることおよそ35分、山頂に到達した。山頂はだだっぴろい台地上だったが、三角点は雪の下で未確認。まわりも樹木に覆われており、眺望もなし、HP情報ではあるはずの標識もない。実に地味なそして奥ゆかしい山頂であった。しかし、それが下からみても控えめなこの山に似つかわしいと思った。滞在40分で下山。上部は慎重に、その後は一気にかけ下り金比良山からそのまま東に下り、登るときにとりついた81番鉄塔の一本南にある80番鉄塔に至った。どうもこちらが正解だったようだ。14時35分登山口着。地味ではあったが貴重な一日だった。